『うめだ文楽2021』~文楽は(意外と)おもしろい!~(2021/3/28@グランフロント大阪ナレッジシアター)【鑑賞レポ/感想】

舞台レポ

※本記事には広告が含まれています。

こんにちは、しろこです。

生の舞台が好きです。
食費や生活費を削ってチケット代に充てるような奴です(良い子は真似をしないでください)。

ミュージカル、ストレートプレイ、バレエ、オペラ、オーケストラ、ジャズ、ポップス、ロック、インストゥルメンタル、新喜劇、歌舞伎、狂言、能・・・と、 1回観てそれっきりなものも含めると、実にさまざまなジャンルの舞台を観てきました。

・・・文楽以外。

なぜか、文楽以外(笑)

避けていたわけではありませんが、なぜだろう。。
人形が怖いと思ってたのかな。。←子供か!

一番敷居が高そうな気がしたから?
能を観た奴が言うセリフじゃないか^^;

いきなり国立文楽劇場に行くのは勇気がいると思ったから?
(能は能楽堂ではなく、大阪のフェスティバルホールで観ました)

・・・と思って、ものすごく久々に国立文楽劇場のウェブサイトを見て思い出しました。

めちゃくちゃ長い演目(休憩挟んで約5時間)があるのと、チケットの仕組みがよくわからなかったからだ、と。

ミュージカルなどで1日2回公演がある場合、キャストが変わることはあっても、上演される演目は2回とも同じです。

でも文楽の場合、第1部、第2部(ときには第3部まで)で、それぞれ違う演目が上演されるのです(そういえば歌舞伎もそうだったような・・・)。

1部につき1枚のチケットがいるの?
それとも1枚で全部観れるの?
でも、全部観れるとしたら朝から晩まであるけど・・・しゅ、終日文楽DAYってこと?←なにそれ(;´∀`)

で、当時のしろこは気力も体力も時間もお金も今よりなかったので、それ以上調べなかったのでした。

せっかくなのでこれを機に調べました。
通常の座席(1等席、2等席)とは別に、『幕見席』というものがあるようです。通常の座席で観たい場合は、部ごとにチケットが必要。幕見席は、当日劇場で先着順でしか購入できませんが、格安でそれぞれの部を1幕だけ観られるとのこと(※1幕だけといっても、1時間以上あります)。

そんな世間一般にはあまりなじみのない(すんません)文楽ですが、数年前に突如クローズアップされたことがありました。

覚えてます?

そう、橋下徹元大阪市長が打ち出した、文楽協会への助成金カット問題です。

何を隠そう、私が文楽を観てみたいと思ったのはこの問題がきっかけです。
そこまで叩かれる文楽って、実際どんなん?と思って。

人生、何がきっかけになるかわかりません(笑)

2~3年前に行った何かの公演の折。
配られた公演案内のチラシの中に、『うめだ文楽』のチラシがありました。

若手技芸員による上演。
会場はグランフロント大阪ナレッジシアター。
日替わりゲストのトークショーあり。

そして何より・・・チラシがポップw(゜o゜)w
(こちら↓は2021年版。チラシではなく、当日、入場口でもらったプログラム?の表紙です)

私の中で、文楽に対する敷居が一気に低くなりました。←単純。

よーし、一度観に行こう!といよいよ思ったのが昨年の『うめだ文楽2020』

・・・はい、コロナで中止_l ̄l○lll ガクッ

晴れて今年は無事開催!
というわけで、いそいそと観に行ってまいりました♪

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参考情報

『うめだ文楽』とは

大阪の放送局と、グランフロント大阪ナレッジキャピタル(知的創造拠点)がタッグを組み、2015年2月に初開催。太夫、三味線、人形遣い全てを20代~40代の若手技芸員が務める。多彩なゲストによるトークショーもあり、初心者にもわかりやすく文楽の魅力を伝える。

『うめだ文楽2021』の演目とあらすじ

【演目】『義経千本桜 ~河連法眼館(かわつらほうげんやかた)の段~』  

【あらすじ】

兄・頼朝に命を狙われている源義経は吉野一山を守る僧・河連法眼(かわつらほうげん)の館にかくまわれています。家来の佐藤忠信(ただのぶ)と面会しているところに義経を慕って後を追いかけてきた静御前が到着します。

お供には忠信を連れて… 「忠信がふたり!?」。
混乱する静御前の側からは、いつの間にか付き添いの忠信が姿を消していました。

不審に思う静御前とその正体が知りたい義経。
思えば、旅の途中で義経から預かった鼓を打つとかならず忠信が近くに寄ってきました。

消えた忠信をおびき出すため、静御前は試しに鼓を打ってみます。
するとパッとどこからか忠信が現れました。

そして鼓の音色に聞き入ったりひれ伏したり。そんな忠信の実の正体は…

『うめだ文楽2021』公演案内より引用

出演者

太夫:豊竹希太夫

三味線:鶴澤寛太郎、鶴澤燕二郎

人形遣い:吉田玉勢、吉田簑紫郎、桐竹紋吉、吉田玉誉、吉田簑太郎、桐竹勘次郎、吉田玉彦、桐竹勘介、吉田簑之、吉田玉延、吉田玉征

知っている人が一人もいない公演に行くのは初めてでした^^;

ゲストとトークテーマ

落語家・桂南光(3/26(金)18:00)『落語と文楽のつながり』

作家・三浦しをん(3/27(土)11:00, 16:00)『文楽のススメ〜技芸員の素顔に迫る~』『文楽のススメ〜仏果を得ずをひもとく~』

チェリスト・宮田大(3/28(日) 11:00, 16:00)『義太夫三味線×チェロ“感情を奏でる”技巧』『義太夫三味線×チェロ“物語を紡ぐ”音色』

11時公演のスケジュール

11:00~11:30(30分) トークショー
11:30~11:40(10分) 映像(簡易アニメのような)での公演解説
11:40~11:55(15分) 休憩
11:55~12:45(50分) 『義経千本桜 ~河連法眼館の段~』上演

なんとも過ごしやすいスケジュール!

感想

トークショー『義太夫三味線×チェロ“物語を紡ぐ”音色』について

私が行ったのは3/28の11時公演。
11時きっかりに司会者が登場しました(司会者がいる時点で、通常の公演とは違いますね)。

あ、テレビで見たことある人(‘O’*)

それもそのはず、おそらく関西の人にとってはおなじみの、関西テレビの関純子アナウンサー!名前を言われてピンとこなくても、顔を見たり声を聞くと「ああ!」となると思います。

しょっぱなのご挨拶は

「本日の司会は昭和のアナウンサー、関西テレビの関純子です」

さすが、つかみはオッケーです(^m^)むふっ。

トークショーのゲストは世界的チェリストの宮田大さん。

技芸員からは三味線奏者の鶴澤寛太郎さん。

トークテーマは『義太夫三味線✕チェロ”感情を奏でる”技巧』  

私は長年『ドリマトーン』という楽器を弾いているので、楽器つながりで何としても3/28の公演に行きたかったのです。←文楽が観たかったんちゃうんかい!

宮田さんと寛太郎さんはプライベートでもお互いの公演を観ているらしく、関アナウンサー進行のもと、終始ほのぼのしたトークが繰り広げられました。

宮田さんが弾いているチェロはストラディバリウスだそう。

関さんが

「ストラディバリウスというとヴァイオリンのイメージがありましたが、チェロにもあるんですね」

と言うと、客席も同意する空気に。
かくいう私も、ストラディバリウス=ヴァイオリンだと思っておりました(・_・;)

そして関さん、さらに聞きます。

「おいくらぐらい・・・?」

いや~、いいですねぇ(笑)

それに対して宮田さんは笑顔で

「貸与されているものなので詳しくは言えないのですが、うん十億・・・」

(ざわつく客席)

そりゃヴァイオリンより高いよね、と思ったものの、は~。。。
隣で聞いていた寛太郎さんも、は~・・・という表情。

ちなみに寛太郎さんは自身の三味線について、

「おじいちゃんからもらったものだと思うんですけどねぇ」

とあっけらかんとおっしゃっていました。

寛太郎さんのおじいさん(2018年没)は人間国宝です(ひいおじいさんも人間国宝です)。ま、孫から見れば人間国宝かつ三味線の師匠とはいえ、おじいちゃんはおじいちゃんですかね^^;

寛太郎さんが初めて宮田さんのコンサートに行ったときの話になり、

寛太郎さん:もうね、気持ち悪いって思われるかもしれないですけど、恋に落ちたような気分になりました。
宮田さん:終わってから感想をLINEでいっぱいいただいて^^
寛太郎さん:なんか気持ち悪いですよね、すいません(汗)
宮田さん:いえいえ、あぁ、こういうふうに聴いてくださってるんだと思って嬉しかったです^^

こんな感じの和やかな雰囲気の中、トークテーマである『感情を奏でる技巧』の例として、宮田さんがサン・サーンス作曲『白鳥の湖』の有名な一節を演奏。

・・・優雅。

ほんと、湖に浮かぶ白鳥が見えた気がする。

演奏時間は若干20秒くらいだったと思いますが、出だしの1音目から湖の畔で白鳥を眺めているような気分になりました。

演奏後、寛太郎さんがすかさず「ね?恋に落ちるのわかるでしょ?」と客席にアピール(笑)

・・・わかるわ(*^^*)ポッ

その後、

「今のは白鳥が優雅に着水するイメージですが、今度は太った白鳥をイメージして弾いてみます。太っているけど優雅さはそのままで」

と紹介して、同じ一節を再度演奏。

音の迫力もゆらぎも先ほどとは全く違う!

関さんが「さっきより波紋が大きく感じました!」と興奮気味に感想を述べていました。

同じく!

斜めから見ると(別に見なくていいけど)、弾く前にイメージを伝えるのはちょっとズルい(聴く側もそういう想定で聴くから)。

でも、イメージ(=弾き方)によって同じ楽譜でもここまで表現を変えられるものなのかと、大変勉強になりました。

続いては寛太郎さんの番。
(以下は文楽初心者の感想です。事実と違う場合はどしどしご指摘くださいm(__)m)

西洋楽器と義太夫三味線(文楽の三味線)の大きな違いは、感情を表現するときの音数の少なさだと思いました。

悲しみの音はたった1音。
(西洋楽器でやるとすると、フレーズになるかな。少なくとも単音で表現はできないはず)

また、西洋音楽やポップスなどにあるような、『メロディー』はない・・・んじゃないかな。

義太夫三味線は『曲を弾くもの』や『伴奏するもの』ではなく、あくまでも『感情や情景を表現するもの』であり、『芝居の一部』なんだと思います。

ビブラート、グリッサンド、ポルタメント(和楽器の場合は多分言い方が違うんだろうけど)、音の緩急、それにバチを打ち付ける音などで多彩に変化する義太夫三味線。バチを打ち付ける音はすごい迫力でした。

三味線の楽譜はもちろん5線譜ではありません。寛太郎さん曰く「メモのような感じ」だそう。ドレミ、ではなく、いろはに、です。

最後に2人で連弾き(つれびき)を披露。
連弾きとは、琴・三味線などを2人以上で一緒に弾き合わせること(ピアノでいう連弾ですね)。芝居のクライマックスで演奏され、音圧と力強さが1人のときとは全く違います(本編を観た感想)。

宮田さんが耳コピして譜面を書いたそうです。三味線の音だけでなく、太夫の声も。

直線的な三味線の音に対し、曲線的なチェロの音。

「(太夫のパートも含め)うまいことやるなぁ。。」と関心しながら聴いておりましたが、本編の三味線2挺での連弾きを聴き、「うん、やっぱりこっちのほうがいい!」と思っちゃいました(笑)

カバー曲でもクラシックのアレンジでも何でも、オリジナルに勝るものなし。←持論。

古典芸能に限らず、いろいろと新しいことに挑戦するからこそ、オリジナルの良さがわかることもありますしね。

『型を破る』という言葉がありますが、『破る』ためには『型にはまっていること』が前提です。『破る』のは内側からです。外側からじゃありません。←あんた何者?

文楽『義経千本桜 ~河連法眼館(かわつらほうげんやかた)の段~』について

まず上手(舞台の右側)に太夫・ 豊竹希太夫さんと三味線奏者・鶴澤寛太郎さんが登場。

座布団に座るなり、丁寧に裃(かみしも)を整えていらっしゃいました。
豊竹さんは床本(ゆかほん。台本のようなもの)を目の高さに上げて、スッと一礼。

舞台に立つ人誰一人として無駄な音を立てない。
動くときは 「スッ」「す~っ」という表現がぴったり(文字にするとなんか変だけど^^;伝わりますかね、この感じ・・・)。
幕を引く人(人形遣いの1人だと思う)も摺り足。
人形遣いもずっと摺り足(人形遣いの足元は一切見えないので、おそらく)。

無駄がない。
背筋が伸びている。
居住まい、佇まいが美しい。

これらは、これまで拝見した伝統芸能の演者さん全員に共通します。
(凛とした姿勢、見習いたいです)

いよいよ主役である人形の登場。

人形1体につき遣い手は3人。
主遣いの方は袴姿で顔は出したまま、他の2人は黒衣姿です。衣装の早替えや小道具の受け渡しを行うときは、もう1人加わります。

初文楽鑑賞で一番驚いたポイントはこれ↓

人形が・・・長い(笑)

足が見えない状態のとき(足は着物に隠れて、人形がふつうに立っている状態)は何とも思いませんでした。しかーし!人形の足まで出して操る(『人形を遣(つか)う』と表現するようです)ときにですよ、人形がびよ~んって伸びた!

「伸びた」と言うと語弊があるかもしれません。いや、でも、多分初めて観た人は「びよ~ん」となったように見えるはず^^;

帰って調べたところ、人形にもよりますが、丈は130~150cmとのこと(重さは数キロ~10キロ)。

150cmというと・・・小学生くらい?
人形で、と考えると、やっぱり大きい(@_@;)

それに、いくら3人で遣うとはいえ、10キロの人形を時には頭より高い位置で遣ったり、10分以上微動だにせず留めておくのはかなりの重労働だと思います。考えただけで腕がプルプルする。。

文楽の主役は人形ですが、遣い手の位置替えも見ものです。
人形を頭より高い位置で遣うときは、人形の下をくぐって位置替え。
こんなに俊敏さが要求されるものだったとは・・・。

また、静御前に付き添う忠信の衣装の早替えも見ものでした。

演者の早替えは、歌舞伎においても見ごたえがある場面のひとつです(ほんっとに視界から消えた一瞬で替わるんです!)。

人形の早替えでは、衣装だけでなく髪型も変わりました(髷を結っていたのが、落ち武者のように変貌)。

主遣いに早替えがあることも、人形の早替えでは髪型も含めて変わることも初めて知りました。

太夫の語り(場面説明と登場人物のセリフ)は3割ぐらいしかわかりませんでした。それでも話の流れがわかるんだから、なんだかすごい。
(もちろん、演目がもともと有名な『義経千本桜』だったことや、トークショーのあとに懇切丁寧な解説があったから、というのもあります)

人形のまばたきや顔の角度、要所要所で入る重い足音(人形遣いが鳴らしている)、三味線の音で、登場人物の感情や情景が手に取るようにわかりました。

人形だけど、人間だ。

正直、後半でちょっと眠たくなったものの、クライマックスの連弾きで一気に覚醒(ΦωΦ)
(連弾きに合わせ、もう1人の三味線奏者・ 鶴澤燕二郎さんが静かに出てきてスタンバイ)

人形も太夫も三味線も気勢が上がりに上がる!

その熱量のまま幕引きとなりました。

そして太夫と三味線奏者は何事もなかったかのように静かに舞台袖へ。

太夫は顔の筋肉を目一杯動かしての熱のこもった語り。
その他の方々は、終始、表情が崩れることはありませんでした。

あくまでも、主役は人形。

ーーーーーー
初めての文楽。
初心者向けに構成されていたということもあり、思った以上に楽しめました。

何の心得もないけど、多少興味はある、とか
トークショーに気になるゲストが出る、とか

きっかけは何でもいいと思います。
(私なんて、イチ政治家が文楽をこきおろしたから、というのがきっかけでしたもん:笑)

観たことがない方、まずは『うめだ文楽』へどうぞ^^

百聞は一見にしかず。

ただの興味本位だっていいさ!

世の中は知らないことだらけ。
新しい世界に触れるのは、いくつになってもワクワクドキドキ。
自分の引き出しも増えます。
(伝統芸能や伝統文化が廃れていくのは心が痛いし。。。)

次回の『うめだ文楽』もぜひ行きたいと思います(^o^)

いや、待てよ・・・

そうだ、国立文楽劇場に行こう!

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