~本当の怪物は、誰だ~ミュージカル『フランケンシュタイン』(2025/5/19@神戸国際会館)【観劇レポ/感想】

舞台レポ

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本記事には芝居のネタバレを含みます。

こんにちは、しろこです。

望海風斗さんがパーソナリティーを務めるラジオ番組、『望海風斗のサウンドイマジン』で偶然耳にした『フランケンシュタイン』の曲。

韓国語だったから歌詞の意味は全く分からなかったけれど、胸を抉るような旋律にものすごく惹き込まれました。
(『I am The Monster(俺は怪物)』というタイトルで、日本語で聴いたら、本当に胸を抉るような歌詞でした。チョン・ドンソクさんの歌声も圧巻!)

そういえば日本でも、日本人キャストで数年前に上演されてたよなぁ。。。再演されることがあるなら絶対観に行く!

…と思っていたら、再演決定! なんて素敵なタイミング☆

せっかく観るなら前作から続投している中川晃教さん✕加藤和樹さんの回を観たかったものの、チケットが取れず(T_T)

私が知らなかっただけで、そんなに人気作だったのか…と思って劇場に行ったらガッラガラ。1階席も中2階席も、見える範囲ですらガッラガラ。2階席、3階席はどんな状況だったのか…。(チケットが安いから意外とA席B席の方が埋まってた…かも?)

キャストによってこんなにも客の入りが違うのかと、切ないやら気の毒やら、なんて残酷な世界なのかと思ってしまいました。。。

でも、最後は自発的なスタンディングオベーションが起こりましたよ!

先月観劇に行った『イリュージョニスト』同様、チケット販売のシステム(?)、もうちょっとどうにかならないもんでしょうかね。。。

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あらすじ

君と一緒に夢を見られるなら、死んでも後悔しない
美しき友情はやがて、哀しき復讐へと変わる――

19世紀ヨーロッパ。科学者ビクター・フランケンシュタインが戦場でアンリ・デュプレの命を救ったことで、二人は固い友情で結ばれた。“生命創造”に挑むビクターに感銘を受けたアンリは研究を手伝うが、殺人事件に巻き込まれたビクターを救うため、無実の罪で命を落としてしまう。ビクターはアンリを生き返らせようと、アンリの亡き骸に自らの研究の成果を注ぎ込む。しかし誕生したのは、アンリの記憶を失った“怪物”だった。そして“怪物”は自らのおぞましい姿を恨み、ビクターに復讐を誓うのだった…。

『フランケンシュタイン』オフィシャルサイトより

出演者

ビクター・フランケンシュタイン/ジャック:小林亮太
生命創造を研究する科学者/人間同士を格闘させるギャンブル闘技場を営む悪党​

アンリ・デュプレ/怪物:加藤和樹
ビクターに命を救われた軍人/ビクターによって生み出された創造物

ジュリア/カトリーヌ:花乃まりあ
ビクターの婚約者/闘技場の下女

ルンゲ/イゴール:鈴木壮麻
ビクターの執事/闘技場のピエロ

ステファン/フェルナンド:松村雄基
ジュリアの父/闘技場に出入りする守銭奴

エレン/エヴァ:朝夏まなと
ビクターの姉/闘技場の女主人

リトル・ビクター:下永龍正

リトル・ジュリア:杉山穂乃果

※5/19(月)12:30の回

上演時間

【1幕】12:30~13:50

(休憩20分)

【2幕】14:10~15:40(カーテンコール込み)

感想

客席の照明が落ちて音楽が始まった瞬間、「え、ワイルドホーン!?」と思った私。

それぐらい、曲に心を鷲掴みにされました。

「ワイルドホーンって…?」と思われた方はぜひこちら↓をお読みいただければ幸いです(;´∀`)

作曲者はブランドン・リーというお方。

聞いたことないなぁと思って調べてみたら、出るわ出るわ。

・・・

撮影現場の事故で亡くなった、ブルース・リーの息子さん。

もちろん同姓同名の別人です。

作曲者のブランドン・リー氏については、韓国で大ヒットしたミュージカル『フランケンシュタイン』『ベン・ハー』の曲を手掛けたということしか分かりませんでした。

きっとこれから来る。

ウィーンミュージカルといえばミヒャエル・クンツェ&クリストファー・リーヴァイと言われるように(少なくとも私はそう思う)、韓国ミュージカルといえばブランドン・リーと言われるようになる日が絶対に来るっ…!(しろこのアンテナが反応)

それぞれの役に、歌い上げる曲や尺の長い曲、ストーリー展開の鍵となる曲があり、歌い終わるたびに皆さん肩で息をしていました。
今回のキャストの中で断トツで歌が上手い(かつ、発声に無理がない)のは鈴木壮麻さんだと思うのですが、鈴木さんがあまり歌わなかった(歌い上げる曲がなかった)のがとても残念です。

ただ、もちろん鈴木さんやWキャストの中川晃教さんのように、声が出る・よく通るに越したことはありませんが、皆さん役の感情がよく声に乗っていたと思います。子役も上手かった!

作品としては、人間の欲望や狂気を扱っているという点で、『ジキルとハイド』に似たテイストです。

現実とダークファンタジーが合わさったような感じ。

人物描写が丁寧で、狂気的と思えるまでになる過程もきちんと描いているので、その人物を全否定できない気になります。
(アンリが身代わりになって死ぬことを決意するほどビクターに心酔した過程はもう少し描いてほしかったけど)

『フランケンシュタイン』の方が、人間の黒い部分により目を向けており、目を背けたくなるシーンも多いです。

演出もさることながら、演技もいい。

特に2幕の花乃まりあさん(カトリーヌの時)。

宝塚の娘役時代からは想像もつかない虐げられた女性の役で、新境地開拓ではないでしょうか。

ジャックたちに虐待され、男たちに連れて行かれ、エヴァにナイフを突きつけられ、(描かれてはいないけれどおそらく)残忍に殺されて馬の餌にされる(と思われる)までの演技は、今思い出しても気分が悪くなるほどです(褒め言葉です)。

加藤和樹さんにとっても、怪物は当たり役なんじゃないかなぁ。

今まで一番見ているのが加藤さんかもしれないと思うぐらい、いろんな作品(それも私好みの)に出演されています。
でも、今までは正直、可もなく不可もなくだったんです(すみません。。。)。
背が高くてがっしりしていて精悍な顔つきなので舞台映えする人だとは思っていたけど、なんていうかホントに、、、可もなく不可もなくだったんです(いやほんとすみません。。。)

怪物として蘇る時の体の動きや、怪物が自由に言葉を操れるようになるまでの歪んた表情など、ゾクッとしました。足の甲を床につけて立ち上がるのもすごいと思う…。

主演の小林亮太さんはこれまで存じませんでしたが(三度すみません。。。)、アンリの首を手にしている時に、狂気的という一言では表せない表情をされます。

また、ビクターが歌う最後の曲の最後の歌詞。

『♪フランケンシュタイン』

ビクターが「俺こそが怪物だ」と言っているような、秀逸な表情と叫びでした。

アンリの記憶はないと言い、ビクターのことを「創造主」と呼んでいた怪物が、最期に発した「ビクター」という言葉。

アンリの記憶が蘇ったのか、(それこそジキルとハイドのように)アンリの心が怪物に勝ったのかは分かりません。

怪物の安堵に満ちた死に顔。

『♪君と一緒に夢を見られるなら、死んでも後悔しない』

死んだのは誰だったのでしょうか。

クローンやAIが登場してから、倫理とは何かがこれまで以上に問われています。

私はキリスト教徒ではないけれど、死者を生き返らせるのは自然の摂理に反すると思います。
死があるから生を感じられるのであって、すべてのものは表裏一体のはずだから。

「人間じゃないなら怖くない」

「俺からすると、怪物はお前たちだ」

そう、本当に怖いのは人間。

怪物はどこにでもいる。

本当の怪物は、誰だ。

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