~歴史に『もし』はない~宝塚歌劇花組公演『うたかたの恋』『ENCHANTEMENTー華麗なる香水ー』(2023/1/7@宝塚大劇場)【観劇レポ/感想】

宝塚

本記事には公演のネタバレを含みます。

​こんにちは、しろこです。
私事ですが、本記事が『まるかて。』100記事目となりました。キリ番いえーいヽ(^o^)丿

​2023年の舞台始め・宝塚始めは、花組『うたかたの恋』『ENCHANTEMENT-華麗なる香水(パルファン)-』です。1記事目と100記事目が偶然にも花組の観劇レポになるなんて(驚)

​2022年の宝塚納めとなった星組『ディミトリ』の際、心の中で大劇場さんに「今年もお世話になりました」の挨拶をしました。もちろん年始も「今年もよろしくお願いします」とご挨拶。1~2ヵ月に1回は訪れている場所ではありますが、今年初めて、今年最後、というのはなんだか特別な気持ちになります。

年明け早々、東京公演の星組『ディミトリ』、バウホール公演の宙組『夢現の先に』が、初日の幕は開いたもののすぐに中止になりました。バウ公演まで中止になったので、もしかしたら大劇場公演も…と覚悟はしていましたが、無事公演が続い…ていたのに、昨日(1/10)中止のLINEが来ました(T_T)

前述した『ディミトリ』も『夢現の先に』も、公演日前日の夜に中止の発表がありましたが、今回は公演日当日の朝。行く予定だった皆さん、おそらくどこかで覚悟していたかと思いますが、心中お察しいたします。私も月組『グレート・ギャツビー』の時、観劇予定日の朝に公演中止のLINEを受け取りましたから…。

記事執筆の最中に中止の発表があったので、このタイミングで投稿するのはどうなんだろうと自分で思いますが、拙ブログはしろこ本人の備忘録を兼ねているので予定通り投稿することにいたします。

それにしても、去年の星組全国ツアーだったでしょうか、陽性者が出たけど代役を立てて公演続行しませんでした? あの時、これがアップデートされた宝塚歌劇団の姿勢か!と思ったファンも少なからずいたと思うんですけど、、、代役公演はあの時だけでしたね。。

本記事には公演のネタバレを含みます。

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『うたかたの恋』について

あらすじ

1889年のオーストリー帝国。皇太子ルドルフは、次代のヨーロッパを担う先見の明を持つ人物として広く存在が知られていた。しかし、皇太子としての公務や旧態依然としたしきたり、愛の無い政略結婚で結ばれた妻との関係が彼の心を押さえつけていた。一方、ルドルフの従兄弟であるジャン・サルヴァドルは、同じハプスブルク家の青年でありながら平民の娘を恋人に持ち、幸せに過ごしていた。ジャンの生き方に憧れを抱くルドルフだが、皇太子である自分に自由な振る舞いが許されるはずもなく、現実から逃れるように数々の女性と浮き名を流す。ある日、ブルク劇場を訪れたルドルフは、バレエ鑑賞に来ていたマリー・ヴェッツェラと偶然言葉を交わすこととなる。マリーの純真な姿はルドルフの胸に強い印象を刻み、ルドルフの微笑みと物憂げな表情にマリーは心惹かれていく。マリーと共に在りたいーー。しかし、逢瀬を重ねるようになった二人の関係は、それを快く思わない者や政治に利用しようとする者たちによって、破滅へと向かっていく……。

主な配役

ルドルフ:柚香光
オーストリー帝国の皇太子。

マリー・ヴェッツェラ:星風まどか
男爵令嬢。

ジャン・サルヴァドル:水美舞斗
ルドルフの従兄弟。

フェルディナンド大公:永久輝せあ
ルドルフの従兄弟。

フランツ・ヨーゼフ:峰果とわ
オーストリー帝国の皇帝。

エリザベート:華雅りりか
オーストリー帝国の皇后。

全体を通しての感想

公式サイトの人物相関図を見た時に軽く衝撃を受けました。顔と名前が一致する演者があまりいない(=若手の起用が一気に増えた)(@_@;) 期待半分、不安半分…いや、不安の方がちょっと多め。そして何より不安だったのが、前作『巡礼の年』で飛龍つかささんと音くり寿さんが退団されたことで、芝居の中で圧倒的に歌える人がいなくなってしまったのではないかということ。

ただ、考え方を変えると、実力のある演者にとっては日の目を見るチャンス、観客にとってはほとんど知らなかった演者を知るチャンスでもあります。あらかじめ好きな演者がいると、どうしてもその人をオペラグラスでロックオンしたくなるじゃないですか。で、オペラグラスの外で繰り広げられるいいシーンを見逃すことがあるわけですよ(^_^;) でもロックオンする人がいないと、全体を俯瞰して観ることができます。その中で、舞台のすみっこにいる人や少ししか台詞のない人に目が留まることがある。いろんな見方ができるのが舞台の醍醐味です。

今回は2階席での観劇でした。抽象的な表現になってしまいますが、1階席は物語(虚構)を観る席、2階席は舞台(現実)を観る席だと思います。2階から見ると、立ち位置やセットの位置を示すたくさんのシール、セリや盆の位置、床についた傷や擦れがよく分かります。一番大きなセリが下がっている時は機構(歯車や滑車)も見えます。まぁ、こういうのに注目するのは自分が舞台の裏方を目指していたことがあるからかもしれません。

今回の花組公演『うたかたの恋』、数ある宝塚作品の中でも「名作」と謳われています。

…が、う~ん、私にはどのあたりが「名作」と呼ばれる所以なのかよく分かりませんでした(意見には個人差があります)。

宝塚に似合いそうな筋書きではあるし、様式美といえば様式美なんだろうけど、同じく様式美の『ベルサイユのばら』と違ってイマイチ感情移入し辛い(『ベルサイユのばら』は闘う女性としてのオスカルに共感できる)。

月組『ダル・レークの恋』や雪組『ヴェネツィアの紋章』、星組『マノン』は、現代を生きる人間の感覚からすると話自体が「なんだかなぁ…」な感じ。当時の時代背景や情勢、登場人物たちが置かれている状況を考えると、他に道はないということだと思いますが。

『うたかたの恋』は、ルドルフの苦悩は現代人にも通じる部分はあるものの、私はどうにも好きになれませんでした。ただの好みの問題でしょうけどね。一番の要因は、ルドルフと心中するマリーのキャラクターがバカっぽく見えるから。星風さんは好きなんだけど、作品の中でのマリーというキャラクターが悪目立ちして見えてしまう。それこそ、当時の貴族社会を考えるとあれが標準なのかもしれませんが。。やっぱダメね、観劇中に現代の感覚を持ち出しちゃ(苦笑)

そして不安も的中。歌い手役の人ですら肝心の歌が…。これまでも何度か書きましたが、これでは役に説得力がありません。初日から1週間後の公演を観劇したので、まだ役が板についていなかった可能性もありますが。。

次回の花組大劇場公演、『鴛鴦(おしどり)歌合戦』のようですけど…。作品紹介に『オペレッタ喜劇』と書いてますけど…。申し訳ないけど、今の花組で最もやらない方がいい演目じゃないですか…? オペレッタですよね? オペラ歌手並みに歌える人、一人でもいますか?

全体を俯瞰して観たことで発見できた「おっ!」な人は、劇中バレエ『ハムレット』でハムレットを演じた天城れいんさんとオフィーリアを演じた七彩はづきさん。上手かった。宙組『アナスタシア』の見事な劇中バレエで、優希しおんさんと潤花さんを知ったことを思い出しました。『アナスタシア』の時と同様、この場面にはトップコンビも出ていたのですが、劇中バレエに釘付けでした。

貴族社会が舞台ということもあって、セットはどれをとっても豪華。舞踏会の場面ではセットに鏡が含まれているので、貴族たちのきらびやかさが引き立ちました。また、フランツの執務室に掲げられた巨大な双頭の鷲は圧巻です。

『うたかたの恋』、非常に楽しみにしていたものの、諸々の事情により(マリーのキャラ、席の位置、周囲の客のマナーなど)物語に惹き込まれることがないまま超冷静な観劇が続いておりました。

それが一変したのが、華雅りりかさん演じるエリザベートが登場してから。

凛とした佇まいと台詞回し、強さと慈愛の両方を併せ持つ雰囲気に、明らかに舞台上の空気が変わりました。そしてしろこの観劇態度も変わりました(笑)こういう、場を締めることのできる人(=宝塚とは全く関係ない舞台でも活躍できそうな人)がいるとホッとします。

そんな華雅さんも今作で退団なんて。。2023年のNHK大河ドラマじゃないけど、どうする花組…。

終盤、死を決意したルドルフとマリーの舞踏会での最後のダンス(『エリザベート』に掛けているわけではありません)を見つめる表情にも胸を掴まれました。ここでエリザベートの台詞は一切ありませんが、嫌な予感が胸をよぎっている表情です。思わずオペラグラス・ロックオン。

伯父であるフリードリヒ侯爵(羽立光来さん)により、自分の意に反して皇位継承順位第1位にさせられようとするフェルディナンド大公(皇位継承順位1位はもちろん皇太子であるルドルフ。2位がフェルディナンド大公)。

『うたかたの恋』の物語はルドルフの死で終わるので、フェルディナンド大公はその後どうなったのかが気になり、帰ってから調べてみました。

フェルディナンド大公は、ルドルフが自殺した1889年に皇位継承順位第1位となりましたが、1914年、訪問先のサラエボでセルビア人により暗殺されたそうです(暗殺されたことは、公演プログラムの永久輝さんのインタビューでチラッと触れられていました)。

これを受け、オーストリアがセルビアに宣戦布告し、第一次世界大戦が勃発。フランツ・ヨーゼフは1916年に死去し、カール1世(フェルディナンド大公の甥)が皇帝に即位。1918年、オーストリアが連合軍に降伏。カール1世は退位し、ハプスブルク王朝の終焉となります。たった100年前の話。

余談ですが、なんとフェルディナンド大公、明治時代に日本を旅行しております。

ルドルフのように先見の明と広い視野を持つ人間は、いつの時代も潰されたり、強大な権力と闘わなければならない。組織では今も昔も、長いものには巻かれろと思う者、常に大勢に乗る者、波風を立てない者が、いわゆる「空気を読める者」として重宝され支持される傾向がある。そんなものはクソくらえだ。だから、ルドルフの生き辛さは、感情移入こそできないが理解はできる。

実際のルドルフの写真がいくつか残っていますが(興味のある方はググってみてください)、そのどれを見ても、どこか不安げで全く覇気のない表情をしています。繊細そのもの。本来は威厳を示すものであるはずの肖像画からも同じ印象を受けます。人を見た目で判断してはいけないと言われますが、旧態依然とした体制やしきたりと闘うことができなかったのも頷けます。

そしてそれができたのが、『蒼穹の昴』の梁文秀だったのかなと思います。

人は八方塞がりになると、ルドルフと同じ道を選ぶこともあるかもしれない。それを理解した上でなお、文秀のように屹然と生きたいと思う。

ルドルフが皇帝になっていたら、世界は今とは異なるものになっていただろう。

ルドルフの死は変わらずとも、彼と同様の考えを持っていたフェルディナンド大公が皇帝になっていたら、世界は今とは異なるものになっていただろう。

歴史に『もし』はない。

だからこそ、歴史を紐解きそこから学び取るのが、それぞれの時代を生きる人間の責務だと思います。

『ENCHANTEMENT-華麗なる香水パルファン-』について

全体を通しての感想

幕開きは、男役も娘役も白~紫のグラデーションが美しい衣装。期待値が高まります☆

幕開きの場面が終わったら、、、えっ、ラインダンス!?

前回の星組『JAGUAR BEAT』と同様、幕が開いて10分後ぐらいにラインダンスが始まりました。『JAGUAR BEAT』は終始勢いのあるレヴューだったので、その勢いを止めないために最初にラインダンスをもってきたのかと思っていたのですが、、、もうラインダンスは前半にやることにしたんですかね(^。^;)

​ダークレッドの衣装に身を包んだ水美さんを中心とした場面では、聖乃あすかさんが女役で登場し水美さんのお相手を務めます。聖乃さんの表情が実に艶っぽい。男役の人には失礼にあたるかもしれないけど、かわいらしい顔立ちなので女役が似合います。

白のスーツとハットでキメた柚香さん。バレエっぽいテイストのダンスで見せるしなやかさも秀逸ですが、洒脱で軽やかなダンスがたまらない。自分もあんなふうに踊れるのではないかと思わせてくれるダンスです(そんなわけはないけど(ーー;))。

​シャネルの店舗を彷彿とさせる色合いのセットから姿を表す娘役たちを従えて踊る、シックで小粋な場面はイチオシです。

その後、マリリン・モンローを思わせる姿で星風さんが登場。スカートが風でめくれ上がるシーン(演出)で、それを見た柚香さんが何かを発した声が微妙にマイクに乗ったのですが、何を言ったのか気になるー!

​オリエンタルの場面では、鳥羽・伏見の戦いの時に新政府軍の兵士が被っていた兜(?)のような帽子を被った、恐ろしく足の長い若手男役の皆様のダルマ姿をとくと堪能(笑)途中、柚香さんの左右を通って舞台中央に出てきて足を振り上げます。なんなん、その長さ。

永久輝さんがセンターの水兵さんの場面では、男役がオールを持ったまま娘役をリフトします(娘役の背後にいる男役が、娘役を自分の体とオールで挟む。娘役は腕をまっすぐ伸ばしてオール上で踏ん張り、男役がオールを持って持ち上げる)。普通のリフトより大変だと思うのですが、どのカップルも呼吸がピッタリあったのか、軽々とリフトして回っていました。すごいわぁ。。

黒地にゴールドをあしらったジャケットを着た柚香さんのバックで踊るのは、羽立光来さん、航琉ひびきさん、峰果とわさんのベテラン3人。衣装は若手が着そうなテイストなのですが、アダルトな色気全開です。

『うたかたの恋』でフランツの執務室に掲げられていた双頭の鷲に負けないインパクトを誇るのは、超巨大なジャコウジカ・・・の、プレート? 立体的なセットではなく、平面の絵・・・だと思います。きっと、演者そっちのけであっけにとられますよ(゜o゜;

​星をモチーフにした場面では、星風さんの青を基調としたドレスがとてもゴージャス。冠(?)も似合う。おとぎ話に出てきそうな衣装を何の違和感もなく着こなせるなんて、さすが星風さんです。

星風さん以外は全員白の衣装で。柚香さん渾身のダンス。曲が終わって肩で荒い呼吸をしているのが遠目でもよく分かりました。

​『うたかたの恋』を観て、線の細い薄幸のルドルフを演じるから、顔色の悪いメイクで、か細い声で台詞を言っているのかしら。でも、明らかに前より痩せたよなぁ。。と気になっていました。レヴュー冒頭で、やっぱり調子が悪いのでは?と思ったのですが、前述した白のスーツとハット姿で軽やかに踊る場面を観て、気にしすぎか?と思い直しました。でも、あの息の上がり方はちょっと心配になっちゃったなぁ。まぁ、我々には計り知れないいろーんなストレスがあるのは間違いないでしょうね(T_T)

​デュエットダンス前の男役の群舞。黒のタキシードにハットという男役ならではのスタイルで、こんなに洒脱な振りの群舞が今まであったでしょうか。ジャズが使われることはあっても、タキシード姿で今回ほど抜け感のある振りは初めてな気がします。群舞で全員が同じ振りをしている時でも、柚香さんの身のこなしに自然と目が行きます。

​デュエットダンスのリフトでは、下ろし方に愛を感じました♡

今作『うたかたの恋』『ENCHANTEMENT-華麗なる香水-』を最後に、水美さんが専科に異動。現在星組の綺城ひか理さんが古巣の花組に戻ってきます。なんだかいろいろ勘ぐっちゃいますねぇ。。

芝居とレヴュー両方を観て思ったのは、踊れる人は揃っているけど、組子のバランスが悪くなったなということ。それって、組としての力が他の組に比べて弱いということになるんじゃなかろうか。。いくら『ダンスの花組』と言っても、芝居も歌もやるのが宝塚なんだから、もうちょっと5組のバランスを考えてもいいんじゃないかなぁ。。

2023年の宝塚始めの観劇レポ、少々辛口だったでしょうか(;´∀`)
着眼点が人と違うのは、ブログ開設以来変わっておりません。初めて読んでくださった方は、「思ったのと違う。なんだこいつの視点は…真面目か」と思われたかもしれませんね。真面目には違いないっす(苦笑)

さて、いつも観劇後は脱兎のごとく劇場を後にするのですが、この日は2022年の主題歌CDを買うべくキャトルレーヴへ(観劇前に買おうと立ち寄ったら、レジ待ちの列の長さにあえなく断念)。

規制退場の順番待ち、買い物、トイレと、珍しく終演後30分ぐらい劇場にいました。帰ろうとした頃、15:30公演の来場者へ向けてこんなアナウンスを聞きました。

「本日の公演は、一部座席のご本人様確認をさせていただきます」

このようなアナウンス、いつもあるのでしょうか…(←観劇するためだけに劇場に行って観劇後はすぐ帰るため、いつも滞在時間が極めて短い)。今回初めて耳にしてビックリしました。転売と思われるチケットや法外な値段で取引されたチケットの存在を劇団が把握しての措置だと思います。

こういうのを考えると、昔、劇場の前に並んで静かにお行儀よく適正価格でチケットを売っていた人々(あれもダフ屋と言えるのか!?)がいた時代の方が良かったんじゃないかと思えてきます。。

花組『うたかたの恋』、1/16までの中止が発表されました。これ以上中止期間が延びないことを心から祈っています。

バウの『夢現の先に』は追加公演の実施が決定。バウだから追加公演が可能なのでしょうが、大劇場公演も宝塚以外の公演も、そろそろ次の段階にいけないものかと思えてなりません。

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