~衣装の美しさ~宝塚歌劇星組公演​『ディミトリ~曙光に散る、紫の花~』『JAGUAR BEATージャガービートー』(2022/12/10@宝塚大劇場)【観劇レポ/感想】

宝塚レポ

本記事には公演のネタバレを含みます。

※本記事には広告が含まれています。

こんにちは、しろこです。

​2022年の宝塚納めは、星組公演『ディミトリ~曙光に散る、紫の花~』『JAGUAR BEATージャガービートー』

​公演スケジュールを見たときは特に何とも思いませんでしたが、ポスターで見た衣装の美しさとテイストに軽くテンションが上りました。が、演出家を知って、うーん……うーん……。どうも私は、この人の作品が肌に合わない。。批判しているのではなく、ただの好みの問題です。

​副題も、なんだか『shakespeare 〜空に満つるは、尽きせぬ言の葉〜』(2016年宙組)と同じにおいを感じる。。

​あ、ちなみに今作の副題にある『曙光』ですが、読みは『しょこう』、意味は『夜明けにさしてくる太陽の光』『物事の前途に見えはじめた明るいきざし』です。

​今回は千秋楽に近い日での観劇だったので、プログラムはあらかじめ梅田のキャトルレーヴで購入していました(千秋楽近くで観劇に行ったら、大劇場でプログラムが完売していたことがあったので)。演出家のインタビュー、案の定、文章量がいつもより多い。うーん……うーん……。

​というわけで、若干色眼鏡で見てしまった感はあるかもしれません。。初日の幕が上がる前から、ジョージアンダンスが話題になっていましたが、これも好みが分かれるところかなと思います(詳細は後ほど)。

​とはいえ、芝居は星組生の力と衣装の力とでなんとか​も​ったし、ショーは終始テンションが高く「宝塚見たー!」という気分になったので、2022年の宝塚納め、ここに無事完了しました(^o^)b

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​『ディミトリ~曙光に散る、紫の花~』について

あらすじ

​13世紀のジョージア王国・王都トビリシ。表向きは友好の証としてジョージアに送られたイスラム教国ルーム・セルジュークの第4王子は、この国ではディミトリと呼ばれている。幼い頃から王宮で暮らしてはいるが、所詮は人質の身。人目を嫌い一人になれる場所を探しているが、なぜか国王ギオルギの妹ルスダンにだけはすぐに見つけられてしまう。ルスダンはいずれ然るべき相手に嫁ぐ身。それを分かっているからこそ、想いを寄せ合っていてもお互い気持ちを打ち明けることはなかった。しかし、突如ジョージアに襲来したモンゴル軍との戦いでギオルギが致命傷を負う。「ディミトリを王配とし、ルスダンが王位を継ぐように」との遺言により2人は結婚、ルスダンが女王となるが、政治経験のないルスダンと異国人の王配ディミトリを快く思わない者も少なくなかった。中でも、ギオルギを深く慕っていた副宰相のアヴァク・ザカリアンは、先王の死にディミトリが関わったのではないかと訝る。政治の表舞台には立たず、あくまでも私的な相談相手としてルスダンを支えていくこととなるディミトリだが、愛する人と人生を歩んでいけることに喜びを感じていた。そんな中、ジョージアを狙う者がいた。モンゴルに侵略され国土を失った亡国ホラズムの帝王ジャラルッディーン。美貌で名高い女王ルスダンを娶り、戦わずしてジョージアの肥沃な大地を手に入れ、ホラズムの再興とモンゴルへの復讐を目論んでいた。ルスダンはジャラルッディーンの求婚を夫のある身に対する愚弄だとはねつけ、両国は戦闘状態に入るが、ホラズムの武力を前にジョージア軍は敗北。この敗北を機に、2人の運命の歯車が狂っていくーーー。

主な配役

​ディミトリ:礼真琴
ルスダンの王配。ルーム・セルジューク(国)の第4王子。人質としてジョージア王国に送られた。

ルスダン:舞空瞳
ジョージア王国の王女。兄ギオルギ亡き後、女王となる。

ジャラルッディーン:瀬央ゆりあ
亡国ホラズムの帝王。

アヴァク・ザカリアン:暁千星
ジョージア王国の副宰相。

物乞い:美稀千種

チンギス・ハン:輝咲玲央
モンゴル帝国の王。ジョージア王国に攻め込む。

ギオルギ:綺城ひか理
ジョージア王国の王。ルスダンの兄。

バテシバ:有沙瞳
ギオルギの妻。平民出身の元人妻。

アン・ナサウィー:天華えま
ジャラルッディーンの腹心。

ミヘイル:極美慎
白人奴隷。

​全体を通しての感想

​幕開き、物乞い役の組長・美稀千種さんの芝居で一気に作品全体の期待値が高まりました。いくらメイクや衣装の力があるといっても、女性が演じてるんですよね。作り物ではなく、本当にああいう人なんじゃないかと思わせる凄みがありました。

​その後しばらくは、うーん…状態。嫌な予感的中しちゃったかなぁ。。

​しかし、輝咲玲央さん演じるチンギス・ハンが登場すると、「おっ!」と再び期待値が高まりました。目をカッと見開いて、見るからに無慈悲そうな総大将。

​モンゴル軍とジョージア軍入り乱れての戦いは、出演者(兵士)の数が多く、大劇場の奥行きのある舞台を存分に生かした見応えのあるシーンでした。

​ギオルギが弓で射られる瞬間、私の席からはちょうど綺城さんの背中しか見えていませんでした。弓を射られ、正面を向いたギオルギの胸には弓が!「綺城さん、その弓いつ仕込んだ!?」と思うぐらいの早業。反対側の席からだともしかしたら仕掛けが見えたかもしれませんが、あの早業はマジックの域です(@_@;) 手のひらに収まるぐらいギュッと縮められるのかしら…などと、つい無粋なことを考えてしまいました(笑)

​ジョージアンダンスは、リズムや振りが独特で、たしかに初めて見るテイストのダンス。戦いのシーンで男役が踊る群舞としては迫力がありましたが、ディミトリとルスダンの婚礼のダンスは、難しいステップを踏んでるんだろうけど衣装でほとんど足もとが見えず、しかも上半身の動きがあまりないからイマイチ舞台映えしていなかったように思います。

​衣装はどれも素敵ですが、中でもルスダンが女王になってからの、金の飾りがついたターコイズブルーの衣装が秀麗(ポスターの写真で着ているやつ)。そのうち『宝塚歌劇の殿堂』で展示されないかなぁ。。

​芝居が中盤に差し掛かる頃、ふと「星組ってこんな布陣だったっけ?」と思いました。ディミトリとルスダンとアヴァクを中心に話が進んでいく…。暁さん大活躍。綺城さんと有沙さんはちょっと登場したけど…あれ? 

​と思っていたところで、オーケストラピットから銀橋にジャラルッディーン役の瀬央さんと、その腹心アン・ナサウィー役の天華さんが登場。

​ジャラルッディーンの人物像と見た目のインパクトも関係していると思いますが、瀬央さんが出てきてから舞台の空気が変わったように感じます。

​『眩耀(げんよう)の谷~舞い降りた新星~』の謎の男(=亡き王)よろしく、男くさい役がなんともよく似合う! 目鼻立ちがハッキリしているので、髭+ターバン+黒塗り姿もホントに似合う!

​白人奴隷役の極美慎さんの登場は、まだこの後です。

​プログラムを読んだところ、天華さんと極美さんは兵士役と民衆役で序盤に登場しているようです。​全然気がつきませんでした(゜o゜;

​それぞれの出番が少ないのは、役者が揃ってるからしょうがないのかしら。5組あるんだから、もう少し人材のバランスを考えてもいい気がするけど…。役者が揃っているところに暁さんが加入しましたからね。一体何の布石なのか。。

​わりとよくあるストーリー展開。終盤は、礼さん瀬央さんをはじめ、個々の演技力の勝利です。

​よくあるストーリー展開でも、引き込まれる舞台はある。でも、なぜか本作は(本作も?)取って付けた感がある。ペース配分とか、何のエピソードを入れるかとか、すごく作為的に感じてしまう。

​ビジュアルは文句無し(奴隷さえ美しいのはどうなんだと思うけど(-“-;))。演者に芝居心もある。でも作品として好きになれない。どうにも引っ掛かる。ショーが終始テンションの高いものだったので、劇場を後にするときはモヤモヤはなくなっていたのですが、この記事を書く中で、なぜ観劇直後に鬱屈とした気分になったのか考えてみました。

​それはきっと、主要な登場人物全員が

​・己の正義を信じて疑わなかったから
​・自分と自分に関わるごく一部の人間のことしか考えていなかったから

​だと思います。

​原作を1時間半にまとめなくてはいけないため、切ったり貼ったり付け足したり、いろいろな作業があるでしょう。もしかしたら原作でも、大局を見ることができる人物は登場しないのかもしれません。

​「ディミトリとルスダンの悲恋物語」とするなら、まぁしょうがないかと思わなくもないですが、感情移入できる人が一人もいませんでした。しいていえば、ギオルギと、国を治めるギオルギのために自ら身を引いた妻のバテシバかな?

​前回大劇場で観劇したのが、重厚かつ壮大な『蒼穹の昴』だっただけに、落差…というと失礼かもしれないけれど、作品としての薄っぺらさを感じてしまいました(←もっと失礼か(・・;))。

​誰かにとっての正義は、誰かにとっての悪でありうる。その視点が作品からは感じられませんでした(攻め込まれた村の人々が「昨日までは平和だったのに」と言うシーンはありましたが)。どの登場人物も一生懸命に生きているとは思うものの、独りよがりというか、視野狭窄というか、うーん、やっぱり冒頭で書いた、私には「肌に合わない」というやつでしょうか。でも、好みは人それぞれなので、私と全く真逆の感想を持つ人もいると思います。『蒼穹の昴』はよく分かんなかったけど、『ディミトリ』はすっごい良かったー!みたいに。

​物語なので、絶対悪のような存在(本作だとチンギス・ハン)が必要な場合もあるだろうけど、個人的には善と悪の単純な対比は好みません。中身が薄い。

​ジャラルッディーンは、瀬央さんが懐の深い芝居で魅せてくれたこともあって悪役には映らなかったけれど、復讐と野望のために異国を蹂躙しようとしている点ではチンギス・ハンとあまり変わらない。とはいえ、ディミトリやアンに対してはものすごく鷹揚。ある種の二面性を持つ人物として描いているのか? この作品の中で、誰の立場から見るか、見方によって見え方が変わる人物の最たるものだと思います。

​ルスダンが女王になったことに対して、アヴァクが「仕える君主は私が選ぶ」と思いを吐露しますが、思うところあってめちゃくちゃ共感しました。今作の中で唯一共感した(^O^;)

​やられたらやり返す。

​人間が存在する以上、憎しみの連鎖が止まることはない。

​始めることよりも、終わらせることの方が難しいーーー。

​『JAGUAR BEATージャガービートー』について

​全体を通しての感想

​礼さんの開演アナウンスが、テンション高めでイケイケな感じの喋り方。

​冒頭は躍動感のあるアニメーション。途中、踊る女性のシルエットがアニメーション化されていましたが、あれは舞空さんのダンスを加工したものでしょうか?

​ストーリー仕立てのショーですが、ストーリーは別に分からなくても十分楽しめます。なんてったってイケイケのショーだから(笑)

暁さんはショーでも大活躍。瀬央さん暁さん綺城さん天華さん極美さんの5人で並んで踊る場面がありますが、いや、やっぱさぁ、同じ組で2番手以下にこれだけ揃うって、もうちょっと他の組とのバランス考えようよ。。切磋琢磨にはなるかもしれないけど、その分一人あたりの場数が減るじゃないのよ。。(綺城さんはこの公演が終わったら、古巣の花組に再度組替えになるけど…)。

​『マノン』で好きになった朝水りょうさん、芝居ではずっと帽子を被っていたので分かりませんでしたが、シルバー寄りの金髪+ベリーベリーショートな髪型だったんですね!めちゃくちゃお似合い。別の人をオペラグラスで見ていたときに視界に入り、思わず朝水さんにスイッチングしました。

​『JAGUAR BEATージャガービートー』のテーマ曲、曲の途中で、おそらく2小節まるまる休符にしてるんだと思うんですが(2小節歌う→2小節休符→2小節歌う→2小節休符)、歌わない小節が唐突に出てくるので、最初に聞いたときは歌詞が飛んだのかと思いました。何回か同じモチーフが出てきたので、あ、こういうメロディーなんだと思いましたが、歌詞が飛んだように聞こえる曲の作り方はどうかと思います。

​終盤、舞台奥から大階段が音もなく迫り出してきます。縦に畳まれた状態から、徐々に完成形になる(この表現は合っているのか…?)までの一部始終をぜひ見届けてください。舞台上で皆さんが踊っている後ろでの出来事なので、迫り出してくる大階段に気付かない方もいらっしゃると思いますが、ちょくちょく視点を後方に向けてみて! 大階段もれっきとした出演者です。あの舞台機構は圧巻。

デュエットダンスは、羽毛を表現したような白い衣装で。振りも軽やかで、バレエ『白鳥の湖』を彷彿とさせます。『ディミトリ~曙光に散る、紫の花~』は、ディミトリとルスダンにとっては悲劇だったので、その分デュエットダンスは幸せいっぱいという感じでした。見た目の雰囲気が似ているからなのか、礼さん舞空さんが並ぶとものすごくしっくりくる。

​今回のショーでのイチオシポイントは、終盤の男役の群舞。全員黒の衣装+腕まくり。男役の腕まくりって、いいですよね…♡ 手でジャガーの爪を表現する振りがなんともカッコいい(☆▽☆)!!

​今回は序盤にロケットダンスがあったので、中詰め以降、ラストまで時間の経過の感覚が分かりませんでした(^_^;) 2022年の最後の大劇場公演、ほんとに畳み掛けましたねー。幕が下りるまでテンション最高潮が持続します!

​宝塚駅に着いたときから、今年はここに来るの最後か…と思い、劇場に入る前は心の中で「今年最後に来させていただきました」、出るときは「今年も明日への活力をいただきありがとうございました。来年もよろしくお願いします」と、ばっちり挨拶してきました(*^^*) チケットを取っていたのに中止になって観られなかった公演もあったけど、今年もパワーをありがとうございました!

​生の舞台を観るのは、お金も時間も体力も気力もいる。劇場に行くと、マナーの悪い客や嫌な客(特定の人の悪口を言うとか、会話の中でネタバレを言うとか)もいる。トイレ問題もある(トイレに行けないと思うとトイレに行きたくなる性質)。

​それでも生の舞台を観たいと思う。芝居でもダンスでも音楽でも、生の舞台から感じる言葉にできない何かを、私は普段の生活の中で感じたことはありません。

​2022年の宝塚納め、これにて完了です(生観劇は。雪組『蒼穹の昴』大千秋楽の配信は見ます^^)。
2023年の宝塚初めは、花組『うたかたの恋』の予定です♪

(ブログ納めはまだだけど)皆さん、しろこのちょっと人とは視点の違う宝塚観劇レポを今年もお読みくださりありがとうございました! よろしければ来年も遊びにいらしてください☆

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