~変わるもの、変わらぬもの~宝塚歌劇雪組公演『ベルサイユのばらーフェルゼン編ー』(2024/7/13@宝塚大劇場)【観劇レポ/感想】

宝塚レポ

※本記事には広告が含まれています。

本記事には公演のネタバレを含みます。

こんにちは、しろこです。

柚香光さん、月城かなとさんに続き、彩風咲奈さんも退団。
1年でトップスターが3人も退団するなんて…。理由はそれぞれ違うと思いますが、ちょっとビックリです。

彩風さんが退団公演に選んだのは、言わずとしれた『ベルサイユのばらーフェルゼン編ー』

小学生の時にテレビで『ベルサイユのばら』を観たことがきっかけで、宝塚に憧れたそうです。それで入団してトップスターになって『ベルサイユのばら』で退団することになるとは、ご本人ですら夢にも思っていなかったかもしれませんね^^

初演は50年前。

ひと昔(どころじゃないか(^o^;))前の作品を今上演すると、「う~ん…」と思う部分が出てくるのは必定。

それは宝塚歌劇の代名詞ともいえる『ベルサイユのばら』でも同じなのでしょうか…?

あ、そうだ、本題に入る前に一つ業務連絡をさせてください。

拙ブログ『まるかて。』に非常によく似たサイトができているようです。しかも運営者の名前も似ているとのこと。開設から4年近く経ち、盗用されるほど知名度が高まってきたのかどうか分かりませんが、当該サイトおよび運営者は、拙ブログ『まるかて。』および私しろことは何の関係もありません。当然のことながら、拙ブログで掲載している文章や画像等の無断転載および無断利用は固く禁止しております。参考にしていただくのは結構ですが、参考の度が過ぎると著作権侵害に当たりますのでくれぐれもご注意ください。

​本記事には公演のネタバレを含みます。

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あらすじ

18世紀末のフランス。貴族文化が咲き誇るパリ・オペラ座では、華やかな仮面舞踏会が行われていた。留学生としてパリを訪れていたスウェーデン貴族のハンス・アクセル・フォン・フェルゼンは、未だしきたりや習慣に馴染めず、貴族たちの嘲るような視線を浴び戸惑っていた。そんな彼に手を差し伸べる一人の女性。その手を取ろうとしたフェルゼンを、近衛連隊長付きの大尉オスカル・フランソワ・ド・ジャルジェが遮る。フェルゼンに手を差し伸べた女性は、フランス王太子妃マリー・アントワネットだった。フェルゼンとアントワネットは互いに強く心を惹かれ、オスカルもまた、アントワネットに対する非礼を詫びた潔いフェルゼンに、女性として心を動かされるのだった。
一方、宮殿の外では、重税に喘ぐ民衆の怒りが頂点に達していた。その怒りの矛先は貴族、中でも、浪費を繰り返すオーストリア人の王妃アントワネットに向けられる。フェルゼンとアントワネットの仲は、国王ルイ16世の耳にも、民衆の耳にも届くまでになっていた。
フェルゼンとアントワネットの身を案じたオスカルは、国のためにも王妃と別れるようフェルゼンに進言する。傍にいることが愛だとオスカルの忠告を拒んだフェルゼンだったが、アントワネットの輿入れから付き添ってきたメルシー伯爵に説得され、相手のために身を引くことが本当の愛だと悟り、スウェーデンに帰国する。アントワネットも、ようやく王妃として、妻として、母としての役目を自覚する。
ある日、オスカルの部下ジェローデルが密かにフェルゼンを訪ねてきた。革命の勃発、国王一家の幽閉、オスカルの死…。フランスの現状を知ったフェルゼンは、アントワネットを救うべく、情熱に突き動かされるままかの地へと向かう。

主な配役

ハンス・アクセル・フォン・フェルゼン:彩風咲奈
フランス留学中のスウェーデンの伯爵。

マリー・アントワネット:夢白あや
フランス国王ルイ16世の妃。

オスカル・フランソワ・ド・ジャルジェ:朝美絢
王妃付きの近衛隊隊長(後に衛兵隊に転属)。男装の麗人。

アンドレ・グランディエ:縣千
オスカルの幼なじみ。オスカルを慕う。

メルシー伯爵:真那春人(代役)
アントワネットの後見人。オーストリアの伯爵。

ジェローデル:諏訪さき
近衛隊士官。

全体を通しての感想

いきなり夢もへったくれもない下世話なことを言って申し訳ないのですが​・・・

衣装といいセットといい、手間と金のかけ方が桁違いの作品です(←現実主義者)。

軍服やドレスが衣装のメインとなっている作品は多々あれど、『ベルサイユのばら』の軍服やドレスは別格。どの角度から見ても、どんな動きをしても、めちゃくちゃキレイ。とにかくキレイ。ほんとにキレイ(語彙力ゼロ)。

セットは大掛かり。それでいてどのセットも手が込んでいて数も多い。

やっぱり、宝塚といえば『ベルサイユのばら』なんでしょうね。

往年のファンと思わしき人が多い中、私の後ろの2列が、女子校の修学旅行生かと思う数十人規模の団体だったんです。

『ベルサイユのばら』の熱烈なファンが1人いて、他の子たちは予備知識なしで観劇しているっぽかったんですが、幕間中に大変興味深い会話をしておりました。

ファン女子高生「2幕でな、アンドレが橋の上で撃たれるけど、歌い出してなかなか死なないの!」
その他女子高生1「マジうけるんだけどー!」
その他女子高生2「え、ってゆーか、オスカルって女なの!?」
その他女子高生3「え、ちょっと待って、頭混乱する」
ファン女子高生「(この後の展開を全て説明)」

しろこ(心の声)「そうやんなぁ、これが真っ白な気持ちで観劇する人の素直な感想やんなぁ(^o^;)」

私も含め、宝塚の『ベルサイユのばら』はこういうものだと多少なりとも分かって観劇する人は、どんなシーンがあってもどんな台詞があっても「ああ、これこれ」と思うでしょう​。でも、普通に考えたら、彼女たちが言うように違和感ありまくりなんですよね(笑)​昔から変わらず、マリー・アントワネットの台詞回し​は独特だし、型の芝居だし。

それでも、ある時点から違和感がなくなる…はず(ちなみに私にとっての「ある時点」は、幽閉された国王夫妻のシーン)。

大なり小なりフランス革命が関係する舞台は数多くあり、いずれの作品でもルイ16世は控えめで懐の深い人物として描かれています(見ようによっては、頼りないとも優柔不断とも言えるでしょうが)。それは本作『ベルサイユのばら』でも例外ではありません。

前回2013年に雪組『ベルサイユのばらーフェルゼン編ー』を観劇した時は印象に残っていなかったのですが、今回はスウェーデン国王のグスタフ3世にも同じ懐の深さを感じました(※調べたところ、2013年版にはグスタフ3世は登場していなかったようです)。

上に立つ人間に必要なのは、懐の深さですよ…(←急にどうした)。

1幕ラストのスウェーデン王宮のシーンは、緑と白を基調とした洗練されたセットにもご注目。建築物のセットに緑を持ってくることってなかなかないと思うのですが、全く違和感なく、フェルゼンの衣装ともマッチしていて、個人的には今作で一番見応えのあるセットでした。

ぶっちゃけ、1幕では良くも悪くも「そうだ、これが『ベルサイユのばら』の世界だ…」と思いながら観劇していました(なんかこう、10年ぶりに観劇すると、あまりの夢々しさにゾワッとしたというか(;´∀`))

そんな中「うまい!」と思わせてくれたのは、宮廷に出入りする素性不明の女(見た目は貴婦人。その実は詐欺師)ジャンヌ・バロワ・ド・ラ・モットを演じる音彩唯さん。『海辺のストルーエンセ』で存在を認識して以来注目していましたが、大劇場公演でもついに目立つ役がつきました!

腹に一物ある喋り方、態度、視線、メイク・・・お見事です。

2幕冒頭の民衆のダンスはロックテイスト。今どきのカッコよさがあります。本記事の副題『変わるもの、変わらぬもの』の「変わるもの」の方ですね。今どきすぎて『ベルサイユのばら』のイメージに合わないと思う方もいらっしゃるかもしれませんが、私は「お、ええやん♪」と思いました。

ギロチン台が設置されたコンコルド広場でのモンゼット侯爵夫人(万里柚美さん)とシッシーナ伯爵夫人(杏野このみさん)のしょーもないギャグの応酬は何なんでしょう。あのくだり、いる?
直後にジャンヌが登場して、居合わせた市民に2人が貴族だということが分かり、あの後で彼女たちが辿る運命が見えるからこそ、余計にあのギャグシーンは不要だと感じました。一寸先は闇だと言いたかったのか、どこまでいってもズレた感覚を持つ貴族と貧困に喘ぐ民衆との対比のつもりなのか何なのか。どんな意図であの演出をしたのか謎です。

しっかしジャンヌ音彩さん、ここでも空気を締める!

アンドレが絶命する場面では、幕間で聞いた女子高生の会話が思い出されて集中できず(動揺)。アンドレの二大見せ場なのに、縣さん、すみません(苦笑)

このシーン、恐らく倒れた時に血糊を仕込んでいるのか、アンドレが欄干に身をもたせかけ体を起こした時に左手に血がついています。

その後、フェルゼンが白バラを手にして、銀橋を渡りながらオスカルとアンドレを弔うシーンでは、最後に花びらが散ります(花には手を触れない)。

こういう細かい演出、好きです^^

2幕の見せ場は、なんといってもアントワネットの牢獄での最後の食事でしょう(メルシー伯爵との2人芝居も惹き込まれる!)。

世話係のロザリーに「せめてスープを一口だけでも」と促されてから、スプーンを手に取りスープを口に運ぶまでの長い沈黙のシーン。あんなに大きな舞台で、舞台上に3人(アントワネット、ロザリー、ベルナール)もいるのに、全く音も声も出さない。演じる側からすると、台詞を発している時の方が気楽かもしれない。

私は前トップ娘役の朝月希和さんが好きだったこともあり、これまで夢白さんに対しては好きも嫌いも何もなかったのですが、国王とともに幽閉されてからのアントワネットの芝居を観て、いい芝居するな~と思いました。

・・・彩風さんの退団公演なのに、彩風さんの話が出ません。

なぜかというと、彩風さんは好きなのですが、フェルゼンというキャラクターが、控えめに言って私はどうも好きになれないのです。登場人物の中で一番共感できないキャラクターが主役のフェルゼンなのです。つまり・・・嫌いなのです(;・∀・)

宝塚版『ベルサイユのばら』では描かれませんが、フェルゼンは最終的に民衆に殺されるんですよね。『フェルゼン編』と銘打つぐらいなら、最期まで描いてほしい。『アルジェの男』や『グレート・ギャツビー』のように、主役が死ぬ作品だってあるんだから。オスカルもアンドレもアントワネットも死ぬから、舞台の中ではフェルゼンだけでも生かしたったのかなぁ。。民衆に殺されるまでの過程と、死の間際にフェルゼンがどう感じたかがうまく表現されれば、フェルゼンに対してまた違った見方ができるかもしれないのに。。

こちら↓の本に、フェルゼンの悲惨な最期が記されています。あくまでも個人の感想ですが、この著者はフェルゼンが大好きで、ルイ16世が大嫌いなのだろうと思うような、なかなかに偏った書きぶりです(苦笑)ですが非常に臨場感がある文章なので、「本当のことは誰にも分からない」という前提でいれば、結構興味深く読めます。

というわけで、いつもは「役」として演者を観るのですが、今回ばかりは「彩風さん」として役を観ました。

立ち居振る舞いもちょっとした仕草や表情も、研究に研究を重ねたんだろうなぁ。。本当にこの役が好きなんだろうなぁ。。と思うほど丁寧に作り込まれていました。特に、挨拶する時に片膝をつく姿勢が非常に素敵です☆

朝美さんのオスカルも、本当に少女漫画の世界から飛び出してきたかのような麗しさ。まさに男装の麗人。民衆に味方すると心に決めたオスカルがブイエ将軍に切先を向けるシーンで、過去に観たオスカルは皆、大声で将軍に迫っていましたが、朝美さんのオスカルは静かに厳しい声で迫っていました。今回の演出の方がオスカルの気迫を感じます。

そして汝鳥伶さんの代役でメルシー伯爵を演じた真那春人さんにも大きな拍手を送りたい。

それなりに台詞量も多いし、フェルゼンともアントワネットとも2人芝居がある重要な役。しかも汝鳥さんは、2013年の『フェルゼン編』でもメルシー伯爵を演じたお方で専科の中でも大ベテラン。プレッシャーもあったと思いますが、代役であることを感じさせない堂々たるお芝居でした。実は私が初めて真那さんを認識したのも、代役を務められた時だったんです。2016年の雪組『るろうに剣心』の時。あの時はたしか組内でインフルエンザが蔓延して、彩凪翔さんの代役で主要キャストの武田観柳を演じられたんですよね。大階段を下りてくる時の拍手が、誰よりも大きかったのをよく覚えています。

観劇中には気づきませんでしたが、帰ってプログラムを読むと、主要キャストに入っている方々が「市民男」や「貴族女」のような役名がついていない役でいろんなシーンに出ていることが判明。千秋楽ライブビューイングで注目してみようと思います(音彩さんがロケットに出演しているのも気づきませんでした…)。

そうそう、今回はプログラムのスタッフ一覧に掲載されている人数が多いです。昨年急逝された羽山紀代美さんのお名前もあって、なんだかジーンとしました。

ラストは、舞台後方でアントワネットが断頭台に向かう階段を上り、舞台前方ではフェルゼンがその姿を見つめる…というシリアスなもの。

暗転。

余韻に浸りたいところで、いきなり真っ赤な衣装の50人(ベルばら50周年にちなんで)のロケット部隊による、超ド派手なロケットが始まります。

も、もうちょっと余韻に浸らせてもらえませんかね。。展開早すぎませんか(苦笑)

ロケットの終盤で、羽を背負った彩風さんが登場(@_@;) 羽を背負ったトップがロケットを従えて踊るなんて初めてでは!? 一通り(?)踊ったら舞台上で羽を下ろして、今度は真っ白な衣装に。舞台上で羽を下ろすのも初めて見たわ。。

真っ赤なロケット部隊がはけ、大階段の上から真っ青な衣装の男役、次いで娘役が合流し、スタイリッシュな群舞に。何とも言えないキレイな青の衣装です。

通常、一本物の作品の時は、芝居の後で15分くらいショーがありますが、今回は30分くらいあります。

舞台上の全員が銀橋に立つ彩風さんの方を見てアカペラで歌い、彩風さんは銀橋から舞台上のみんなを見るという、退団を意識した演出もあります。客席からは彩風さんの後ろ姿しか見えないけれど、彩風さんを見る組子の顔を見ていると、きっととてもいい表情をされているんだろうなと思います(><)

そしてお約束のパレード・・・のはずが、大階段を下りてきた人が誰も舞台上に残らない。

最後に下りてくる彩風さん・・・を、大階段の下で迎える人がいない。

どゆこと?と思っていたら、1階席両側の扉が開き、朝美さん、縣さんを先頭に、まさかの客席からのパレード入場。

客席、大興奮。

2階席の疎外感は想像に余りある(最近は2階席での観劇が続いていたので、2階席の皆さんの気持ちは痛いほど分かります。1幕ラストでは彩風さんが客席からはけるし…)。

今回のしろこは久しぶりに1階席(の後ろの方)が当たり、しかも通路側だったので、衣装が触れるほど近くで観ることができました。彩風さんのラストなのに、近くに来てくれた顔も名前も分からない人にロックオン。タカラジェンヌの人を惹き付ける力、恐るべし。

最後は全員が舞台上に上がり、見慣れたパレードの様相に。
いつもは組子がトップを迎えるけど、今回はトップが組子を迎えるという演出だったんですね。賛否両論ありそうだけど、千秋楽の退団の挨拶では大階段を下りてくる彩風さんを組子全員でお迎えするだろうから(ですよね!?)、まぁこれもアリなのかな。

幕が下りて終演アナウンスがあっても、客席の興奮は収まらず。そりゃそうだよねー。さっきまで舞台上にいた人たちが、我々と同じ高さのフロアに来てくれたというだけで、謎の涙が出てくるもんね。

彩風さんの退団公演『ベルサイユのばらーフェルゼン編ー』、初日の翌日に諏訪さきさんが、次いで汝鳥伶さんが体調不良で休演というお知らせが出ていたので、嫌な予感がしなくもなかったですが(花組『アルカンシエル』の悪夢再びか、と…)、諏訪さんは7/12に、汝鳥さんは7/16に無事復帰され、現時点(7/21)で体調不良による休演者は出ておりません。感染症ではなさそうで本当に良かったです♪

彩風さん、愛するフェルゼンを演じ尽くして、一片の悔いもなく退団できますように…! 情感豊かな芝居とスタイリッシュなダンス、大好きでした! ありがとうございました!!

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