~日本のエッセンス~ミュージカル『イザボー』(2024/2/10@オリックス劇場)【観劇レポ/感想】

舞台レポ

※本記事には広告が含まれています。

本記事には芝居のネタバレを含みます。

『その日、フランスは堕ちた。最悪の王妃の手によって』

心躍る(変態め(-“-;))キャッチコピーと、わっるそ~~~~~な主演・望海風斗さんのキービジュアル。

観たいっ!!

会場は・・・オ、オリックス劇場っっ!?(オリックス劇場についてはこちら↓をご覧ください。案の定今回も女子トイレは大行列でした)

こんにちは、しろこです。

会場名を見てちょっと悩みました。

でも、望海さんの悪女役が観たかったし、その旦那である国王役が上原理生さん(推し)だったし、今しか観られないだろうと思ってチケットを入手。

2階席の最後列でも没入できる、非常にレベルの高いミュージカルでした♪

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あらすじ

百年戦争の時代。バイエルン大公の娘として生まれた少女は、やがて隣国フランスの王妃イザボー・ド・バヴィエール(望海風斗)となる。夫であるシャルル6世(上原理生)はイザボーをこよなく愛したが、ある出来事を境に狂気に陥ってしまう。破綻した王政につけ入り、権力を掌握しようとするのはシャルル6世の叔父ブルゴーニュ公フィリップ(石井一孝)とその息子ジャン(中河内雅貴)。彼らと対立するシャルル6世の弟オルレアン公ルイ(上川一哉)は、イザボーと不貞の関係となり、彼女が権力を獲得するために助力していく。混沌の時代の中で、イザボーは愛と衝動のままに生き抜こうとする。のちにフランス・ヴァロア朝の第5代国王となるシャルル7世(甲斐翔真)は、義母ヨランド・ダラゴン(那須 凜)と共に、実の母であるイザボーの生き様を辿っていくこととなる。フランスの歴史上でもっとも嫌われた最悪の王妃の生きた道を──。

『イザボー』公式ウェブサイトより

配役

イザボー・ド・バヴィエール  :望海風斗
バ​イエルンからフランスに嫁ぎ王妃となる。バイエルン名はイザベル。

シャルル七世:甲斐翔真
イザボーの6番目の息子。後のフランス国王。

シャルル六世:上原理生
イザボーの夫。フランス国王。ある出来事を機に狂気に陥る。

ブルゴーニュ公ジャン:中河内雅貴
フィリップの息子。

オルレアン公ルイ:上川一哉
シャルル六世の弟。

ヨランド・ダラゴン:那須凜
シャルル七世の義母。

ブルゴーニュ公フィリップ:石井一孝
シャルル六世の叔父。

イザベル:大森未来衣
幼少期のイザボー。

ヴァレンチーナ:伯鞘麗名
ルイの妻。

上演時間

【第1部】12:30~13:40

(休憩 20分)

【第2部】14:00~15:35

感想

前述のとおり、望海さんと上原さん観たさで行ったわけですが、最初に登場したヨランドの台詞回しや声にいきなり魅了されました。台詞を一節聞けば、上手いかどうかって何となく分かるんですよね。

演じているのは那須凛さん。

知らない。名前をどこかで見たこともない(と思う)。

たまにいらっしゃるんです、別の人や曲を目当てに観劇した作品で、「この人誰!?」と思うほど惹き込まれる方が。そんな方に出会えるととても嬉しい(;_;) 帰って調べてみたら、劇団青年座の団員で、なんと20代! もっと年上の方が演じているのだとばかり思っていました。ハスキーで凄みのある声。物語が進むにつれ、「イザボーが悪女なら、ヨランドもある意味相当な女では…」と思う一筋縄ではいかない役どころです。でも、シャルル七世とのやり取りの中で、時々面白いことも言う(あれは甲斐翔真さんとのアドリブなのかしら?)。素敵な俳優さん、またしても発見しました^^

ヨランドとシャルル七世は、物語の狂言回しでもあります。
狂言回しがいるのと、歌詞が状況説明や心の変化になっているので、大まかなストーリー展開で「?」と思う部分はあまりありません。「ブルゴーニュ派」や「アルマニャック派」が出てきて、どちらにつくとか手を組むとかいう話で、ちょっと置いてけぼりをくらうかもしれませんが。。

百年戦争について調べると、点と点とが線で繋がると思うので、興味のある方はぜひやってみてください。ちゃんとジャンヌ・ダルクも出てきます(^m^) なお、ルイがジャンに暗殺されるのも史実です。

ヨランドとシャルル七世に続いて、物語の登場人物たちが舞台上へ現れます。そして舞台のさらに上(セットの上)にイザボーが登場。

肩をいからせた真っ赤なマント(裏地は真っ黒)に身を包んだ望海さん。見た目も歌声も、ど迫力。

宝塚を退団してから初めて拝見しましたが、やはりこの方は宝塚以外でも役者としてやっていけますね。
元スター(トップスター含む)でも、退団後の舞台を拝見すると、「この人は宝塚だから輝けたんだなぁ。。」としんみりしてしまうこともありますが、望海さんは別格のようです。ちなみに、それとは逆に、「この人上手いな~」と思って調べたら、元宝塚の方だったということも何度かあります。

純真で貞淑​で小鳥のようだったイザベルが、獣のような悪女イザボーへと変貌する1部終盤での歌は、狂気を孕んでいました。小鳥が獣に変わった瞬間、顔付きもまとっている空気感もガラッと変わった。

これは2部が楽しみすぎる! 一気に悪女イザボーの本領発揮だー! と期待していたら、肩透かしをくらったような雰囲気で2部が開演。

シャルル六世とルイが客席からご登場・・・と言いつつ、一瞬誰か分かりませんでした。声で上原さんと上川さんだとは気付いたものの、国王と王弟にしてはずいぶんラフな格好だったもので…。

役として演技半分、本人として観客への声掛け半分。

ルイとイザボーの思い出話の中のワンシーンを再現したもので、そのまま何事もなかったかのように物語の世界に入っていきました。

この時もそうでしたが、客席を使った演出が要所要所にありました。
こういう時はね、1階席以外の人は疎外感があるのよね(私は2階席)。ちゃんと上の階にも視線は送ってくれたけど、1階席の後ろの方で何かやってると、2階席の2列目以降の人からは全然見えないもんね。。客席の高揚感も違うし。。やっぱね、演者が目の前に来るってのは特別ですよね。。

おっとすみません、ただの2階席最後列のひがみ、ねたみ、そねみです(笑)

見た目と歌声のど迫力で言ったら、上原さんだってとんでもない。

あの声で、あのガタイで、国王で、しかも狂って、王妃に暴力を振るって・・・迫力でしかない。

正気の王がだんだん狂気に駆られていくのかと思っていたら、王としての登場シーンでいきなり狂ってました。それがちょっと残念。
物語の途中で正気に戻るシーンも何度かありますが、狂う過程というか、狂うきっかけをもう少し丁寧に描いてほしかったです(後々のイザボーらの台詞から、ルイの差し金の預言者に「身近に裏切り者がいる」と言われて狂ったのだと分かりますが、それで狂うか?と思ってしまった(-_-;))。なお、シャルル六世が精神疾患だったというのは史実のようです。

セットは、非常によく考えられた形状だと思います。動きや組み合わせ方を変えて、螺旋階段っぽくなったり、城壁っぽくなったり、牢獄っぽくなったり。照明は全体的にシャープな感じ。

ジャンルで言うと、ロックミュージカルでしょうか。ロックテイストを基調としながらも、ラップ調の歌があったり、歌い上げる歌があったり、あとタンゴもあったりと、3時間中ダレすることはありませんでした。

アンサンブルは、ダンスも歌も身体能力も、皆さんレベルが高い。

終盤、ジャンヌ・ダルクが出てきたあたりで、物語の軸がズレてきたような…大丈夫か…と心配になりました(何の心配?)。まぁ、狂言回しかつ王位継承権の順番が低かったシャルルが、どのような経緯で王となったのかを見せるために入れたシーンだと思うけど、ちょっと中途半端な気がしました。ただ、イザベルとジャンヌ・ダルクの二役を演じた子もめちゃくちゃ上手かった! …って、「子」じゃないんですよ。演じているのは大森未来衣さん。てっきり子役かと思っていたら20代でした。那須さんと逆パターンの驚き(@_@;)

このまま幕が下りたら、私、ちょっと怒っちゃうわよと思いましたが、本筋に戻って一安心。しかも最後で、音楽なしで母と子が対峙するシーン。

わずかに垣間見えるイザボーの親心と矜持、そして去り際のシャルル七世のお辞儀に胸が熱くなりました。

これが、本記事の副題「日本のエッセンス」

そう、なんと『イザボー』は日本のミュージカルなのです。

題材を聞くと、絶対輸入物だと思いますよね(^_^;)​ 実際観劇して、魅せ方も輸入物と遜色がないと思いました。それぞれの役に見せ場となる歌があったのも良かったし。

最後で母と子が対峙するシーンの、シャルル七世のあのお辞儀は、日本人だからこそ入れることができたシーンじゃないかな。イザボーをただの悪女にしなかったのも日本人ならではかもしれません。遠藤周作が書いた『マリー・アントワネット』のように、世間で言われていることを違う角度から捉えた作品だと思います。

去年観に行った『生きる』も日本のミュージカル。全くジャンルは違うけど(そもそも舞台となる国も時代も違う)、日本発祥のミュージカルの振り幅の大きさに感嘆。ちなみに『生きる』は、ハリウッドで映画化もされています。

再演するだろうなぁ。演劇関係の賞も何(誰)かしら獲る気がする。それぐらいクオリティーが高かった。たまに、何でこの人をキャスティングしたんですか?と思う舞台もあるんですが、今回は平均的なレベルが高かったです。

本当のラストシーンは、Kバレエカンパニーの『クレオパトラ』並みの衝撃。予想外の演出。「日本のエッセンスが~」とか言っておいてなんですが、「イザボーはイザボーだったか!?」と思う壮絶な(?)幕切れでした。

望海さん、宝塚時代の『ONCE UPON A TIME IN AMERICA』でもバラに囲まれていましたが、今回はバラにまみれてます。毎回掃除して次の公演に向けて再度仕込むのが大変そう(冷静)。

カーテンコールでの望海さんは、完全にイザボーがどっか行っちゃって、満面の笑みで「おおきに~」と客席に大きく手を振っておられました(^_^)/~​ 幕が下りた瞬間から(※実際に幕は下りません)、イザボーではなく望海風斗に戻ってました(笑)

日本発祥のミュージカル『イザボー』、見応え十分です!

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