~穴は埋まるか~宝塚花組公演『巡礼の年〜リスト・フェレンツ、魂の彷徨〜』『Fashionable Empire』(2022/7/1@宝塚大劇場)【観劇レポ/感想】

宝塚

本記事には公演のネタバレを含みます。

組問わず1公演1回は欠かさず大劇場で観劇するようになって、早・・・何年だろ(←をい)。
(明日海りおさんの退団公演はどれだけ申し込んでもチケットが取れず、ライブビューイングで観ました)

多分、10年は経ってないけど5年は経ってると思います。「この人いいな♪」と思う人はたくさんいますが、ご贔屓さんはいません。特別、この組が好き!というのもありません。

なので、別に観劇に行くからといって気合を入れたり構えたりすることはありません。心の中で若干 ルン(*’∪’*)ルン♪ としているぐらいです(笑)

でも、演目に関わらずいろいろと観ていると、「最高!」「万人受けはしないだろうけど、私はこういうテイスト好き」と思う作品もあれば、「あーぁ…」と消化不良に陥る作品もあります。演者の技量どうこうではなく、脚本と演出に対して「なぜこうなったんだ…」と思うことが…(やったことない人間が偉そうに言ってますが^^;)。

こんにちは、しろこです。

というわけで(!?)、今回の花組公演『巡礼の年〜リスト・フェレンツ、魂の彷徨〜』、だいぶ構えて行きました(苦笑)なんとなく嫌な予感がして、宝塚公式サイトの公演紹介も隅々まで読んで予習。

結論。

予習してたらいいってもんじゃないわ(ー_ー;)

それに加え、今回は近くの客のマナーが最悪だったので余計に消化不良。
後ろの列にうるさい年配者のグループがいて、芝居中もショー中も喋ってたのです。携帯電話の電源を切っておらず受信音も鳴るし。注意するにはちょっと遠い…とイライラしていたら、私の隣の席のおねーさんが業を煮やしたのか、ショー中に「静かにしてください」と身を乗り出してビシッと注意! 上手の花道に近い席に座っていたおねーさん、その節はありがとうございました! でも結局静かになったのは一瞬だけ。話の内容から、身内(孫?)が出演してるっぽかったです。「ほら、右から3番目」とか言ってたし。

初舞台生のお披露目公演でもそうだけど、嬉しいのは分かるけど幼稚園や小学校の学芸会を見に来てるんじゃない。まして家でテレビを見ているのでもない。こっちは1公演1回きり、決して安くはないチケットを必死に買ってエネルギー補給に来てるんです。年配者だからとか関係者だからとか、何の免罪符にもなりませんから。

すみませんね、ただでさえ暑いのに余計暑苦しくなって(;´∀`)
でも、上演中・上映中に喋るとかスマホをいじるとかゴソゴソするとかなんて論外! と思う普通のマナー感覚を備えている方(で、1人で行く方は特に)は、激しく同意してくださると信じています。

本記事には公演のネタバレを含みます。

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『巡礼の年〜リスト・フェレンツ、魂の彷徨〜』について

参考情報

あらすじ

19世紀初頭のヨーロッパで絶大な人気を博したピアニスト、フランツ・リスト。ハンガリー人であり、ハンガリー名をリスト・フェレンツという。ピアノの魔術師と称される彼は、超絶技巧とその美貌で女性たちを虜にし、パリのサロンを席巻していた。ある日、リストの演奏の批評が新聞に載る。友人であり好敵手でもあるフレデリック・ショパンは、「ここには君が向き合わなければいけないことが書かれている」と、その新聞をリストに渡す。寄稿者の名は男性のものだったが、ペンネームを用いたダグー伯爵夫人が書いた記事であった。「なぜ貴女には僕のことが分かるのか」同じような葛藤を胸に抱きながら生きていた2人の心は瞬く間に通い合い、本当の自分を偽らずに生きるためパリを捨てる。リスト・フェレンツとして生きることを望みながら、一方でフランツ・リストであることを欲するという矛盾。求めることと求められることの狭間で、彼はどう生きて行くのかーーー。

主な配役

フランツ・リスト:柚香光
ピアニスト・作曲家。別名『ピアノの魔術師』

マリー・ダグー伯爵夫人:星風まどか
作家・ジャーナリスト。フランツの運命の恋人。

フレデリック・ショパン:水美舞斗
ピアニスト・作曲家。フランツの友人でありライバル。フランツの生き方を案じる。

ジョルジュ・サンド:永久輝せあ
男装の女流作家。

エミール・ド・ジラルダン:聖乃あすか
新聞社の編集長。

ジギスムント・タールベルク:帆純まひろ
ピアニスト。

ラプリュナレド伯爵夫人:音くり寿
リストのパトロンであり愛人。

ダグー伯爵:飛龍つかさ
マリーの夫。

全体を通しての感想

宝塚の公式サイトの【公演解説】に、脚本家・演出家の長いインタビューが掲載されています。
今回は公演解説やら人物相関図やらを頭に叩き込んで観劇に臨んだけど、芝居を観ただけでは何が『巡礼の年』なのかは分からないと思います。事前情報を入れていてもイマイチ分かりませんでした。宙組『シャーロック・ホームズ』同様、本人的には読みに読んで調べに調べた末での脚本だったんだろうけど、またしても独りよがり感が拭えない。観る前からちょっとバイアスがかかっていたというのもあるかもしれませんが…。

雪組『ひかりふる路』は本当に良かったのよ! あれは本当に良かったんだってば…(トーンダウン)。

個々の演技力で引き込まれるシーンはあるんだけど、ひとつの作品として見たときに「これだ!」と思うものがないんだなぁ。胸ぐら掴んで否応なしに作品の世界に引きずり込むとか、手を引いてその世界に誘ってくれるとか、作品への埋入感が全くなかった。ミュージカルとしての見せ方(演出)はわりと上手いんだけど、脚本はどうも取って付けたような感じがする。

公演プログラムに、ピアニストの金子三勇士氏がリストについて語っているインタビュー記事が掲載されています。知らなかった事実が多々あり、その内容も非常に興味深いものでした。これを舞台化したらよかったのに…。

公演前から、柚香さんが芝居の中でピアノを演奏するシーンが話題になっていましたね。
プレッシャーのかかる大変な芝居だと思いますが、演じているのはピアノの魔術師と称される人物。『シャーロック・ホームズ』の観劇レポでも似たようなことを書いたけど、例えば『オペラ座の怪人』のクリスティーヌの歌がもうひとつだったら、ファントムは心を奪われたりはしない。その時点で役の説得力がなくなってしまうのです(決して柚香さんの演奏がダメだと言っているのではありません。柚香さん=リストと考えると、そもそもの演出に無理があるのです。ショパン役の水美さんの演奏は吹き替えだったし)。難しいところですね。。

今作のテーマをひと言で表すなら、『自分軸で生きるか、他人軸で生きるか』でしょう。『人と人(身分)とを隔てる壁を取り払う』もテーマとなっているようで、実際に革命のシーンもありますが、そこへの流れがずいぶんと恣意的に見えました。「革命を都合よく入れるな!」というか…。

マリーが革命に身を投じた理由が描かれていない(多少はあった?)ので、「おいおいマリー、なぜそうなる!? どっちかっていうと、貴女リストに依存してたように見えたけど…」とモヤモヤ。

どの演目でもどの組でも、民衆の群舞+歌は迫力満点。今回も見応え十分でしたが・・・なぜラップなんですか。しかも、それまでずっと紳士キャラだったエミールが、『マジ夢物語!』なんて歌ってるし。他の歌詞は何も覚えていないのに、これだけめちゃくちゃ覚えてるわ。「エミールの本性はこっちか? 実はずっと周囲を嘲笑してたの!?」と、だいぶ深読みしてしまいました(^o^;)

​さて、本記事の副題『穴は埋まるか』

はい、もちろん本公演で退団なさる花組の実力者、音くり寿さんと飛龍つかささんのことです。

音さんは傲慢なラプリュナレド伯爵夫人役。リストのパトロンであり愛人です。
飛龍さんはマリーの夫のダグー伯爵役。マリーを精神的に虐げる威圧的な人物。

2人とも、当時の時代背景を考えると決して悪者ではないと思います。むしろ普通なのかも。いや、さすがにそれは言い過ぎか(~_~;)

先ほど『役の説得力』の話をしましたが、この2人ほど説得力を持って役を体現できる人はそうそういません。宝塚に限らずいろいろなカンパニーの芝居を観てきましたが、役の説得力が群を抜いている。芝居自体も上手いけど、台詞(声)の説得力がピカイチなんです。

音さんはトーク番組を拝見するとすごくかわいらしい雰囲気なのに、アクの強い役を演じたら多分今の宝塚で右に出る者はいないと思います。私の中でそういう役の印象が強かったので、『アウグストゥス』で演じた一途にアントニウスを信じる儚げな女性の役は新鮮でした。

飛龍さんは本公演ではあまり目立つ役はなかったけど、別箱の『NICE WORK IF YOU CAN GET IT』や『銀ちゃんの恋』では主要な役を見事に演じていらっしゃいました。

​ダグー伯爵とラプリュナレド伯爵夫人が芝居の進行上で直接的に関わることはありません。でも、2人の目的は似ているというか、似た者同士というか。

リストはラプリュナレド伯爵夫人に背を向け、一旦はパリを離れるものの、タールベルクと対決すべくパリに戻ることを決意します。

パリを離れるとき、彼の隣にはダグー伯爵を捨てた(という表現が正しいのかは微妙ですが)マリーがいました。

リストとマリーがパリに戻ってくる。そのことを知ったダグー伯爵とラプリュナレド伯爵夫人が怒りと憎しみに駆られて歌う歌は、秀逸のひと言に尽きます。

余談ですが、ラプリュナレド伯爵夫人の怒りの矛先がマリーに向かなかったのはちょっと不思議。なんとなく、女の怒りは男よりも新しい女に向くような気がするのに(私にはそんなドロドロした経験はありませんよ、念のため:笑)。

音さんと飛龍さんでなければ、あのシーンは成立しなかったでしょう。

お二人とも、宝塚でなくても舞台役者として十分活躍できると思いますが、退団後はどうされるのかなぁ。。そして花組、2人の抜けた穴を埋められるかなぁ。。

そうそう、ダグー伯爵とラプリュナレド伯爵夫人、前半の流れからして後半のキーパーソンになるのかと思ってたのに、そんなことはなかった。最後の最後でリストとマリーに関わった人々が次々と出てきたけど、ダグー伯爵とラプリュナレド伯爵夫人は革命で殺されたのではないかと思いました。なんとなくですが…。

実際のリストに強い権力欲や名誉欲があったのか、あくまでもフィクションなのかは分かりません。ただ、爵位を得てギラギラに着飾ってジャラジャラと勲章をつけたリストは、ものすごく憐れで滑稽に見えました。無駄なものが削ぎ落とされた死にゆくショパンとの対比が見て取れるシーンだったので余計に。繊細で危うさのある芝居の柚香さんと、懐の深い包容力のある芝居の水美さんの対比がいい感じです。

終盤のリスト×ショパン×ジョルジュの場面は、解釈が分かれるところでしょう。幕が下りて「あのシーンどういう意味?」と言っている人たちもいました(公演プログラムの脚本家・演出家の挨拶で少し触れられています)。

​NHK大河ドラマ『鎌倉殿の13人』で頼朝が落馬したシーンをめぐって、脳卒中か、いや、義時が水に毒を盛ったんだ、とネット民が持論を繰り広げていましたが、どちらの意見も説得力がありました。個人的にはいろいろな解釈ができる演出は好きですね。『北斗の拳』みたいにあまりにも極端(というか、それこそ取って付けたような感じ)だとモヤモヤしか残らないけど。

今作では、元花組組長の高翔みず希さんが専科生として出演されています。役どころ(ヴィクトル・ユゴー)も芸術家たちを見守る存在。役と役との関係に実際の関係がリンクして、なんとも温かい気分になりました。きっとお互い嬉しいよねー(*^^*)

2回3回観ると、作品に対する印象は変わるかもしれません(東京公演では演出が変わることもあるし)。飛龍さんと音さんの退団の挨拶が見たいけど、作品自体もう一度観たいかと言われると、別に…という感じ。ライブ配信でも3,500円しますからね。東京千秋楽、どうするかなぁ。。

​セットや衣装はかなり凝ってます。特に星風さんの衣装は、シックな色合いのドレスでもものすごく手が込んでいるので、ぜひオペラグラスで細部まで見てください!

『Fashionable Empire』について

全体を通しての感想

始まってしばらくの間はこう思っていました。

「2本揃えてきたか…」

もちろん、雪組『シティーハンター』や星組『めぐり会いは再び』に対して思ったことではありません。

「2本ともダメなパターンか…」

の方です(-_-;)

幕開けからキラキラしたエネルギッシュな演出ではあったけど、衣装が…ヤンキーのような、近未来的なような…って、自分で言っておきながら比較対照になりませんね(苦笑)なんせ微妙。フードにわざわざ『Empire』って書いてますけど、あれ要りますか? あれはカッコいいんですか? それとも狙って外したんですか?

ぶっちゃけ、特に前半はほぼ印象に残っていません。

とはいえ、柚香さん×星風さん、水美さん×音さんの高速リフトと、帆純さんが女役で登場するシーンの水美さんのピルエットは見ものです。花組観劇レポの度に書いていることですが、柚香さんと水美さん、ダンスの持ち味が違う2人がトップと2番手にいるのは組の大きな強みですね。

​ロケットのときに真ん中で踊ってる6~7人、めちゃくちゃ背が高いような気がしたのですが実際はどうなのでしょうか。男役も娘役も、一昔前に比べるとみんな身長が高くなって顔も小さくなって手足も長くなって…選ばれし者たちではあれど、日本人の体型はここ数十年で確実に変化してます。

終盤のハット+紫色のスーツ(?)を着た男役が銀橋に居並ぶ様は、これぞ花組!という感じ。デュエットダンスは、濃い目のブラウンにビビッドなスカイブルーがアクセントの衣装が素敵でした。

拙ブログ読者の皆様、そろそろ思ってますよね?

「今回のショーのレポ、雑じゃね?」

と(苦笑)

いや、なんかね、雪組『Sensational!』と同様、決して退屈だったわけじゃないんだけど、全体的に見るとこれといって印象に残らないショーだったなって。。ただ今回は、冒頭で書いたマナーの悪い客のせいでステージに集中できなかったというのも大いにあります。ある種の不可抗力(# ゚Д゚)

そんな中でも印象に残ったのは、やはり退団者(特に音さんと飛龍さん)をフィーチャーした場面。トップコンビ以下スター勢揃いの場面なんだけど、みんなゴメン、私は飛龍さんしか見てなかった(笑)

『太陽のような笑顔』って、彼女の笑顔のことをいうんだろうなと思います。『巡礼の年』では怒ってるか苦悩してるか、とにかく眉間にシワを寄せた険しい表情しかしていなかったので、ショーでの笑顔が一段と輝いて見えました。

音さんもだけど、実力があるからといってトップになれる世界ではない。今後も舞台人として活躍するところを観たい思いはもちろんありますが、彼女たちの決断と次の人生にエールを送りたいと思います。大階段を下りてこられるときには目一杯の拍手を送ってきました!

宙組『カルト・ワイン』、月組『グレート・ギャッツビー』と、またしてもコロナで中止になる公演が出てきました(T^T)

公演期間の前半と後半で1枚ずつチケットを取る余裕はない(余裕があったとしても多分取れないか…)ので、チケットが取れてもその日の公演の幕が開くかは、本当に幕が開くまで分かりません。宝塚ではないけれど、開場したのに開演直前に中止の発表があった公演も実際にありますし(せめてもう少し早く分からなかったか? とは思うけど…)。

ヤキモキせずに観劇に行く日を迎えられるのは、一体いつになるんでしょうね。。

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