【感想】~間の魔術師~シス・カンパニー『ショウ・マスト・ゴー・オン』(2022/11/19@京都劇場)

舞台レポ

本記事には芝居の若干のネタバレを含みます。

※本記事には広告が含まれています。

こんにちは、しろこです。
観劇が趣味、、、いや、ミュージカル鑑賞が趣味と言った方が適切かなぁ。。歌のない舞台を観に行ったのは、Kバレエ『クレオパトラ』がかなり久しぶりのこと。

シス・カンパニー『ショウ・マスト・ゴー・オン』を手掛けるのは、今年のNHK大河ドラマ『鎌倉殿の13人』が話題となっている脚本家で劇作家で映画監督で演出家の三谷幸喜さん。もちろん『鎌倉殿の13人』以前から存じ上げてはいたのですが、大河ドラマ以外で彼の作品(映画、舞台とも)を見たことはありませんでした。

どこかで手に入れた『ショウ・マスト・ゴー・オン』のチラシに記載されていたキャスト一覧を見てビックリ。

ほとんどが歴代の大河俳優ですやん!

大河ドラマ好きのしろこ、キャスト一覧にウハウハ。一度三谷さんの舞台を観てみたかったこともあり、チケットを取りました。

三谷さんに対して持っていたイメージは、「三谷さんの存在自体が面白い」

キャストより三谷さんの方が面白いんじゃないかとさえ思います。テレビのインタビューに応じているときの姿しか存じませんが、受け答えの感じ(言葉も動きも)が、なんかこう・・・ツボに入る(笑)

『ショウ・マスト・ゴー・オン』の公式サイトに、三谷さんによるイントロダクションが掲載されています。

​イントロダクション

​私事で恐縮ですが、この二年ほど大河ドラマに関わっていまして、
​その間、舞台を休んでおりました。
​この大河がびっくりするほど陰惨な話で(でも面白い)、
​もちろん僕のせいではなく、源頼朝と北条義時がいけないんですけども、
​そして、まだまだ年末まで番組は続いていくのですが、
​こんな暗い話(でも面白い)をずっと書いていたもので、久々の舞台はその反動で、
​思い切り明るくて楽しくて笑いに満ち溢れたもの(でも胸に迫る)にしようと思いました。
​というわけで、この作品。
​劇団東京サンシャインボーイズの公演以来28年目の再演です。
​令和の時代に合わせてリニューアルしておりますが、開幕して3分で笑いが沸点に達し、
​そのままラストまでずっと煮えたぎっている構造は、全く変わっておりません。
​登場人物は増えていますが、上演時間は減っている、はず。お楽しみに。

三谷幸喜

『ショウ・マスト・ゴー・オン』公式サイトより

私は少々ひねくれ者なので、映画などで『全米が泣いた』とか『5回泣ける』とか安直なことを言って宣伝している作品は見ません。作品にどういった印象を持つかは鑑賞者一人ひとりに委ねられるべきであり、感想を勝手に決めんな(-“-#)と思います。

というわけで、このイントロダクションを読んだら普通は「はあっ!?」となるはずなんですが、何ぶん画面を通してとはいえ三谷さんのキャラを知っているので、これは本当に面白いに違いない…!と思った次第です。

結果。

期待値が高すぎたのか、開演して3分で笑いが沸点に達することはありませんでしたが、作品全体のテンポといい、絶妙な間の取り方といい、「開演した。あ、終わった!」ぐらい時間が経つのが早く感じられました。

本記事には芝居の若干のネタバレを含みます。

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主な出演者

​舞台監督:鈴木京香
舞台俳優(マクベス):尾上松也
舞台スタッフ:ウエンツ瑛士
医者:浅野和之
元小道具製作スタッフ:新納慎也
客:藤本隆宏
脚本家:今井朋彦
舞台スタッフの父:小林隆(代役:三谷幸喜)
舞台俳優:シルビア・グラブ
舞台スタッフ?:峯村リエ
舞台スタッフ:秋元才加

上演時間

【開演】13:00

(休憩 20分)

【終演】15:25

感想

劇場の改札横に10人ぐらいの列ができていたので、当日券が出ているのかと思ったら、看板には『当日券キャンセル待ち』の文字。当日券キャンセル待ちって何ですか!? そもそもチケットって、一旦買ったら、行けなくなってもキャンセルできないんじゃ…。最近はチケットぴあがリセールを扱うようになりましたが、それかなぁ? 当日券のキャンセルを待つためにあてもなく並ぶって、『鎌倉殿の13人』の影響もあってか、すごい人気。劇場内でも、あちこちで『鎌倉殿~』の話をしている人がいました。

会場の京都劇場。何度か来たことはありますが、2階席は初めて。ロビーから2階席に行くための階段がある角を曲がって軽く呆然。階段がそびえたっとる! どこかにエレベーターはあるんだろうけど…。私の後ろを歩いていた60~70歳ぐらいと思われるおばちゃんなんて、階段を目にするや「うわぁ、なんやこれ!」。心の声、駄々漏れ。

階段の勾配から想像がつくように、客席の傾斜もかなりのものです。しかも最前列以外は前の列との間隔がかーなーり狭く、身長166cmの私ですら膝が前の座席につきそうでした。それなりに大きな会場だと、座ったまま膝を斜めに避ければ人の出入りができるぐらいのスペースができますが、京都劇場の2階席は無理。絶対にムリ。事もあろうに列のど真ん中の席で、席に着くにも席を立つにも、列の半分の方に立っていただきました(「すみません」連呼)。こういう時に限って、私が客席に入った時にはみんなもう座ってて、休憩時間に誰もトイレに立たないのはなぜですか(^_^;)

傾斜が急な分、前の人の頭が邪魔になることはなかったし、舞台の奥までよく見えたけど、前の座席とのあの間隔の狭さは考えもの。翌朝起きたら下半身がおかしかったです。軽いエコノミークラス症候群?

さて、本公演『ショウ・マスト・ゴー・オン』、公式サイトを見ると、先程引用した『イントロダクション』はあるのに、舞台の紹介に欠かせない『あらすじ』が見当たりません。主な配役(役名)も人物相関図もありません。

舞台を見て思いました。『あらすじ』も人物相関図も、なくても問題なし。というより、書くようなものがないと言った方が正しいかな。普段はわりとはっきり起承転結がある作品を観劇することが多いので、1ヵ所(それも舞台袖という、極めて狭い場所)を舞台に、ひたすらドタバタわちゃわちゃしているのが面白かったです(←そこ?)。私は学生時代、舞台スタッフを目指して専門学校に通っていたので、舞台裏のスピード感や緊張感に胃がキュッとなることもありました(;´∀`) 裏方をやっていたのは15年以上前なのに。なんだろ、トラウマかな(苦笑)

これが三谷幸喜の喜劇か、これがシス・カンパニーの舞台かと思いましたが…はい、たった1作品見ただけで全てを決めつけてはいけません。

福岡公演と今回の京都公演では、怪我で休演している小林隆さんの代役として、三谷さんが登場。

その前に、三谷さん自ら開演アナウンスを行います。客席の反応を見てアナウンスしていたようなので、生でしょう。アナウンスの中で、自分が小林さんの代役を務めることを述べ、「役作りの出来は94%ですが、温かく見守っていただければ幸いです」とお断りしておりました。開演前から客席で笑いが起こります。

いよいよ開演。

マイクを通さない生声での芝居が新鮮です。これぞ小劇場の芝居の醍醐味。そして遠目でも分かる、鈴木京香さんの存在感と美しさ。舞台監督の役なので、黒ずくめでノーメイク(風)で地味そのものなのに、存在感がちゃんとある。矛盾しているはずなのに、この2つが共存してるんですよね~。なんだか不思議。役としても役者としても素敵な女性でした。あんなボスだったら、私ももうちょっと裏方やってたかもなぁ。。

尾上松也さんは歌舞伎俳優なだけあって、やはり声の圧が違います。現代劇の舞台俳優とは声の出し方が違うのかな。腹の底から響いてくるような声でした。新納慎也さんもよく通る心地よい声。キャラはぶっ飛んでたけど。

登場人物ほぼ全員、ぶっ飛んだキャラです。

意外だったのは…と言っては失礼極まりないですが、ウエンツ瑛士さんが思ったより上手かったこと(←失礼の連続)。一番「普通の人」の役だったんですが、舞台では「普通の人」を演じるのが一番難しいと思うんです。芝居は作り物なので、普通(普段通り)にしていては舞台上では普通に見えない。それが、ウエンツさんはちゃんと「普通の人」に見えました。台詞も聞き取りやすかったし。

三谷さんは登場しただけで笑いをさらいます。ずるいよ(笑)

『鎌倉殿の13人』や『真田丸』では、ちょっと笑い(緩急の「緩」)に走り過ぎじゃないかと思う演出もあったように個人的には思いますが、締めるところと笑わせるところの切り替えが見事。

今井朋彦さん演じる脚本家に「ワクチンは4回目と5回目を同時に打ちました。PCR検査も1日2回やってます。心配性なもので」と言わせてみたり、「先生(医者)以外で、誰か注射を打てる人はいませんか」と言って、藤本隆宏さん演じるあっち(怖い)系の人に視線を向けてみたり、時事ネタやブラックユーモアもいい感じに散りばめられていました。

役者入り乱れてのドタバタ感が最初のピークに達した時に、芝居の中で「これから休憩です」と発表。この感じ、初体験です。その部分だけ急にミュージカル調になるし。

で、私は「すみません」を連呼しながら席を立ってトイレへ。

私が居た階の女子トイレは個室が4つのみ。休憩時間は20分。1階に行こうかどうしようかと考えながら並んでいたら、案内係のおねえさんが列の真ん中らへんに来て手を上げ、「こちらから後ろにお並びのお客様、一番数の多い、一つ下の階(1階ではない)のお手洗いにご案内します。このまま列を崩さずお進みください」とナイス誘導!

トイレ待ちの列に向かって、個数の多いトイレへの移動を呼びかけるのはどの劇場でもありますが、移動の判断は客次第。移動したら並び直さないといけないから、微妙な順番の時はそのまま待つ方が得策だったりするのよね。今回のように、当初並んでいた順番のまま、数の多いトイレへ案内してくれるのはありがたかったです。

後半も前半のスピード感とドタバタはそのままに。休憩が入ると、客席も舞台も一旦クールダウンしそうなもんですが、この作品には当てはまらないようです。

『鎌倉殿の13人』で伊東祐親(義時の祖父で八重の父)を演じた浅野和之さん。祐親がかくしゃくとした人物だっただけに(しかも時代劇)、登場しても「この人誰!?」状態(最初に登場した警察官も浅野さん…ですよね?)。登場シーンはあまり多くなかったものの、芝居の後半、絶妙な間の「え?」ひと言で本公演一番の爆笑を取っておりました。

舞台と映像作品の両方を見ていると、元々舞台で活躍していた人が映像作品に出演するとその存在感にハッとすることがよくありますが、逆は微妙な場合もあります(舞台用の大きな芝居を映像でもしていてシラケることもあるけど。。私は宝塚が好きなのですが、退団された方が出演するドラマを見ると、結構な頻度で芝居の不自然さに引いてしまいます(;・∀・))。

冒頭で「ほとんどが歴代の大河俳優ですやん!」と書いたものの、順番としては、三谷さんの舞台が先、そこから大河ドラマへの出演、でしたね。三谷さんって、役者の目利きでもあるのですね。。

綿密に作り込んでるんだけど恣意的に見える。
狙ってるんだけど作為的でない。

『ショウ・マスト・ゴー・オン』はそんな作品でした。どこにもはまらないように見えるパズルのピースが、最終的には全部バシッとはまる感じ。これが「物語を回収していく」ということなのでしょうか。

三谷さんが手掛ける他の作品もぜひ観てみたいと思います。

終演後の規制退場、自分の番になるまで10分近く待ちました。幕は上がったままでの終演。照明が消え、役者がいなくなっても、舞台には熱が残っているようでした。熱量の多い芝居だった分、ガランとした寂しさを感じてしまいました(><)

最後に、本作『ショウ・マスト・ゴー・オン』京都公演。大きな教訓が2つあります。

其の壱:観光シーズンに観光目的以外で京都には行かない方がいい。

其の弐:アロンアルファは発泡スチロールを溶かす。

皆さん、何かの参考になさってください(笑)

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