日英翻訳のコツと翻訳会社に依頼するときのポイント

一人総務の秘書的仕事術

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自分で書いた原稿を自分で翻訳しないといけなくなった方、こんなふうに思ったことはありませんか。

「自分で書いた日本語なのに、訳せない・・・(_ _;)」

翻訳会社に日英翻訳を依頼したことがある方、こんなふうに思ったことはありませんか。

「納品された訳文を見ると、こっちが言いたいことが正確に訳されてないんだよなぁ・・・(-“-;)」

どちらも自分に『少なからず英語の素養がある』というのが前提ではありますが、原稿と訳文とを見比べて「あれ?」と思った経験がある方も少なくないと思います。

自分で翻訳する方、翻訳会社に依頼する方の両方に共通する『日英翻訳のコツ』。

ポイントは、日本語原稿の作成の仕方にあります!

そのポイントとはこちら↓

1. 曖昧な日本語を避ける。
2. 1文を短くする。
3. わかりやすい日本語で書く。
4. 主語を明示し、動詞との整合性を取る。

この4つを抑えていれば、少なくとも『原文に惑わされる』ことはなくなります(実際、自分で書いた日本語に自分が惑わされている人が散見されます)。

こんにちは、しろこです。
本業(一人総務兼秘書)とは別に、フリーで翻訳もしています。

と言うと、世にはびこる『自称翻訳者』のように聞こえますが、翻訳学校で基礎からちゃんと勉強しました。専攻は医薬。でも、実務となると医薬系は量が多い上に短納期なので、現在は主にマーケティングの翻訳をしています。時間の制約がある中、翻訳会社から継続的に仕事をもらえています。他の翻訳者の訳文チェックもしています。念のため(^o^;)

『書いている人』や『研究室の秘書とは』で一瞬『翻訳』という単語が出ただけで、翻訳について記事にするのはこれが初めてです^^;

冒頭で書いた2パターン。どちらも経験者です。

と言っても、当事者ではありません。

職場に「自分が書いた日本語なのに訳せない」という人が何人もいます。一応彼らの名誉のために言っておくと、TOEICは高得点だったりします。訳せたつもりになっている人でも、『翻訳』ではなく『ただの単語の置き換え』になっている場合が多いです(文法は合っているけど単語の選び方がおかしい、とか、情報の出し方が英語の流れになっていない、とか)。

時間がないからと翻訳会社に日英翻訳を依頼した人が、納品された訳文を見てご立腹。原稿と訳文を見せてもらったところ、とてもプロの翻訳者が訳したとは思えない訳だった、ということが時々あります。

が、ぶっちゃけて言うと、「この日本語じゃそうなるのも無理はない」と思うことがほとんどです。

プロの翻訳者であれば、少々変な日本語の翻訳依頼が来たとしても、その分野の背景を徹底的に調査して訳します(『少々』で済まない場合もあるんだけど。。)。

どうしてもわからないときは、クライアントに確認できる場合(納期の余裕がある場合)は翻訳途中で確認します。確認できない場合は、「この箇所は2通りの意味に取れます。この意味の場合は~、この意味の場合は…という訳になります。クライアントにご確認をお願いいたします」と、納品時に申し送りします。

特に英日翻訳で、わからないからといって思い込みで訳し、申し送りもせず納品する不誠実な自称翻訳者には即刻退場していただきたいです(人の翻訳チェックをしていると、どこにそんなこと書いてるんだ!(-“-#)と思うことがあります。あと、機械翻訳にかけたであろう訳で納品する、とか。見る人が見れば一発でおかしいとわかるんですけどねぇ(-_-)原文を理解した上で意訳したのか、原文が理解できないから雰囲気で丸めたのかも、見る人が見ればわかります)。

先ほど、『世にはびこる自称翻訳者』と言いました。

翻訳者はピンきりです。そして翻訳会社もピンきりです(翻訳に限らず、何事にも言えることですね(^_^;))。

翻訳を依頼することは、ある種の賭けです。良い訳文が返ってきたからといって、また同じ翻訳会社に依頼すると、今度はとんでもない訳文が返ってくることもあります。

良い訳文が返ってきたときは、「以前の案件を担当した翻訳者にお願いしたい」と言うと、その人のスケジュールが空いていればリクエストに応じてくれると思います(^o^)b

そのような状況になったとき、「こんな翻訳会社には二度と頼むか!」となるお気持ちはわかります。でもちょっと待ってください。なぜそんなことになってしまったのか、その原因がわからなければ、他の翻訳会社に依頼しても似たような結果になってしまうかもしれません。

自分で翻訳する場合でも、翻訳会社に依頼する場合でも、大切なのは『ポイントを抑えた原稿』を作成すること。

そのポイントとは、

1. 曖昧な日本語を避ける。
2. 1文を短くする。
3. わかりやすい日本語で書く。
4. 主語を明示し、動詞との整合性を取る。

この4つ。

日本語と英語では、文章の構造や発想が全く違います。

英語では「誰(何)が」「どうした」を最初に明示します。かたや日本語では、そもそも「誰が」は省略されることが多くあります。また、文章を最後まで読まなければ、「どうした」かはわかりません。

このような言語の基本的な構造の違いを理解して日本語の文章を作成すれば、満足のいく日英翻訳を得られる可能性が高まります。

既存の原稿を日英翻訳する(自分で翻訳する、翻訳会社に依頼するは問わず)ときは、少し手間になってしまいますが、上記のポイントを踏まえて多少手直しすることをおすすめします。

日英翻訳する前提で原稿を作成するときは、ぜひ上記のポイントを意識し、英語にしやすい日本語で書いてみてください。

それでは、4つのポイントをそれぞれ見ていきましょう。

1. 曖昧な日本語を避ける。

「時間」や「数」は必ず明確にしましょう。特に機械の不具合に関する報告書や医薬系の翻訳(日英翻訳・英日翻訳問わず)では、正確性が何よりも重視されます。

悪い例:装置Aは、スイッチを入れてしばらくすると止まるようになった。
良い例:装置Aは、スイッチを入れて2~3分後に止まるようになった。

悪い例:薬剤Xを服用した患者から、胃痛がするとの申し出が時々ある。
良い例:薬剤Xを服用した患者から、胃痛がするとの申し出が5人に1人の割合である。

実生活でも、「時間」や「数」に対する感覚は人によって違うと思います。

「あと少しで完成します」の「あと少し」は5分でしょうか、1時間でしょうか。
「もう少し多めに資料を用意しておいた方がいい」の「もう少し」は5部でしょうか、10部でしょうか。

日英・英日翻訳問わず(言語の組み合わせも問いません)、翻訳する際は書き手と翻訳者の認識が一致していなければ、書き手が意図することを正確に訳すことはできません。日本語は英語に比べて、抽象的な表現が多い言語です。だからこそ、日英翻訳を依頼する場合は、特に「時間」や「数」を明確にしておくことが大切です。

余談ですが、松尾芭蕉の俳句『古池や蛙飛びこむ水の音』。

日本人であれば、おそらく大多数の人が、池に飛び込んだカエルは1匹だと思うのではないでしょうか。静寂の中、1匹のカエルがポチャンと池に飛び込むイメージが浮かぶと思います。ところが、以前参加した某セミナーで日本人の講演者が外国人の聴衆に「カエルは何匹だと思いますか」と聞いたところ、大多数の人が「複数」と答えていました。複数のカエルがボチャボチャボチャとにぎやかに池に飛び込むイメージが浮かぶのだそうです。

これは文芸作品、しかも俳句という特殊な例かもしれません。ですが、特に実務文書の翻訳では、「言わなくてもわかるだろう」や「状況から察してほしい」は通用しないと思ってください。

翻訳者はその分野の専門家ではありません。特に新薬の開発や特許関連などは、どれだけ調べても前例にたどり着かないことがあるため、曖昧な日本語表現は致命的な誤訳の元になり得ます。

2. 1文を短くする。

日本語は読点(、)や接続詞を使うことで、どこまでも長い文章が書けてしまいます。できるだけ1文につき言いたいことは1つにし、1文が短くなるよう心がけましょう。これは日英翻訳を前提とする・しないに限ったことではありません。文章(特にビジネス文書や報告書など)を書く際には、ぜひ普段から意識しておきましょう。

悪い例:薬剤AはXXの治療薬で、世界中で広く使用されているが、100人に1人の確率で重篤な副作用が報告されているため、投薬の判断は慎重に行わなければならず、経過観察には細心の注意を払う必要がある。

良い例:薬剤AはXXの治療薬で、世界中で広く使用されている。しかし、100人に1人の確率で重篤な副作用が報告されている。そのため、投薬の判断は慎重に行わなければならない。また、経過観察には細心の注意を払う必要がある。

英語は冗長な表現を嫌うので、悪い例の文章を日英翻訳に出しても、1文で訳されることはないと思います。しかし、短く切っても意味が変わらないのであれば、短い1文の方が正確に理解できます。

日英翻訳する上で、1文を短くした方が良い理由がもう1つあります。

それは、一見すると逆説を表すような「~(だ/である)が」の存在です。

「~(だ/である)が」は逆説を表すとは限りません。

簡単な例を挙げてみましょう。

例:C氏は現役時代、有名なホームランバッターだったが、引退後は野球解説者として活躍している。

この「が」には、はたしてどんな意味があるでしょうか。

そうです、特に意味はありません。このような「が」は、書き手の一種の癖のようなものです。

この文章を日英翻訳する場合、1文で表そうと思うと、「が」は「and」です。間違っても「but」ではありません。

この文章は、次のように、接続詞は使わず主語を立て直して書き換えることができます。

書き換え後: C氏は現役時代、有名なホームランバッターだった。(C氏は)引退後は野球解説者として活躍している。

専門性の高い文章で「~(だ/である)が」使われていると、その内容に関する知識を翻訳者が持っていない場合、その「が」は「逆説」なのか「並列(and)」なのか「意味を持たない」のか、日本人の日英翻訳者でも判断に迷うことがあります。

また、1文が長くなると、書いているうちにだんだんと論点がずれてくるリスクが高まります。書き方に癖がないか、最初から最後まで通して第三者の目線で読んでみることをおすすめします。これも、日英翻訳を前提とする・しないに限ったことではありません。

3. わかりやすい日本語で書く。

政府や役所が公表する文章を一読して、内容がすぐ理解できる人はどれだけいるでしょうか。

それらの文章がすんなり理解できないのは、「回りくどく丁寧そうに書いているから」と「読み手によって複数通りの解釈ができてしまうから」です。「長々と読んだけど、で、結局何が言いたいんだ?」となるのはこのためです(きっとそれが彼らの狙いなんだろうけどね(-“-#))。

日英翻訳することを前提に書く文章では、不要な言葉(それがなくても文章の意味が変わらない言葉)は省き、回りくどい表現(例:~の場合はこの限りではない、~があることをお含みおきください)はしないようにしましょう。前述した「曖昧な日本語を避ける」「1文を短くする」にも通じますね。

難解な表現は、他の日本語に言い換えることができないか探ってみましょう。日英翻訳する前に、一度自分で書いた<日本語を別の日本語に翻訳>してみましょう。

4. 主語を明示し、動詞との整合性を取る。

日本語の文章は主語がなくても意味が通じるものが多いです。一方、英語は動作主を明確にする言語です。最近では海外のジャーナルを狙って、最初から英語で執筆する学術論文もあります。とはいえ、まだまだ日本語で書いた論文を翻訳する機会も多いです。翻訳する前に、必ず主語を明示し、日本語の主語と動詞の整合性を取りましょう。主語はくどいぐらいに書いてOK。

「誰(何)」が「どうした」かが明示され、主語と動詞の整合性が取れている文章であれば、翻訳する際に「何を主語に据えるか」「受動態にするか、能動態にするか」の正確な選択が可能になります。

自分で翻訳する方、翻訳会社に依頼する方の両方に共通する『日英翻訳のコツ』。

ポイントは、以下の4つを踏まえた日本語原稿を作成することです。

1. 曖昧な日本語を避ける。
2. 1文を短くする。
3. わかりやすい日本語で書く。
4. 主語を明示し、動詞との整合性を取る。

これらを満たしている原稿であれば、日本人の日英翻訳者が担当しても英語ネイティブの日英翻訳者が担当しても、仕上がりに大差はないと思います。逆にこれらを満たしていない原稿であれば、日本人の日英翻訳者の方が有利かもしれません(いくら日本語に明るい英語ネイティブの日英翻訳者でも、『古池や蛙飛びこむ水の音』のように、日本人であれば肌感覚でわかることがわからないこともありますから)。

なお、これら4つのポイントは、原稿を機械翻訳にかける際にも有効です。

注意:
近年目覚ましい発展を遂げている無料の機械翻訳。一昔前とは比較にならないくらい翻訳の精度が向上していますが、基本的に、翻訳にかけられたテキストは全て各社のサーバーに保存されます。個人情報が含まれる内容や機密性の高い内容の翻訳には使用しない方が無難です。どうしても使用したい場合は、固有名詞や情報の核となる部分は伏せ字(AAAなど)にしておきましょう。

そもそも日本語と英語では、言語の構造や発想が全く異なります。それを意識するだけで、翻訳が格段にやりやすくなりますよヽ(^o^)丿

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