~愚かな男と愚かな女~宝塚星組公演『マノン』(2021/7/11@楽天TV)【観劇レポ/感想】

宝塚

本記事には公演のネタバレを含みます。

ある女を愛したがゆえに、破滅への道を突き進む男―――。

主演 愛月ひかる

愛ちゃんが演じる破滅への道を突き進む男なんて、いやいや、観るしかないでしょう!

こんにちは、しろこです。

配信制度(?)がなかったら絶対に観られなかっただろう本公演。
バウホール公演のチケットなんて、市井のいちファンには手が届きませんから。

そりゃ同じ演目でも、生で観るのと画面を通して観るのとではまったく違いますが、配信ありがとう\(^o^)/

ストーリー的には、先日配信で観た雪組『ヴェネチアの紋章』並み、いや、それ以上に共感できる部分はありませんでした(笑)

でも、愛ちゃんはじめ、出演者一同レベルが高かったです。

これまであまり認識できていなかった上級生がこんなにいたなんて。。(終演後にキャストを調べて知りました。すみませんでした(_ _;))星組さんはほら、トップでもトップ以外でも、キャラの立った芸達者な人が大勢いましたから(言い訳)。

そしてこんなに上手い下級生がいたなんて。。(新人公演で主役やってました。知りませんでした。すみませんでした(;一_一))

ストーリーはもひとつだったけど、芝居は良かった!

本記事には公演のネタバレを含みます。

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参考情報

あらすじ

19世紀のスペイン。セビリヤの名門貴族の青年ロドリゴは、ひょんなことから追われている娘マノンを匿う。情熱的で自由奔放なマノンにあっという間に心を奪われたロドリゴは、貴族としての約束された将来を捨て彼女と駆け落ちする。しかし、享楽的な生活を求めるマノンは、金のために平然と愛を売るような真似をする。そんな彼女に心を痛めつつも、ただただ盲目的にマノンを愛し続けるロドリゴ。もはや彼の耳に、家族や親友の言葉は届かない。ひとたび罪を犯せば、罪が罪を呼ぶ。一人の女のために、ロドリゴは破滅への道を突き進んでいく・・・。

主な配役

ロドリゴ:愛月ひかる
セビリヤの名門貴族の青年

マノン:有沙瞳
享楽的で自由奔放な娘

レスコー:天飛華音
マノンの兄。近衛兵

ミゲル:綺城ひか理
ロドリゴの親友。修道士

フェルナンド:輝咲玲央
マドリードの家の隣人。マノンを愛している

オリベイラ伯爵:大輝真琴
ロドリゴの父

オリベイラ夫人:紫月音寧
ロドリゴの母

アルフォンゾ公爵:朝水りょう
マノンとレスコーが騙そうとした貴族

豆知識

小説『マノン・レスコー』を元にした本作。マノンに対し、マノンの兄の名前がレスコーって・・・んっ?となった方はいらっしゃいませんか?姓と名をわけて兄の名前をレスコーにしたのか?と(私は思った^^;)。オペラの『マノン』も、マノンのお兄さんはレスコーという名前。つまり、マノンはファーストネームで呼ばれていて、レスコーはファミリーネームで呼ばれている、ということです。

感想

20年ぶりの再演だそう。ということは、初演から演出が変わっている可能性もありますね。

幕開きはスパニッシュ。暗闇の中、センターでスタンバイしている愛ちゃんにスポットライトが当たります。

足のラインがめちゃくちゃきれいなんですよね~。衣装がピタッとした細身のパンツだから余計にラインが際立っていました。細すぎず(痛々しい細さではなく、健康的な細さというのかな?)完全ストレートなお御足。うらやましい。。

前作、『ロミオとジュリエット』の『死』で愛ちゃんのダンスの魅力に遅ればせながら気づいた私。指先や視線などの細かい部分もさることながら、醸し出される色気はさすがです(色気のあるダンスといって思い浮かぶのは、元花組の春風弥里さんかな。誰か「ああ!」って言って。。色気のあるダンスがどんなのか言葉で説明できない(ノД`)シクシク)。

その後、力強い群舞となり、全員がはけて芝居の世界へ。

すぐにロドリゴが登場。

見るからに純真な好青年。

表情、声のトーン、台詞回しから、はつらつとした青年なのが見て取れます。苦労知らずで人が良さそうで、人を疑うことを知らないような。

この青年が破滅へと向かうのですよ。期待が高まるわぁ(ノω`*)ンフフ♪

続いて親友ミゲルが登場。

こちらも見るからに好青年です。ロドリゴと違うのは、こちらは最後の最後まで好青年(笑)芝居の中の『救い』のような清廉潔白な人物です。

予備知識なく観劇したので、ミゲルが2番手の役かと思っていたのですが、2番手の役はレスコーでした。短いソロ曲はあったものの、ミゲルの出番は少なめ。残念。。

ミゲルが場を離れ、一杯やりながらミゲルが戻ってくるのを待つロドリゴ。そこへ息を切らしてマノンがかけてくる。「追われているの」と。

わずかな時間マノンを匿っただけ。

それがロドリゴの破滅への序曲となりました。

ところで、マノンの家柄はどんな感じなのでしょう?

マノンが追われてるのは、本人曰く「父に修道院に入れられそう」だから。

でもね、マノンを探す男たちの風体が、完全にあっち系なんですよ。やさぐれた感満載の顔にキズのある男。観終わってから振り返ると、ともすれば追ってきた男たちのボスに愛を売ったものの、嫌気が差して逃げ出したんじゃないかと勘違いしそうなくらい^^;

追手を雇えるぐらいだから、ある程度お金持ちの家のお嬢さんなのかしら。お兄さんは近衛兵だし(遊びまくってるけど)。子供の頃から贅沢三昧で享楽的に暮らしていたから、お父さんがそんな娘にたまりかねて修道院に入れようとした?

本人が質素倹約を美徳とする貞淑な修道女にはなりたくなかったのは想像に難くないです(ーー;) ロドリゴとの生活でもお金がないことに耐えられず、平気で愛を売るしね。

原作(アベ・プレヴォー著『マノン・レスコー』)にはこのあたりの細かいことも書かれているのでしょうか。

それはさておき、速攻で2人は駆け落ち。
本当に速攻。ミゲルが戻ってくるのを待つことすらなく。

いやー、全編通して共感できる部分が1ミリもない(笑)

「フィクションだとわかっていても、こんな恋愛、憧れるなぁ♡」というのも皆無(笑)

ヴェネチアの紋章』のアルヴィーゼも、『アウグストゥス』のアントニウスも、女で破滅したんですよね(『ヴェネチアの紋章』で朝月希和さん演じるリヴィアはある程度まっとうな女性だったけど)。

アルヴィーゼやアントニウスとロドリゴが決定的に違うのは、前者は女はきっかけに過ぎず、元々野心家で大望があって、噛み合わないことが出てきても引くに引けなくなり(もとより引くつもりはなかったのだろうけど)破滅へと向かったこと。後者は女しか見えていなかったこと、かな。

もしかしたら、ロドリゴは苦悩しつつも存外幸せだったのかもしれない。周りの人たちはたまったもんじゃないけれど。

自分の心に正直に生きる。

それは周りに迷惑をかけないということが前提です。

自由主義。

自由を履き違えちゃいかん。制約があってこその自由です(道路の真ん中で自由に車を運転なんてできません)。

周りが全く見えなくなり理性を失うほど誰かに恋い焦がれる。

相思相愛なら問題ないけど、そうでなければ犯罪一直線です。それほどにまで誰かを愛せるなんて、ちょっと羨ましい気もしなくはないけど(←問題発言)。

盲目的な愛により理性と冷静さを失ったロドリゴという愚かな男(意見には個人差があります)を通し、見えてくるものは何でしょうか。

ロドリゴに自分を客観視できる冷静さがわずかでもあれば、

相手を見極める眼があれば、

異なる意見に耳を傾ける度量があれば、

周りの自分へ向けられた愛に気づく感受性があれば、

愛と執着の違いがわかる理性があれば、

己の弱さを認める強さがあれば、

破滅への坂道を転がり落ちることはなかっただろう。

全てでなくとも、どれかひとつでも残っていれば・・・。

と、共感できる部分がないからこそ冷静に分析できることもあるから、宝塚に限らず「観て損した」「読んで損した」と思ったことは一度もありません(あ、あくまでもストーリーの話ですよ。宝塚ではないけれど、主役が歌姫という設定の舞台で、主役の歌があまりに下手で「ちゃんと公正なオーディションしたのか?!金返せ!」と思って途中退席しかけたことは二度ほどあります(-“-#))。

駆け落ちした2人はマドリードで暮らすように。
その隣人のフェルナンドがマノンに言い寄る。
マノンはマノンで、金目当てでフェルナンドに思わせぶりな態度を取る。

このフェルナンドが、いやみったらしいわけではないんだけど、どことなくいけ好かない男なんです。マノンに「愛している」と言い寄りながら、金に物を言わせるような(笑)

観ている人がそう思うのは、たしかな演技力の為せる技^^

マノンともロドリゴとも深く絡むから(ロドリゴとは短時間だけど)、全編通して絡んでくるのかと思いきや、最終的にマノンがロドリゴを選び、フェルナンドからもらった指輪を彼に向かって投げ捨てて・・・それで終わり。

あんだけ絡んで捨て台詞まで吐いたんだから、あとで復讐しに・・・けーへんのかいっ!

演じている輝咲玲央さん、後半は違う役でロドリゴの隣で賭博をしていたような・・・(気のせい?)。

大劇場公演でも外箱公演でも、1人が複数の役を演ることは多々あれど、がっつり絡んだ人とは物理的な距離を取るとか、もうちょっと立ち位置を考えて演出してください(-“-)

ロドリゴとレスコーはまぁともかく、マノンもミゲルもフェルナンドも、主要な登場人物の掘り下げ方がイマイチ足りない。

その後、マノンとロドリゴはマドリードを離れ田舎で暮らすようになります。
そこへ現れるのが、マノンの兄レスコー。

ロドリゴが名門貴族のお坊ちゃんだと知り、金の無心をするのが彼の目的。

こちらもフェルナンドとは違った感じのいけ好かない男(笑)

舞台姿に華があるけど、これまで見た記憶ないなぁ、誰だろう・・・と思って休憩中にHPでキャストをチェック。2016年入団の天飛華音さん。早くから新人公演で主役の座を射止めている方でした。華があるし芝居も歌も上手いし、起用のされ方に納得(でも『ロミオとジュリエット』本公演では役がついていなかったことに驚き(@_@;))。

星組は上級生が充実してるし、組替えで華やかな人たちも入ってきたから、下級生が役を得るのは他の組より難しいかもしれませんね。この『マノン』を足がかりに、グッと出てきてほしいなぁ(^m^)(上級生が充実しているから、他の組とはカラーの違う歴代トップさんたちが伸び伸びできたのかも?)

レスコーは、ロドリゴの破滅への道を加速させたキーパーソンであることには間違いない。

恋人とその仲間、さらに自身の仲間の近衛兵たちを連れてマノンとロドリゴのところへ押しかけ、遊び呆けてロドリゴが持っていた金をほぼ食い尽くすし、賭博で金を稼ごうとするロドリゴを止めるどころかけしかけたり、マノンと結託してロドリゴはマノンの弟だと偽り、アルフォンゾ公爵から金を引き出そうとしたり。

でも、クライマックスに向けて、実は根っからの悪ではないのかもと思えてくるの。。暴走するロドリゴとの対比か、はたまたロドリゴがこうなってしまったのは自分の責任でもあるという思いがあるのか。

アルフォンゾ公爵をたぶらかそうとするまさにその場で、ロドリゴは「僕はマノンの弟じゃない、マノンは僕の恋人だ」と白状します。これは、罪の意識からというより、マノンが他の男と懇ろになることに耐えられなくてのことでしょう。

この計画を企てたのはマノンとレスコーなのに、アルフォンゾ公爵の怒りの矛先は、マノンやレスコーよりもロドリゴに強く向きます。

アルフォンゾ公爵役は朝水りょうさん。
ほんっと申し訳ないんですが、全く存じ上げませんでした。男役10年目なのに・・・。

『ロミオとジュリエット』の天寿光希さん演じるキャピュレット卿に負けず劣らずの伊達男風。出番は短かったけど、好色そうな公爵でした。マノンに向ける視線なんて特に(笑)

後日、公爵は賭場でロドリゴを貶め、ロドリゴとマノンは監獄送りとなる。

ロドリゴが駆け落ちしてからずっと彼の行方を追っていたミゲルのはからいで、ロドリゴは監獄を出され、修道院でゆるい監視下に置かれることになります。しかしロドリゴは、マノンがモロッコへ移送されると聞き、マノンを取り戻すべくレスコーに手紙を書いて協力を仰ぎ、修道院を脱走しようとする。

「ピストルを用意してくれ。弾は込めなくていい」とロドリゴが言っていたにも関わらず、レスコーから受け取ったピストルには弾が装填されていました(レスコーが弾を装填して渡した真意は不明)。

偶発的とはいえ(弾は入っていないと思っていたし)殺人を犯し、ミゲルを殴って気絶させた上で修道院を脱走し、ロドリゴは囚人を移送する列を待ち構えに行きます。

協力すると言っていたレスコーの仲間の近衛兵たちは、囚人監視の兵士が銃を持っていることを知り逃げ出したとのこと。

逃げ出したのではなく、そもそもレスコーが彼らの協力を取り付けることができなかったのではないでしょうか。なんだかそんな気がします。だって、囚人監視の兵士が銃を持っていないなんてありえないですもん。協力して失敗したら、自分たちが処罰されるし。

監視の隊長を金で買収し、マノンを囚人たちの集団から少し離れた場所に連れ出すことに成功したレスコー。

すかさずロドリゴを呼び、マノンと引き会わせます。

マノンと逃げるため、1人監視に残っていた兵士を銃殺したロドリゴ。2人を逃がすために残ったレスコーは、殺ったのは俺だと言わんばかりに持っていたピストルを空へ向けて撃ちます。

応戦することもなく、おとなしく蜂の巣となって倒れるレスコー。

このときの倒れ方が、まあ上手いのなんのって!

宝塚に限らず、倒れる芝居って、たいてい左右どちらかの体側を客席に向けて倒れるんです。前に倒れるときも後ろに倒れるときも。

それが、正面(客席)向いて前向きに倒れた!

目をカッと見開いたままで!

下手な人だと、倒れるときに体をかばってるのが丸わかり(思いっきり手が出とるがな!)なんですが、蜂の巣となって絶命して、で、倒れたんだ、というのがわかるスムースかつスマートな倒れ方!(←倒れ方マニアか)

私の中でこの作品一番の見所でした。いやー、あっぱれあっぱれヽ(^。^)ノ

その後、マノンは追手に背中を撃たれて倒れる。

死の淵で自らの享楽的な人生を顧み、悔恨の念にかられます。もしまたロドリゴと暮らせるなら慎ましく暮らすと誓い、ロドリゴの腕の中で息絶えます。

なんか、マグダラのマリアみたいでした(マグダラのマリアにはいろーんな説がありますが、ここでは『改心した罪深い女』としてのたとえです)。

マノンは間違いなくファム・ファタール(男の運命を変える女、男を破滅させる女)だけど、カルメンやサロメとはちょっと違う。『安珍清姫』の清姫や『高野聖』の女とも違う。うん、やっぱりマグダラのマリアかな^^

マノンを看取った直後、ロドリゴも蜂の巣となります。

マノンに寄り添うようにして果てるロドリゴ。

そのまま無音で幕が下り、終演。

この終わり方、2011年に観た月組『アルジェの男』以来の衝撃でした(『アルジェの男』では、1発の銃声が鳴り響き、銃を構えたアンリと倒れたジュリアンのみを舞台上に、無音で幕が下りる)。

すぐ側に、自分のことを我が事以上に心配してくれる人がいる。

ロドリゴにとっては母上とミゲル。
マノンにとってはロドリゴ。

だがロドリゴもマノンも、本当の意味でそのことに気がつかない。

やはり、愚かな男であり、愚かな女であった---。

それにしても、この話で一番つらいのはミゲルだよなぁ。

綺城ひか理さん、前作『ロミオとジュリエット』のベンヴォーリオといい今回のミゲルといい、親友のことを想って心を砕いて手を差し伸べるのに、報われないなぁ(泣)(苦悩しながらの歌が上手いんだけど( ̄ー ̄)ニヤリ)

見限ることができないのは、彼の優しさであり弱さでもあるのかもしれない。外的な何かがきっかけとなることはあっても、最終的に自分を変えられるのは自分でしかない。そうやって割り切ることが彼にはできないのだろう。

修道院の仲間をロドリゴに殺されたミゲルは、ロドリゴが死んだと知ってどうするだろうか。

神に仕える身。自分にもっと何かできることがあったんじゃないかと、自分を責めるかな。そして、ロドリゴの両親を気遣うだろう、きっと・・・。

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終演後の挨拶。

さっきまでの思いつめたロドリゴとは打って変って、素の愛ちゃん。完全に女性の愛ちゃん(笑)月組トップの月城かなとさんと同じく、狙ったところがない、飾ったところがない、普通の喋り方での挨拶でした。借りてきた言葉じゃなく、自分の言葉で喋ってる感じ。

今回コンビを組んだ愛ちゃんと有沙瞳さん、新月組トップコンビの月城さんと海乃美月さんみたいに、時期トップコンビの伏線だといいな~と思ったのは、きっと私だけではないでしょう(^-^)
(後日追記:と思っていたら、2021/12/26付での退団が発表されました。全くもって予想外。うそん。。( TДT))

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