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礼さんがトップになったときから、きっと再演するだろうと思っていた『ロミオとジュリエット』。
役替わりがお決まりになっている本作。
チケットが取れたのはB日程でした。
愛月ひかるさん(愛称:愛ちゃん)の『死』が登場した瞬間から、オペラグラス・ロックオン状態!
愛ちゃんのダンスといえば、なぜかスーツ+ソフト帽姿が思い浮かんでしまうのですが・・・あんなにダンスだけで魅せられる人だったなんてっ!!(失礼?ねえ、失礼??)
こんにちは、しろこです。
これまでの宝塚観劇レポで、何度か「月城かなとさんが好き」と書きました。
浮気じゃありません、愛月ひかるさんも好きです(/∇\)
(基本的には、芝居に振り幅と深みのある人が好き)
チケットを取ることさえ難しいだろうと思っていたので、役替わり日程にこだわりはありませんでした。取れただけで万々歳\(^o^)/
B日程のチケットが取れたおかげで、愛ちゃんのダンスの魅力を知ることができました!
トップコンビのファンの方、ごめんなさい。
本観劇レポでは、トップコンビについてはほとんど触れません(笑)
いつものようにマニアックな視点で暴走気味にまいります!
参考情報
あらすじ
舞台はイタリア・ヴェローナ。古くから続く2つの名門、モンタギュー家とキャピュレット家の諍いは未だ止むことがない。キャピュレット卿は借金の肩代わりを申し出たパリス伯爵と、娘のジュリエットを結婚させようとする。子供の頃からジュリエットに恋焦がれていた従兄のティボルトは猛反対するが、キャピュレット卿は聞く耳持たず、仮面舞踏会でパリスとジュリエットを引き合わそうと計画する。父と母のような結婚はしたくない、結婚は愛する人としたいと願うジュリエット。一方、モンタギュー卿の息子ロミオもまた、まだ見ぬ恋人を探していた。親友のベンヴォーリオ、マーキューシオとともにキャピュレット家の仮面舞踏会へと潜り込んだロミオ。そこで2人は運命の出会いを果たす。お互いの素性を知っても、2人の想いは変わらない。しかし、積年の憎しみを抱える両家の者たちが2人の関係を認めるはずもない。
愛を信じて貫いた2人。彼らの愛がもたらしたのは、悲劇か、それとも---。
主な配役(B日程)
ロミオ:礼真琴
モンタギュー家の息子
ジュリエット:舞空瞳
キャピュレット家の娘
ティボルト:瀬央ゆりあ
ジュリエットの従兄。キャピュレット側のリーダー
乳母:有沙瞳
ジュリエットの乳母
死:愛月ひかる
愛:希沙薫
ヴェローナ大公:遥斗勇帆
ヴェローナ領主
ベンヴォーリオ:綺城ひか理
ロミオの親友
マーキューシオ:天華えま
ロミオの親友
パリス伯爵:極美慎
ジュリエットの求婚者
モンタギュー卿:美稀千種
モンタギュー家の主。ロミオの父
モンタギュー夫人:白妙なつ
モンタギュー卿の妻。ロミオの母
キャピュレット卿:天寿光希
キャピュレット家の主。ジュリエットの父
キャピュレット夫人:夢妃杏瑠
キャピュレット卿の妻。ジュリエットの母
ロレンス神父:英真なおき
修道士
感想
よかったところ
愛ちゃんの『死』
黒い衣装+黒(紫?)のメッシュが入った銀色のロングヘアで登場した愛ちゃん演じる『死』。その姿はまるで『エリザベート』のトート閣下のよう。
出てきた瞬間から、歩き方、顔の角度、視線、全体的な雰囲気に目が離せなくなりました。
オペラグラス、ロックオン(シャキーン!)
出てきた瞬間からロックオンして、芝居の最後までロックオン状態が続くなんて、これまで観劇した
どの舞台やコンサートでもありませんでした(おかげで他の人のシーンを見逃しまくった:苦笑)。
芝居巧者のイメージが強く、これまであまりダンスのイメージはなかったのですが、ダンスが芝居でした。
いや、芝居がダンスか?
セリフは一切ないけれど、体の動きや表情だけであれほど魅せることができるなんて。
贔屓目に観ていたことを差し引いても、プロのバレエ団のバレエでもそんな風に思ったことはありません。
2幕前半、マーキューシオとティボルトが言い争うシーン。
このシーン、見どころがふんだんにあって困ります。
マーキューシオとティボルトはもちろん、後ろのモンタギュー家とキャピュレット家のメンバー全員が
それぞれに激しいケンカをしています。
彼らを見ていると、いつの間にか『死』が階段の上に現れており、手すりで頬杖をつきながら下にいる面々を見下ろしているのです。
スッと出てきてスーッと消える『死』。
ティボルトに刺されたマーキューシオが、ロミオの腕に抱かれ「ジュリエットを愛し抜け」と息も絶え絶えに告げるマーキューシオの一番の見せ場。
そこにひたひたと近づく『死』。
マーキューシオが息絶えたとき、『死』はマーキューシオの命を手繰り寄せ、それを飲み干します。
そのときの『死』の恍惚の表情にゾクッとしました(ティボルトが死んだときも同様)。
このシーン、オペラグラスでマーキューシオやロミオをロックオンしている方も大勢いらっしゃると思います。
わかる!わかる!
でも!
ちょっと視線を左に向けてください。
音もなく『死』が忍び寄っています。
マーキューシオを冷たい目でじっと見据えながら・・・。
ラストの霊廟でのシーンでは、壁に寄りかかりながらロミオとジュリエットの遺体を前に茫然自失とするモンタギュー家、キャピュレット家の面々をしたり顔で見ています。
しかし、両家の面々が自分たちの愚かさに気づき、和解へと手を取り合うようになると、うろたえた表情や仕草になります。
体がセリフを喋っている。
愛ちゃんの『死』にはそう感じさせる力があります。
男役14年目の方にこう言うのは失礼かもしれませんが、間違いなく『当たり役』だと思います。
ちなみに、『死』なので、メイクは青白い感じ。
もしや・・・と思ってはいましたが、そのメイクのままきらびやかなショーへ!
やっぱりちょっと(いや、かなりかも(;´∀`))違和感がありました(笑)
有沙さん演じるジュリエットの乳母
おそらく詰め物を詰めまくって、大きな(太った)体に見せているのでしょう。見た目の異質さ(と言っていいのか)もさることながら、存在感といい歌といい、上手い人が演らないと良さが全く伝わらない難しい役。『エリザベート』でいうならマダム・ヴォルフ(←なぜ『エリザベート』でいう(-_-))。
それを見事にやり遂げました、有沙さん!
前作『眩耀の谷』では、時代設定は違えど舞空さんの娘の役でしたが、今回は乳母。
乳母のソロ曲『あの子はあなたを愛している』は、ふだん娘役が歌う曲よりだいぶ音域の低い曲ですが、情感たっぷりに歌い上げていました。
そこから1幕ラストのロミオとジュリエットの結婚式のシーンまで、ジュリエットを祝福したいという思いと、我が子同然に育てたジュリエットが自分の元から去ってゆくという寂しさが交錯する芝居に泣けました。
ジュリエットの前では笑顔で祝福、でもジュリエットが背を向けたときには涙を必死に堪える姿。
再度ジュリエットが自分の方を向いたときには、また笑顔を見せる。
幕が下りるまで乳母を観ていたかったけど、私の席からはちょうどトップコンビの影になっており全く見えずでした(いやいや、トップコンビが見たいんだよ!という方、すみません^^;)。
2幕でジュリエットの幸せを願い、ロミオのことはさっさと忘れてパリスと結婚するよう勧めるシーンでは、努めて明るくジュリエットを鼓舞しようとする乳母ですが、ジュリエットの部屋を後にして階段を降りるときには涙を流して苦悩した表情を見せます。
また一つ、芝居の幅が広がりましたね、有沙さん!(←お前は誰だ)
ヴェローナ大公の歌
幕が上がって最初に歌うのがヴェローナ大公。
「上手い!誰?!」と一気にテンションが上がりました。
いつもプログラムは帰ってからじっくり読む派の私。でも今回は居ても立っても居られず幕間休憩中にオープン!
B日程の大公役は遥斗勇帆さん。
・・・すみません、全く存じ上げませんでした。
調べたところ、2013年が初舞台。
ということは、あなた、ちょっと前まで下級生だったのね(@_@;)!!(←他に説明のしようはなかったのか(-“-;))。
歌声も立ち居振る舞いも威圧感がありました。
私が今まで知らなかっただけなのかしら。。
こういう新たな発見があるので、やっぱり生の舞台っていいなと思います^^
ジュリエットのことを心の底では大切に想っているキャピュレット卿
ジュリエットの父キャピュレット卿を演じるのは天寿光希さん。
大変整ったキレイなお顔の方。今回のメイク・髪型と相まって、ダビデ像のようなビジュアルでした。
中世イタリアの貴族、それも伊達男の風体。
ロミオとジュリエットが結婚したことをパリス伯爵が知らないうちに、パリスとジュリエットを結婚させようと急ぐキャピュレット卿。
「お父様とお母様のようにはなりたくない」と反抗するジュリエットに手をあげます。
泣きながら去っていくジュリエットを尻目に、キャピュレット卿は自らの手を見つめます、なぜ手をあげてしまったのかと言わんばかりの表情で。
そこからソロ曲へ。
『お前の頑なな強さは私に似たのか』と、家を守るために横暴とも思える振る舞いを続けてきたキャピュレット卿が、一人の父親として娘を想う心情を吐露する歌。
キャピュレット卿の表情がなんとも言えず切ないのです。。
また、ラストの霊廟でのシーン。
ジュリエットの遺体に対面にしたときの、目を見開き愕然としている表情が目に焼き付いています。
ん?と思ったところ
ロミオの衣装
ただの好みの問題といえばそうなんですが、ロミオの衣装がやけに分厚くてもっさりしている・・・。
ポスターを見たときからそう思ってはいたものの、舞台で見ても、うーん・・・ダサい。ベンヴォーリオとマーキューシオの衣装もイマイチ。。
ロミオって、言ってみれば『いいとこのお坊ちゃん』なんですよね。だったら、個人的にはこれまでの衣装のように、シュッとした感じのデザインの方が好きです。
デュエットダンス
デュエットダンス史上初じゃないかと思うくらいの振り数の多さ。
アップテンポのフラメンコ。
礼さんと舞空さんだからこそできるデュエットダンス!
・・・と言いたいところなんですが、デュエットダンスというより、ただ並んで各々が踊っている状態。
こんなに接触のないデュエットダンスも珍しい。
コロナ対策?
違うよねぇ?苦笑。
ソロダンスとしては見ごたえがあったけど、デュエットダンスの場面で踊るダンスじゃないよなぁ・・・と思いました。
天国のロミオとジュリエットが、羽が生えたような軽やかさで伸びやかに踊るデュエットダンスの方が絶対合うと思う!
これから観劇する方へ-ぜひ注目してほしいところ
2幕前半、マーキューシオとティボルトが死に向かうシーン
前述したように、このシーンは見どころの宝庫です。
マーキューシオとティボルトはもちろん、ロミオも『死』も両家の面々も、全員が熱く(『死』の場合は冷たく)演じています。
お目当ての方をロックオンしていると、視界の外でも起こっている名場面を見逃してしまいます。
舞台の右側では、死にゆくマーキューシオを中心として、モンタギュー家の面々が悲壮な面持ちで集まっています。
左側では、マーキューシオたちを嘲笑するティボルトを中心としたキャピュレット家の面々。
そして、階段上に居た『死』はいつの間にか下りてきてマーキューシオに近づく。
さあ、あなたは誰を・どこを見ますか?(^m^)
『僕は怖い』の1幕と2幕の違い
ロミオがソロで歌う『僕は怖い』。1幕では、モンタギュー家とキャピュレット家の現状を憂うロミオが、そこはかとなく感じている不安を歌い上げます。
ロミオの背後には影のような『死』。
『エリザベート』のトートとルドルフのような関係です。
見えない何かに運命を支配されているロミオと、確実に忍び寄る『死』。
ロミオを弄んでいるようにも見えます。
一方2幕では、1幕で感じていた言いしれぬ不安が的中した中で歌います。
マーキューシオとティボルトが死に、自らはヴェローナから永久追放されることとなったロミオ。
『死』がロミオ、マーキューシオ、ティボルトの3名を操っているようにも見えますが、ロミオからすると、マーキューシオとティボルトが詰め寄ってくるように感じられるのではないでしょうか。
激しく揺さぶられる感情が歌に乗った2幕の『僕は怖い』。1幕のときとは息づかいが明らかに違います。
2幕ラスト、霊廟でのシーン~ラストの『愛』と『死』
こちらも見どころの宝庫。
モンタギュー卿夫妻ととキャピュレット卿夫妻が、家の主としてではなく、ロミオとジュリエットそれぞれの父親・母親として、自分たちがどれほど愚かだったかを悟ります。
ベンヴォーリオや乳母は泣き崩れます。
それぞれの家の他のメンバーも、それぞれが歩み寄り、手を取り合い、抱き合い、これまで抱いていた憎しみやわだかまりが溶けていきます。
(ところで、この両家は何故いがみ合うことになったのでしょうか)
『愛』と『死』の対比も見逃せません。
『死』が冷たい笑みを浮かべるとき、『愛』は悲しみの表情を浮かべます。
『愛』が微笑むとき、『死』は戸惑いの表情を浮かべます。
そして本当のラストへ。
天国で真実の愛と心の平穏をやっと手に入れ笑顔あふれるロミオとジュリエットの後ろで、『愛』と『死』が重なり合い、十字架を形作ります。
『愛』も『死』も、笑顔とは違う、なんとも言えない穏やかな顔で目を閉じて幕が下ります。
一見すると相反するものに見えても、切っても切れない糸で結ばれているのだと感じられるラストシーンです。
パレードの『死』
パレードで、『死』こと愛月さんがちょっとだけ歌います!
声を出すのはこの時だけだったので、「おおっ!」となりました(笑)
笑顔も、『死』が見せるニヒルな笑みではなく、愛ちゃんの笑顔です(見た目は『死』のまま)。普段のふんわり喋る愛ちゃんが見えて、なんだかほっこりしました^^
『ロミオとジュリエット』劇中曲ベスト5
ヨーロッパのミュージカルは、歌う人は歌う人(芝居含む)、踊る人は踊る人の完全分業制なので、それぞれの役に見せ場となる歌があります。特にこの作品はそれが顕著。
というわけで、しろこの独断と偏見で選ぶ『ロミオとジュリエット』劇中曲ベスト5をご紹介!
第1位:あの子はあなたを愛している(ジュリエットの乳母)
独り者のしろこでさえ、歌詞と歌声が胸に染みる。隣の席に60歳くらいのご夫婦がいらっしゃいましたが、旦那さんの方が泣いていました。
第2位:本当の俺じゃない(ティボルト)
憎しみを植え付けられて育ったティボルトも、かつては純真な少年。自分を歪めた大人たちに対する持って行き場のない怒りと、わずかに残っている純真さが合わさったティボルトの心の叫びともいえる歌。
瀬央さんの力強い歌声と表情で、虚勢を張るティボルトの荒々しさと弱さの両方がよくわかりました。
(ちなみに瀬央さんはショーのトップバッター。屈折したティボルトを振り払うかのように、ショーではギラギラ全開でキザってます!)
第3位:どうやって伝えよう(ベンヴォーリオ)
ジュリエットが死んだこと(実際は仮死状態)をロミオに伝えられるのは自分しかいない、でもどうやって伝えればよいのか苦悩するベンヴォーリオが歌う歌。歌といっても、半分くらいは語りのような感じです。
ロミオの痛みを思い、己の無力さを嘆くベンヴォーリオの心根の優しさと内に秘めた強さが垣間見える曲です。綺城さん、星組に異動になって、本公演で大役を射止めましたね!
第4位:ヴェローナ(モンタギュー家、キャピュレット家の面々)
幕が上がって最初に歌われる、暗雲立ち込めるヴェローナを表現したアップテンポの曲。いつ導火線に火がつくともしれない両家の危うさを歌い、観客を一気に芝居の世界へと引き込みます。
第5位:僕は怖い(ロミオ)
ロミオが持つ、純粋であるがゆえの脆さ。歌で繊細さを表現できるのは、礼さんの確かな歌唱力があってこそです。同じ曲でも、1幕と2幕で表現が全く違います。
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マニアックでテンション高めの観劇レポ、いかがでしたでしょうか。
できることなら、一人ひとりにロックオンして観た上で、総仕上げに全体を俯瞰して観たいです(笑)
A日程も見てみたかったな~(東京公演のライブ中継はどっちの日程だろう・・・)。
いつもしろこの観劇レポを読んでくださっているあなた。
ありがとうございます!
あ、もしかして思ってます?今回は観劇レポから派生した真面目な話はしないのかって( ̄ー ̄)ニヤリ。
します、せっかくなので最後にちょっとだけ 😛
真の主役
私はひそかに、この作品の真の主役はベンヴォーリオだと思っています。
ある日突然、目の前の当たり前だった日々が瓦解する。
そこに居るのが当たり前だった人々を失う。
憎み合うことが当たり前の中で成長し、ロミオとジュリエットの純愛を目の当たりにし、愛する人を得た者の強さを感じ、憎み合うことの愚かさ・憎むことより許すことの難しさと大切さを知ったベンヴォーリオ。
親友のマーキューシオとロミオを立て続けに亡くし、独り残された彼は、その後の人生をどう生きたのでしょうか。
目に見えているものだけが物語ではない。
見終わった後、余韻の中心に居るのはいつもベンヴォーリオです。
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