~花男・瀬戸さんへのはなむけ~宝塚花組公演『アウグストゥスー尊厳ある者ー』『Cool Beast!!』(2021/4/24@宝塚大劇場)【観劇レポ/感想】

宝塚レポ

本記事には公演のネタバレを含みます。

※本記事には広告が含まれています。

今回の花組公演『アウグストゥスー尊厳ある者ー』『Cool Beast!!』は、トップ娘役・華優希さんや、長年花組を支えてきた瀬戸かずやさんらの退団公演。

大階段で羽を背負う3人の中の2人です。

それが大劇場千秋楽まであと2週間というところで、再び公演中止に追い込まれてしまいました。

こんにちは、しろこです。

公演中止期間のチケットをお持ちだった方の筆舌に尽くしがたい気持ち、痛いほどわかります。。私は昨年の星組公演『眩耀(げんよう)の谷』が、まさに観に行こうとしていたその公演から中止になりましたから・・・。

再びの中止が予想されていた中での4/24の公演。客席全体がなんともいえない空気に包まれました。

様々な想いを込めた観劇レポ、いきます。。(T^T)

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『アウグストゥスー尊厳ある者ー』  について

参考情報

あらすじ

紀元前46年のローマ。政敵ポンペイウスを討ち、帰還したカエサルの凱旋式の夜。ユリウス家の邸では、カエサルと敵対していた貴族たちとの和解の宴が催される。そこに一人の女が飛び込んでくる。名はポンペイア。カエサルが斃したポンペイウスの娘である。ポンペイアは父の仇を討とうと、父の形見の剣でカエサルに斬りかかるが、ユリウス家の末裔であるカエサルの大甥・オクタヴィウスがそれを阻止する。オクタヴィウスは、ポンペイアを赦すことこそ真の和解の印だとカエサルに訴え彼女を救う。だがポンペイアは、オクタヴィウスに憎しみの言葉を浴びせその場を立ち去る。ローマに平和をもたらすのは共和制ではなく独裁であるというカエサルの言葉に、共和制こそが理想の姿であると考えていたオクタヴィウスの心は揺れる。そしてブルートゥスもまた、独裁へと進むカエサルに危機感を募らせ、カエサル暗殺計画を実行する。混乱の中執り行われたカエサルの葬儀。そこで読み上げられるカエサルの遺言。カエサルの腹心であったアントニウスは、自分こそが後継者だと信じて疑わない。しかし遺言に記されていた後継者は、未だ何者でもないオクタヴィウスであったーーー。

主な配役

ガイウス・オクタヴィウス:柚香光
ユリウス家の末裔。カエサルの大甥

ポンペイア:華優希
カエサルが斃した政敵ポンペイウスの娘

マルクス・アントニウス:瀬戸かずや
カエサルの腹心。ローマの軍人

クレオパトラ7世:凪七瑠海
エジプト女王。カエサルの愛人

ガイウス・ユリウス・カエサル:夏美よう
ローマ共和国の執政官。ローマ初の終身独裁官

ブルートゥス:永久輝せあ
ポンペイウス派の指導者。ユリウス家に並ぶ名門貴族の末裔

アグリッパ:水美舞斗
オクタヴィウスの盟友

よかったところ

華ちゃんのシリアスな役

今公演で退団する花組トップ娘役の華優希さん
今回は『はいからさんが通る』や『NICE WORK IF YOU CAN GET IT』で見せた元気ハツラツな女の子とは180度違う、とてもシリアスな役。カエサルに父親を殺され、憎しみだけを胸に生きる女性ポンペイアを演じています。

終盤で少し微笑むシーンがある以外は、終始、内に向かう思い詰めた表情。虚勢を張ってはいるものの、何かの拍子でポキっと折れてしまいそうな脆さを持つポンペイア。カエサルやオクタヴィウスに憎しみをぶつけ罵るときでも、気位の高さが見て取れる佇まいです。

オクタヴィウスとの出会いを通して段々と胸中に変化が生じ、最後に憑き物が取れたような表情を見せたときは、なぜかこちらまでホッとした気持ちになりました。それぐらい、これまでとは全く違うタイプの役を退団公演で見せて(魅せて)くれました。

2019年4月にトップ娘役となり、わずか2年での退団。どうも、強烈なアンチが相当いたようなので、それが重荷になったのかなぁ。。と思わなくもないです。

私が初めて華ちゃんを認識したのは、『ポーの一族』のメリーベルでした。元花組トップスター・明日海りおさんの当たり役と言われたエドガー・ポーツネルの妹役。怯えて泣き叫ぶシーンで鳥肌が立ったのを今でもよく覚えています。「メリーベル役は誰?!」と思って、幕間休憩中にプログラムを確認しました。

あの明日海さんの相手役として、想像を絶するプレッシャーがあったと思いますが、トップになってからの2年でずいぶん成長したと思います・・・って言うと、なんか上から目線に聞こえますが(汗)

私は華ちゃんが好きです。あの可憐さは立派な才能のひとつだと思います。今回のポンペイアを観て、もっともっと新たな一面を見せてほしかったと切に思いました(T_T)

瀬戸さんが魅せる男役の迫力

同じく今公演で退団する瀬戸かずやさん
『花男』と呼ばれる花組の男役の皆さん。その中でも、花男の中の花男といった雰囲気の方。クールな役からちょっと間の抜けた役、ダンディな役など、花組の舞台には欠かせない。この人が出てくると、舞台に安心感と安定感が出ます。前を向いていても後ろを向いていても、立ち姿がとにかく美しい。

そんな瀬戸さんの集大成とも言える今回のアントニウス。一兵卒からカエサルの腹心となった、野心むき出しの軍人です。

柔のオクタヴィウスに対し、完全な剛のアントニウスは、力が全てであると考えています。髪型や衣装の重厚感も手伝って、私でさえ、本当に女性が演じているの?と思うほどの迫力でした。

クレオパトラ役の凪七瑠海さんとのキスシーンは、上級生も上級生な2人が醸し出す濃密な空気(//∇//)テレッ。観ているこっちの息が止まりました。反則よ、あれは(笑)

かたや、2幕、戦いに破れ、気が触れて自らの手で処刑したブルートゥスらの幻影を見るシーンは、夢破れた屈強な男の弱さと狂気が全面に出ていて、観ていて憐れでした(自業自得なんだけどね^^;)。

『アウグストゥス』と言いながら、今作の主役はアントニウスでは?と思うぐらいの起用のされ方でした。大きいソロも2回あったし。

『アウグストゥス』とは、本来『尊厳者』を意味する『称号』です。この称号がオクタヴィウスに送られたため、のちにオクタヴィウスがアウグストゥスと呼ばれるようになりました。ちょっとややこしいですね(^_^;)

ローマの軍人であるアントニウスが、クレオパトラとともにエジプトに渡り、エジプト軍を率いてローマ軍と戦う。

このあたりの歴史背景に詳しい人もそうでない人も、展開の速さに「え、どういうこと…」と思ったかもしれません。

実は私もそう思った一人。でも、帰って公演プログラムの瀬戸さんのインタビューを読んで、なんだか腑に落ちた気がします。

アントニウスがクレオパトラに出会い、愛ゆえに周りが見えなくなってしまう…。女の為にしかも大国ローマと戦う等、傍から見れば理解されないことなのですが、アントニウスの中では己の意志を貫き、戦い、守るものを守り、愛を知り、夢も見た…と筋が通っているような印象を受けました。

『アウグストゥス-尊厳ある者-』公演プログラム 瀬戸かずやインタビューより

役を生きるとは、役を深く理解することから始まるのでしょうね^^
花組のアニキ、宝塚のアニキは最後の最後まで男前でした!

ダンサー『神々』

要所要所で登場する、不吉さ漂う黒づくめのダンサーたち。
ロミオとジュリエット』や『エリザベート』に登場する『死』なのかと思っていました。プログラムによると、『死』ではなく『神々』という役名。衣装やメイク、登場するシーン、振りを考えると、その姿はどう見たって『死』なんですが・・・。

ま、それはさておき、皆さんいい顔して踊ってるんですよ!全員が妖しさをまとい、登場人物たちをほくそ笑んでいたりあざ笑っていたり。

特に、アントニウスの1回目のソロで、アントニウスを全員で囲む場面が良かった。オペラグラスで瀬戸さんをロックオンしていたのに、周りで踊っている面々が視界に入った瞬間、思わずそちらにオペラグラスを振ってしまいました。ごめん、瀬戸さん(笑)

演じているのは、更紗那知さん、紅羽真希さん、凛乃しづかさん、一之瀬航季さん、芹尚英さん、侑輝大弥さん、美羽愛さん。(わからない。。申し訳ないっ(>_<)!!)

こういう役に選ばれるということは、ダンスが得意な方々なのでしょう。

私が現花組トップスター・柚香光さんを初めて認識したのも、『愛と革命の詩ーアンドレア・シェニエー』(2013年花組)で、セリフは一切なくダンスと動きと表情ですべてを表現する役(役名:Angel Black)でのことです。

動きだけで魅せられるのは大きな強み。今後も注目します♪

全体を通しての感想

コスチューム物ということもあって、男役の衣装も娘役の衣装も豪華でした。特に、華ちゃんと音くり寿さんのドレスは、デザインといい色使いといい、遠目に見てもものすごく素敵でした。エジプトに入ってからのアントニウスの衣装は、エジプトが舞台の『王家に捧ぐ歌』でもこんな金ピカの衣装はなかったよね…(@_@;)と思うほど(ちょっとやりすぎ感も否めないけど。。)。動くとカチャカチャいいそうな感じ(*_*;

このところ明るい(『NICE WORK~』では振り切れた)役が多かった永久輝せあさんは、 華ちゃん同様、 今回は一切笑顔のないシリアスな役。

クレオパトラ役の凪七瑠海さんは、異次元のスタイル。男役の方にこう言うのは失礼かもしれませんが、凪七さんは女役が似合う!それも王族や貴族のような高貴な女性の役が!高くて透明感のある声の持ち主はちょくちょくいますが、凪七さんのように低くて透明感のある声が出せる人はそうそういないと思います(高い声もよく出るし)。

水美舞斗さんは冒頭で立ち回りを披露。結構間を詰めた立ち回りで、わずかな時間でしたが見ごたえがありました。攻撃のかわし方に体幹の強さを感じました(笑)

また、クレオパトラの側近・アポロドロス。
登場シーンもセリフも少なかったけれど、すごく地に足のついた立ち居振る舞いで、出てくるたびに「誰?誰?!」と思って観ていました(すんません)。終演後プログラムで確認しました。和海しょうさんです!

ここ数ヶ月は、A日程とB日程にわけるという出演者の間引きを行い、オーケストラの生演奏もなし。今公演で久しぶりにフルメンバー、生オケが復活しました。

やっぱり宝塚はこうでなきゃ^^(と喜んだのもつかの間、またしても公演中止に( TДT))  

カエサルを暗殺したブルートゥスらをアントニウスが捕らえたシーンでは、『マリー・アントワネット』に通じる民衆の愚かさが描かれました。

民衆は当初、カエサルの後継者に指名されたオクタヴィウスを熱狂的に支持します。

しかし、オクタヴィウスを讃える声は、いつしかブルートゥスへの憎しみの声となります。

「ブルートゥスを殺せ!」

法の下でブルートゥスを裁こうとするオクタヴィウス。
そこへ、アントニウスがブルートゥスらを捕らえたという知らせが入ります。

広場でブルートゥスを民衆の前に引きずり出すアントニウス。

「ブルートゥスを殺せ!!」

アントニウスは集まった民衆の目前でブルートゥスらを処刑。民衆は手のひらを返したようにアントニウス支持にまわります。

自分の不満を一時的に解消してくれる者。
自分たちにわかりやすい言葉を使う声の大きな者。

民衆にとって、アントニウスは救世主に見えたことでしょう。

彼の真意も知らずにーーー。

アントニウスは、自分がカエサルの後継者に指名されなかったことで、カエサルを憎むようになります。ブルートゥスらを処刑したあと、民衆に対して「カエサルが成し得なかったパルティア遠征を果たす」と宣言しますが、これはカエサルのためでも民衆のためでもローマのためでもなく、ただクレオパトラとともに在りたいという自らの欲のためです。

ちなみに、その後アントニウスがエジプト王としてローマに宣戦布告したとき、民衆はまた手のひらを返したようにオクタヴィウス支持にまわります。

もちろん、当時の光景を見たことがある人は現代には存在しません。ですが、歴史に目を向けると、全くのフィクションとは思えません。

自分がその場にいたらどうするか。

私は、無知蒙昧に熱狂する民衆に背を向け、反対側に歩いていく人間でありたいと思います。

あ、また真面目に語ってしまった^^;

今作『アウグストゥス』、個人個人や場面場面で惹き込まれるシーンはありましたが、1つの演目として考えると、可もなく不可もなくでした。オリジナル作品にありがちな、「うーん、別に悪いわけじゃないんだけど、なんかなぁ。。」という感じ。

あと、とにかく展開が速い。人物の関係性とこの時代のことは知ってるよね?という前提で話が進みます。1時間35分におさめないといけないとはいえ、かなりはしょっています。途中、置いてきぼりになりかけました(_ _;)

いつも予備知識なしで観劇しますが、これは予備知識があったほうがいい作品です。

カエサル、クレオパトラ、アントニウスなど、どんな人物か詳しくは知らなくても、名前は聞いたことがあるという人がたくさん出てきます。大ざっぱにでも、彼らの関係性を知っておいたほうが(せめて、作品紹介や人物相関図は読んでおいたほうが)引っ掛かりなく話に入れると思います。

私が一番引っ掛かったのは、カエサルとブルートゥスの関係。

2人そろっての初登場は、和解の宴のシーン。

何があって、どう和解したのかがわからない。そのすぐあとで、なぜかブルートゥスはカエサルを暗殺しようとしてるし。

どうも腑に落ちなかったので、帰って調べました。ざっくりご紹介すると、こういう↓ことのようです。

ブルートゥスは、シェイクスピアの『ジュリアス・シーザー』に登場する有名なセリフ、『ブルータス(=ブルートゥス)、お前もか』の人です。(※ジュリアス・シーザーとはカエサルのことです)

カエサルはブルートゥスのことをとても信頼していたようです。ローマ内戦の際に敵方(ポンペイアの父、ポンペイウスのこと)についたブルートゥスを許し、自分の側近にするほどに。しかし、ブルートゥスはもともと共和制の支持者(ポンペイウスは共和制の軍人であり政治家だった)。独裁へと進むカエサルに危機感を募らせ、カエサルを暗殺します。『ブルータス、お前もか』は、自分を殺そうとする一団の中に信頼するブルータスの姿を認めたときに、カエサルが発した言葉とされています。

ちなみに、なぜカエサルがそれほどブルートゥスのことを寵愛していたか、ですが、ブルートゥスはカエサルの実子であったという説があります(※あくまでも『説』です。真実は神のみぞ知るといったところでしょう)。

引っ掛かりがあると、なかなか芝居に没入できない。

とはいえ、帰って自分でいろいろと調べてみることで「へー!」とか「ああ、それで!」とか思うので、それはそれで楽しいです(笑)←ドM。

ほんと、世の中は知らないことだらけ!

アナスタシア』のときは、ネットでかいつまむだけでは飽き足らず、図書館でロマノフ王朝に関する本まで借りて読みましたもん(←知に貪欲)。結構ハマるわよ(^m^)

「なんかよくわかんなかった」で終わるのではなく、余力があればぜひ自分で少しでも調べてみてください^^ 次に同じ時代が舞台の芝居や映画を見ると、理解力がまるで違いますから!

『Cool Beast!!』  について

全体を通しての感想

専科の歌姫(しろこ談)美穂圭子さん凪七瑠海さんの歌で開演するショー。なんて贅沢な幕開き!

全編を通して印象に残ったのは、柚香光さん水美舞斗さんのダンス。
ダンスがお得意な2人ですが、持ち味が全然違うのです!

バネの種類が違うとでも言ったらいいのかなぁ。どちらのバネもしなやかだけど、柚香さんのバネは細くてしなやか、水美さんのバネは太くてしなやか。

柚香さんのダンスは軽やかで、上方向のエネルギーを感じます。
一方、水美さんのダンスは力強く、下方向のエネルギーを感じます。

「コケティッシュ」「退廃的」「耽美的」という言葉が似合う柚香さんのダンス。
ショーの前半で魅せる素足でのダンスは、これぞ柚香光!羽が生えたような伸びやかさ。着地しても音がしない。表情も切なそうだったり物憂げだったり、体と心で踊っているのが伝わってきます。本人も気持ちよく踊っているんだと思います。

後半、瀬戸かずやさんとのデュエットダンスのときは妖艶な女役で登場。けっこう濃密な絡みです。衣装も、最初はわからなかったけど、実は大胆なスリットが入っていて太ももまで見えちゃってます。『アウグストゥス』で見せた凪七さんのお御足もすごかったけど、こちらも負けず劣らず(ΦωΦ)オメメクギヅケ。

水美さんのダンスは、体幹の強さを感じるダンスです。
ダンスが上手い人は大勢いても、彼女のようなダンスを踊る人はめったにいないのではないでしょうか。私が知らないだけかもしれませんが、現役の生徒ではちょっと思いつかない。元星組の柚希礼音さんや鶴美舞夕さんと同じタイプかな。稀有なダンサーです。大地を踏みしめるような振りの、アフリカンダンスが観てみたいなぁ。フラメンコも似合いそう♡

2年前に花組に組替えになった永久輝さん、スタイリッシュな衣装で踊る姿は生粋の花男のようでした。

聖乃あすかさんは、以前はおっかなびっくり銀橋を渡っていた(ように見えた)のが、今回は笑顔で堂々と渡っていました!

久々の全員集合でのラインダンス。
ん~・・・人数的な迫力はあったけど、ちょ~っと足上げの高さが合ってない部分もあったような。。ブランクかしら(;´∀`)

終盤、大階段にズラッと並んだ娘役の間を下りてきたのは・・・なんと瀬戸さんっ!!

トップ以外でこんな場面がつく方、未だかつていたでしょうか!

退団する2番手や3番手の方は、通常、銀橋でのソロが大いなる見せ場。瀬戸さんも今回、銀橋でのソロがありました。

それプラス、まさか大階段で男役1人で大勢の娘役を引き連れる演出なんてっ!!

にくいっ!演出家の愛を感じるっ!!

使われていた曲は、ポルノグラフィティの『ジョバイロ』。アップテンポながら哀愁漂う曲です。

拍手大喝采。

大階段を2列で対角に使うフォーメーションも、いつも以上に奥行きと広さを感じて良かったなぁ。

瀬戸さんたちがはけたあとは、トップコンビのデュエットダンスへ。紫を基調とした衣装で、しっとりとタンゴを踊ります。

銀橋でフィニッシュして2人で客席に挨拶。その後、娘役が男役に挨拶し、先に袖にはけるのがいつものパターン。

でもこの日、柚香さんが華ちゃんを銀橋の真ん中に来るよう促しました。

華ちゃん、戸惑いながらも促されるまま真ん中に来て、客席に深々とお辞儀。

割れんばかりの拍手。

顔を上げたとき、泣きそうになっていたように見えたのは私だけではないでしょう。

華ちゃんを見守る柚香さんの優しい眼差し。
会場全体を包み込む温かい空気。

数え切れないほど宝塚の舞台を観ていますが、初めての体験でした。

パレードでは、瀬戸さんがダークブルー、華ちゃんがダークパープル、柚香さんがダークレッドの大きな羽を背負っていました。3人とも同じ大きさの羽だったのが、なんだか嬉しかったな^^

全体的に手拍子がすごく大きかったし(時には歌声がかき消されるほど)、柚香さんの粋な計らいがあったり、演者も観客も皆がそれぞれに思う部分があってのことなんだろうなと思っていました。

というのも、4/25から兵庫県も含めた関西3府県で緊急事態宣言が再発出されることが決定。4/23の時点で、宝塚の公式サイトに「4/24は予定通り上演、4/25以降の公演については追ってお知らせします」と掲載されていたので、もしかしたらこの公演が最後になる可能性がある、という予感が私の中に少なからずあったからです。

終演後、スマホの電源を入れたら、宝塚公式LINEからメッセージが来ていました。

4/26~5/11までの全公演中止。

15:30(『アウグストゥス』の開演時間)に入っていたメッセージなので、多くの人は幕間休憩中に知ったのでしょう。

大劇場での千秋楽は、無観客でライブ配信されるとのこと。空っぽの客席を前に、最後に大階段を下りてくる退団者の方々の胸にはどんな想いが去来するのかと思うと、やるせない気持ちになります。

私のように、コロナの出現以前から基本的に1人で行動している人間にとっては、劇場だろうが飲食店だろうが大差ありません。だいたい、劇場なんて客が喋るところじゃない。いつも観劇するためだけに行って、観劇が終わったらまっすぐ帰るし。

昨年の公演中止明けに行ったとき(11月の宙組公演『アナスタシア』)は、開演前も休憩中も終演後もわりと静かでした。規制退場の順番もほとんどの人が守っていましたし、お連れさんと喋っている人でさえ、小声で喋っている人が多かった印象です。

でも今回は、すでに行きの電車の中から意識の低い人を大勢見かけました(複数で観劇に行く人は、電車の中にいても話の内容や雰囲気、持ち物からわかる)。

劇場内は言わずもがな。
客席内ですらそう。

いくら注意喚起のアナウンスをしたところで、こういう人々には絶対に届きません。宝塚駅周辺の飲食店も、通りすがりにちらっと見ただけとはいえ、楽しそうにおしゃべりしている人々で賑わっていました。こじんまりした店が多いから、もともと席と席との間隔も近いし。

もちろん、好きだからこそ意識を高く持って気をつけているお客さんも大勢いると思います。それでも、残念ながら世の中の縮図を見ているような気分でした。

メディアではやたら若い世代を悪者扱いしますが、年齢や性別など一切関係ありません。すべて一人一人の意識の問題です。

劇場や飲食店が悪いのでは決してありません(むしろこれらは被害者でしょう)。

GWに予定されていたコンサート(宝塚関係も宝塚以外も)も中止になりました。

これだけいろいろなものを中止にしておいて、オリンピックはやるんですか?「◯◯には来ないで」「✕✕には行かないで」って、どれだけ矛盾したこと言ってるかわかってるんですか?

横文字大好きなんですから、この1年で蓄積された「エビデンス」を精査しないのでしょうか。雑な言葉を大声で厚顔無恥に言うより、「イマジネーション」を鍛えたほうが良いのではないでしょうか。

おっと、そういえば花組公演『アウグストゥス』『Cool Beast!!』の観劇レポの途中でしたね。失礼しました。思うところがありすぎて、つい力が入っちゃった(;一_一)

東京公演は一体どうなるのでしょう。。せめて東京千秋楽だけでも、観客の拍手を体と心いっぱいに直に感じられることを願っています。

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