~舞台は舞台、原作は原作~劇団四季ミュージカル『ゴースト&レディ』(2026/3/7@大阪四季劇場)【観劇レポ/感想】

舞台レポ

※本記事には広告が含まれています。

本記事には芝居のネタバレを含みます。

自席から写真撮影可なのは開演の5分前までのみ。幕間休憩中や終演後は不可です。

こんにちは、しろこです。

拙ブログ『まるかて。』開設から約5年半、観劇レポはこれまでで約80件。

・・・初めて劇団四季の登場です(笑)

実は昔、20代の頃に2~3年かなぁ、、、四季の会の会員だったことがあります(^o^;)

なぜやめたかというと、2008年頃に観た『オペラ座の怪人』のクリスティーヌに幻滅したから。ファントム役の人はすごく上手かったから余計に「え…」となりましてね、、、金返せと思ったほど。同じ時期に観に行った知人は「すごくよかった!」と言っていたので、たまたま調子の悪い日に当たったのかもしれませんが、ファントムの心を虜にするぐらい歌が上手い設定の役で、これはないだろ…と思っちゃって。。。

あと、四季式の発声法で喋る台詞に、ある時、ほんとに突然に強烈な不自然さを感じて、そのままフェードアウトしました。

とはいえ、ファンクラブ会員でいるほどの興味がなくなっただけで、観たい演目が関西で上演されて、チケットが取れれば観ます。

直近で観たのは、2019年の『ノートルダムの鐘』(@京都劇場)と『リトル・マーメイド』(@大阪四季劇場)だったかな?

おお、直近が7年前か(@_@;)

今作『ゴースト&レディ』を観たのは、私が舞台好きなことを知っている知人に「しろこさん、劇団四季は興味ない? チケット取ってたんだけど行けなくなっちゃって…」と声を掛けられたのがきっかけです(ちなみにその知人は、すでに複数回観劇していたらしい)。

そこで初めて『ゴースト&レディ』の作品サイトを見て「良さげかも…」と思い、同サイトで公開していたトレーラーを見て「観たい!」と思い、チケットを譲っていただきました(もちろん定価で)。

「マンガもありますよ! ぜひ!」とのことだったので、お言葉に甘えてお借りすることに(笑)

これまで、舞台や映画を観て、それが面白かったので原作の小説を読むことはありました。『銀河英雄伝説』(原作:田中芳樹著『銀河英雄伝説』)、『スカーレット・ピンパーネル』(原作:バロネス・オルツィ著『紅はこべ』)、『蒼穹の昴』(原作:浅田次郎著『蒼穹の昴』)などなど。例にあげたのはすべて宝塚で上演されたものですが(ーー;)

基本、予備知識なしで舞台の世界に集中したいので、原作を先に読んだことはありませんでした。

ただ今回は、その知人が言うに「最初は舞台を観たけどよく分からないところがあって、原作を読んだら分かった」とのことだったので、マンガを先に読みました。

このマンガがツボにハマりまして、舞台を観る前から期待値が上がりまくり。

上がりまくって観劇し、達した結論は、、、

「私は二度と、観劇前に原作は読まない」

舞台は舞台、原作は原作です(;´∀`)

本記事には芝居のネタバレを含みます。

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あらすじ

時は19世紀。舞台はイギリス。
ドルーリー・レーン劇場に現れたのは、有名なシアター・ゴースト グレイ。芝居をこよなく愛し、裏切りにあって命を落とした元決闘代理人。
そんなグレイのもとを一人の令嬢が訪ね、殺してほしいと懇願する。それは看護の道に強い使命感を抱くも、家族による職業への蔑みと反対にあって生きる意味を見失いかけていたフロー。最初は拒んだグレイだが、絶望の底まで落ちたら殺すという条件で彼女の願いを引き受ける。
死を覚悟したことでフローは信念をつらぬく決意をし、グレイとともにクリミアの野戦病院へ赴くことに。次第に絆を感じ始める2人だったが、そこで待っていたのは劣悪極まる環境と病院改革に奔走するフローを亡き者にしようと企む軍医の存在。さらにその傍らにはグレイと同じ、あるゴーストの姿が…。

劇団四季オフィシャルサイトより

主な配役

フロー(フローレンス・ナイチンゲール):谷原志音
良家の令嬢。看護の道を志し、従軍看護婦となる。

グレイ:加藤迪
ドル―リー・レーン劇場のゴースト。元決闘代理人。フローに「殺してほしい」と頼まれる。

ジョン・ホール軍医長官:芝清道
クリミア戦争におけるイギリス全陸軍野戦病院の責任者。

デオン・ド・ボーモン:岡村美南
元騎士。グレイと生前から因縁がある。

アレックス・モートン:寺元健一郎
フローの元恋人。

エイミー:柴本優澄美
フローに憧れ、ともに野戦病院で看護にあたる。

ウィリアム・ラッセル:長尾哲平
クリミア戦争を取材する特派員。

ボブ:平田了祐
17歳の傷病兵。回復後はフローに付き従う。

上演時間

【1幕】13:00~14:20

(休憩20分)

【2幕】14:40~15:50

全体を通しての感想

大阪四季劇場の座席数は約1200席。

私がよく行く劇場の座席数はこんな↓感じなので、大阪四季劇場は芝居に集中するのにちょうどいいキャパに思えました。2階席でしたが舞台が近かったです♪

宝塚大劇場:約2500席
フェスティバルホール:約2700席
オリックス劇場:約2400席
梅田芸術劇場メインホール:約1900席
神戸国際会館:約2100席

なお、京都劇場は約940席と大阪四季劇場より座席数は少ないものの、2階席からだと舞台が遠い印象です。

開演してまず登場するのはグレイ。軽いストーリーテラーの役割も担っています。

グレイはゴースト。客席に向かって「あんたたち、俺が見えてるの?」と聞き、それに観客が拍手で応える、という、舞台と客席とのコミュニケーションで芝居の世界に誘ってくれました。

演じてるのは加藤迪(すすむ)さん。言葉遣いはマンガのグレイどおり荒っぽいんだけど、マンガのグレイより品がある佇まいや台詞回しで、めちゃくちゃ素敵でした。原作でのグレイはフローが絶望すること(=その時にグレイがフローを殺す約束)を心待ちにしているのですが、劇団四季のグレイ(加藤さんのグレイ?)はフローを見守り包み込む優しさが感じられました。そりゃフローも惚れるわ。台詞の声も歌声も耳に心地よくて、この人の他の舞台も観たい!と思わせてくれる役者さんでした。最近の『オペラ座の怪人』でラウル(貴公子)を演られていたそうですが、絶対似合うと思う(*ノェノ)キャー

原作マンガは、単行本の上下巻です。2巻で完結するので、マンガとしては短編。でも、上演時間2時間半でマンガの内容を網羅しようとするのはちょっと無理があったかなぁ。。。

原作を読んでいなくても「うーん…」となったのが、物語が動き出す契機となる、フローがグレイに「私を殺して」と頼む冒頭のシーン。

フローが死にたくなったのは、神の啓示を受けたにもかかわらず、自分が進もうとする道を家族に反対され、神の御心に応えられないから。フローは​敬虔なクリスチャンで自死は罪になることから、誰かに殺してほしいのです。

・・・が。

原作を読んでいたから引っ掛かりはしなかったものの、原作を読んでいなかったら、死にたくなるほど絶望した意味が分からなかったと思います。死にたくなる理由としてまったく共感できない。描き方が甘すぎる(原作では、小さい頃から気味悪がられていたり、常にいい子でいようと自分を押し殺していたり、母親から「あなたを生んだのが間違いだった」とまで言われたりで、そりゃ人生に絶望するわな…と思える)。

あと、原作では登場しない、フローの恋人アレックスの使い方(?)が、、、

フローはアレックスの求婚を断って、看護婦として野戦病院に行きます。フローたちが来たことで野戦病院の環境は改善されるものの、感染症での死者数は減らない。原因を調査するため、本国から衛生委員会が派遣されてきます。そのメンバーの中にアレックスがいました。

もちろんフローは、メンバーにアレックスがいることなど知らなかったわけですが、アレックスのほうは野戦病院にフローがいることは百も承知。驚くフローとは対象的に、君の力になりたい、と、どう見てもずっとフローのことを想い続けていて、求婚は断られたけど今も僕は君が好きだと言わんばかりの雰囲気なのですが、、、なんでさっさとエイミーとできちゃうわけ?

で、なんでフローはそれに絶望しちゃうわけ? 「それに」というより「そんなことに」…。だって、フローはその時点でグレイに想いを寄せてるじゃないのよ…。アレックスとエイミーに公私ともに裏切られたと感じたとしても、絶望までいく? いや、まあ、極限状態にある時は、平時ならスルーできることもスルーできなくなるとか、自分で自分の心を制御できなくなるとかはあります。私も似たような経験があります。でも、、、すごく違和感を覚えたシーンでした。3人ともに対して、「お前らなんやねん…」と。

複数回観劇している知人曰く、彼女も最初は同じように思ったらしいのですが、何回か観劇してみると、エイミーはアレックスとの結婚(=当時の身分の高い女性が一般的に選ぶ道)を選んだフロー自身で、現在のフローと対比させているのではないかと思うようになったとのこと。実際そうだとしたら、非常に深い意図があったにもかかわらず、残念ながら脚本・演出が少々お粗末になってしまったと言うよりほかありません。だって、ほとんどの人は1回しか観ない(もしくは観たくてもチケットが取れなかったり時間がなかったりで観られない)んだもの。。。

逆に原作より魅力的で素敵なキャラになっていたのは、デオン・ド・ボーモン。デオンは見た目は女性だけど喋ると男性。原作ではデオンの過去には触れていなかったけれど、舞台では「女はくだらない」と父親から男として生きることを強いられたとか、騎士として生きていたが女であることがバレて評判が地に落ちたとか、デオンという存在を形成した出来事が台詞として描かれていました。

演じているのは岡村美南さん。

もうね、、、めっちゃカッコよかった。張りと艶のあるアルトボイスも、自信をみなぎらせた表情(特に目力)も、たまらん。終盤、グレイと対決するシーンでワイヤーアクションをしながら歌っていて、たまげました(ただ、ワイヤーアクションは別に要らなかったかなぁ。。ちょっと『北斗の拳』を思い出してしまいました。。。音響効果のタイミングの良さもあって地に足のついた殺陣の迫力がすごかったから、あれを2回やっても全然くどい感じはしないはず)。

ちなみにこのデオン・ド・ボーモン、別名シュヴァリエ・デオン、なんと実在した人物だったというから驚きです。

フロー役は谷原志音さん。デオンと戦って消えたグレイに対し、「私を殺すなら今よ(=私は今、絶望している)」という雪上での慟哭の演技に胸をえぐられました。あのシーンで全部持っていかれた。涙腺崩壊。

・・・と、原作を読んでから観劇したことも相まってか、思うところは多々あったんですが、最終的には泣きました(笑)

直近のブログ(宝塚花組公演『蒼月抄-平家終焉の契り-』)で「創作物」について書きましたが、原作を踏まえた創作は難しい。

原作者は、ゴーストを登場させることで「人間」を描きたかったんだと思う。人間の弱さや強さ、愚かさ、高潔さなんかを。そして戦争の恐ろしさを。フローが軍医長官のことを「貴方こそが戦争の恐怖そのものなのです」という台詞があるぐらいなのに、舞台では軍医長官がそこまで悪い奴には見えず、命令に従うだけの心が麻痺したような部下も登場しませんでした。

劇団四季『ゴースト&レディ』のキャッチコピーは『この愛は、絶望を知らない』。このキャッチコピーからも分かるように、原作とはそもそも違うテーマで創作されたミュージカルですね。違うから、原作のタイトル『ゴーストアンドレディ』に対して、ミュージカルは『ゴースト&レディ』なの…かも。

原作が発表されたのは2015年ですが、「クリミア」と聞くと、現在のロシアによるウクライナ侵攻を思い浮かべる人が少なくないと思います。ナイチンゲールが生きていた時代のクリミア戦争と現在の戦争はもちろん違うけど、今の時代だからこそ、もうちょっと戦争に焦点を当ててもよかったんじゃないでしょうか。戦争の話は『南十字星』だけでいいのかな?

ゴーストのダンス、ヴィクトリア女王のダンス、デオンのダンス、グレイと女優とのダンス、と、ミュージカルだからダンスと歌が多いのは当然といえば当然ですが、長尺を取るほどの必要性は感じませんでした。ダンスシーンを減らして、物語の核となる部分をもっと丁寧に描いたほうが、全体として質の高い作品になったと思います。

スタジオジブリのアニメ『風の谷のナウシカ』をご覧になったことがある方は多いですよね。では、あの作品の原作マンガを読んだことがある方はどれぐらいいらっしゃるでしょうか。原作を読むと、名作と呼ばれるアニメ版でさえ、原作の表面的なことしか描いていないのではないかと思えます。

劇団四季ミュージカル『ゴースト&レディ』

原作を知らなければ、前述した、殺してほしいと思うほどの絶望のくだりとアレックスのくだり以外は、良質なミュージカルとして観られたでしょう。

舞台は舞台として。

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