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こんにちは、しろこです。
ミュージカルや芝居の観劇にはよく行きますが、バレエ観劇は約10年振り。前回観たのもKバレエの公演でした(2013年の『白鳥の湖』@フェスティバルホール)。
Kバレエ『クレオパトラ』の存在を最初に知ったのは、数年前(初演時)にたまたま見たテレビ番組です。でもその時は、番組を見ただけで終わりました。
それから数年後、フェスティバルホールであった某コンサートに行った時にもらったチラシの束。
家に帰ってチラシをめくっていて、手がピタッと止まったのが『クレオパトラ』のチラシ。
惚れ惚れする筋肉のクレオパトラ役の女性ダンサーが、眼光鋭くこちらを見据え、足を真横に180度以上上げている!
いや~、数え切れないぐらいいろんな種類の公演チラシを見てきましたが、1枚のチラシであんなに衝撃を受けたのは初めてです。CDのジャケ買い(死語ですか?)ならぬ、チケットのチラシ買い(笑)
Kバレエ、今後ハマりそうです(-_-☆)キラーン。
あ、そうだ、今回、着物を着た観客がチラホラいました。どの舞台を観に行ってもたまに遭遇しますが、今回はいつもより多かったです(バレエの客席ではよくあること?)。私の真ん前の席の人も着物だったので、この場を借りて言わせてください。着物(浴衣も)には帯があるから、背もたれに背中をつけることができません。背もたれから少しでも背中が浮くと、後ろの人はものすごく舞台が見えづらくなるんです。身を乗り出すのは論外ですが、着物を着ている人も後ろの人にとってはそれと同様に迷惑なのです(本人たちに悪気はないでしょうが…)。いろいろと観劇に行って、いろいろと嫌なことを経験しないと、自分の身の振り方が分からないと思いますが、椅子席+着物での観劇は本当にやめていただきたいです。。
あらすじ
紀元前1世紀、エジプトの首都アレクサンドリア。絶世の美女と誉れ高いクレオパトラは、父王プトレマイオス12世亡き後、200年以上にわたるこの王朝の慣例に則り、弟のプトレマイオス13世と結婚、共同で王位に就いていた。とはいえプトレマイオスはまだ少年。事実上、実権を握っているのはクレオパトラだ。姉の政治介入を嫌う弟とその一派は、クレオパトラを排除しようとしていた。
そんな折、共和制のローマで三頭政治を形成していたジュリアス・シーザーとポンペイウスの間に戦争が起こる。シーザーに敗れてエジプトに逃げ込んできたポンペイウスをクレオパトラは介抱する。男たちの心を虜にしてやまない彼女の美しさにポンペイウスもまた魅了される。だが、弟一派はポンペイウスを暗殺。そして自分をも殺害しようとする弟たちからクレオパトラは逃れる。王位を奪われたクレオパトラだが、自らの魔性の美貌が男たちの心を捕らえるだけでなく、政治の武器とさえなることを、彼女は誰よりも知っていた。ポンペイウスを追ってアレクサンドリアにやって来たシーザーに、クレオパトラは王位奪還の協力を得るため直訴しようと画策する。弟たちに悟られずシーザーに会うため、クレオパトラはその身を絨毯にくるみ、貢物を献上するという口実で彼の前に姿を現す。シーザーは瞬く間に心奪われる。クレオパトラは王位を再び手中に収め、シーザーへの反撃に出た弟プトレマイオスは命を落とす。
Kバレエカンパニーオフィシャルサイトより
シーザーがローマの最高権力者となり、彼との間に子をもうけたクレオパトラは、我が子がやがてローマを治める野望をも抱き、まさに絶頂期を迎える。だが、幸せは長くは続かなかった。腹心ブルータスらによるシーザーの暗殺、シーザー亡き後のローマで実権を握ることとなったアントニウスとの恋、我こそはシーザーの正統後継者であると主張するオクタヴィアヌスとの決戦……。
そして激動の人生を生き抜いたクレオパトラに、最期の時が訪れる――。
主な配役(2022年11月3日 13時公演)
クレオパトラ:飯島望未
古代エジプト、プトレマイオス朝のファラオ。
プトレマイオス13世:吉田周平
クレオパトラの弟で共同統治者。
ポンペイウス:ニコライ・ヴィユウジャーニン
共和制ローマの政治家・軍人。
ブルータス:奥田祥智
共和制ローマの政治家・軍人。シーザーの部下。
アントニウス:山本雅也
共和制ローマの政治家・軍人。シーザーの右腕。
オクタヴィアヌス:杉野慧
シーザーの血縁で後継者。のちのローマ帝国初代皇帝。
オクタヴィア:岩井優花
オクタヴィアヌスの妹。
ジュリアス・シーザー:遅沢佑介
共和制ローマの政治家・軍人。のち終身独裁官となる。
ガイド:本田祥平
上演時間
【開演】13:03
<休憩:25分>
【終演】15:40(カーテンコールの終了時間)
感想
クレオパトラ、シーザー、アントニウス、ブルータスなど、登場人物はいずれもよく耳にする人々。大まかな人間関係やストーリー展開は元々知っており、宝塚歌劇団花組で2021年に上演された『アウグストゥス』を観劇した時に当時のことを自分でいろいろ調べていたので、今踊っているのはどんな場面かというのはわりとすんなり理解できました。
当然のことながら、バレエには台詞が一切ありません(睡眠不足で観劇に行くと、私のように己との戦いになります:苦笑)。
「今はこういう心情なんだな」とか「これはこういう意味なんだな」とかは、振りを見れば大体分かる(踊るのがプロのダンサーなら)ようにできていますが、たとえ知っている演目でも、あらすじと登場人物の関係性はちゃんと予習しておくに限るなと、今回の舞台を見て思いました。
なまじクレオパトラに関わる人間関係やストーリーを知っていたものだから、Kバレエオフィシャルサイトの公演紹介をちょっと読んだだけで観劇したんです。そしたら、鉄鎖を付けられたブルータスが火炙りにされたり、アントニウス、オクタヴィアヌス、オクタヴィアの3人が仲良くしている場面のすぐ後の場面でアントニウスとオクタヴィアヌスが戦っていたり、「なんでこういう展開になったんだっけ!?」と一気に冷静になってしまった場面がいくつかありました。
クレオパトラの壮大なストーリーを、台詞も歌もなく2時間で表現しないといけないから、そりゃ大変ですわね(^O^;)
ついでに、剣を持ったプトレマイオスにクレオパトラが素手で勝つとか、シーザーが投げた剣の刃をブルータスが素手でつかむとか、もうちょっと違う振り(?)にならなかったのか…と思う瞬間もありました(;´∀`) そう見えただけで、実は違ってたとか!?
とはいえ、全体を通して見ると、チケットのチラシ買いが大当たり。
クレオパトラの目(ウジャト眼のようにも見える)を描いた幕にライトが当たり、生オケによるテーマ曲の演奏が始まります。幕も曲もかっこよくて、いきなり観劇のボルテージが最高点に達した次の瞬間、ライトの当たり方が変わり、舞台上の大階段にクレオパトラが登場!
普通の幕かと思っていたら、紗幕でした。あれも熊川哲也氏の演出なのかなぁ。しょっぱなから紗幕とライトの効果的な使い方を見せつけられました。
幕→クレオパトラ→幕→クレオパトラというふうに、幕と舞台を交互に浮かび上がらせ、舞台にライトが当たる度にクレオパトラのポージングと立ち位置が変化します。
クレオパトラ役・飯島望未さんの、遠目(しかも幕越し)で見ても分かる筋肉美といったらもう。。
今回のキャスト、東京バレエ団の上野水香さんのような、いわゆる「日本人ばなれした体型」のダンサーはいなかったように思います。
だからなのか、俊敏さであったり力強さであったり柔軟性であったり、持って生まれた骨格以外の部分に終始目が行きました。
どのダンサー(特に男性)も、軽く飛び跳ねているだけに見えるのに、高さもあるし滞空時間も移動距離も長い。
体のラインを拾わない衣装を着ていても、その下の体がどう動いているのかが透けて見えるよう。
蛇を思わせる振りがあったり、これほど速く足を真横に頭の上まで上げ下げできるものなのかと思う鋭い振りがあったり、私の中のバレエの概念が変わりました(バレエはあまり詳しくないから余計に(^_^;))。
そして、クレオパトラの一部の衣装や、男女の絡みの振り付けなど、賛否両論ありそうなかなりきわどい部分もありました。『ピピン』同様、知らずに行った子供連れの親御さんは、ああいうきわどいのをどう思うんだろうか。。
クレオパトラ役の飯島さんと同じぐらい印象に残ったのが、ガイド役の本田祥平さん。全編通してみても、ガイドという役の立ち位置が謎だったのですが…ガイドだから案内役? 芝居でいうところの狂言回しのような存在かなぁ。でも、道化のようにも宦官のようにも見えました。
ガイドの振りがそうさせるのか、本田さんというダンサーだからなのか、俊敏さが群を抜いていました。それでいて一つ一つの動きがしなやかで、着地の音も静かで、例えて言うならチーターのよう。見ていてワクワクしました。
クライマックスは、戦いに破れ息絶えたアントニウスの側での、クレオパトラ慟哭の舞い。
誰が死んでも(時には自分で殺す)平然としていた、男性に対して奔放なクレオパトラですが、アントニウスのことは本当に愛していたんだろうなと思わせる表現で、台詞はなくても動きと表情から声が聞こえてくるようでした。
その後、死んでいった者たちに導かれるように、クレオパトラも最期を迎えます。
よく言われる、毒蛇に自分を噛ませる最期ではありません。
幕開きと同様、ラストの演出も素晴らしかった。素晴らしいというのが陳腐に聞こえるぐらいですが、日本語は英語と違って褒め言葉のバリエーションが少ないのでこれで勘弁してください(;´Д`)
黄金のライトに包まれて階段を上るクレオパトラ。
階段の頂上に達した時、ライトの当て方が変わり、クレオパトラの後ろ姿が真っ黒に映ります。
シルエットのみになったクレオパトラが、階段上から身を…
と、これを書いている時も、ラストシーンがありありと脳裏に浮かびます。
あのラストシーンのために、それまでの2時間があったと言っても過言ではないでしょう。
言わずと知れたクレオパトラ。よく知られたものを題材に新作を作るというのは、かなりのチャレンジだと思います。一方で、新しいクレオパトラを作るためには、台詞がないというのがかえって強みになったのかもしれません。
肉体、舞台美術、音楽、演出ーー「このダンサーの他の演目も見たい」というより「Kバレエの他の演目も見たい」と思わせてくれる舞台でした。
テーマ曲の8小節が今も頭の中で鳴っています(笑)
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