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宝塚歌劇団の公式サイトで『海辺のストルーエンセ』のポスターを初めて見た時にこう思いました。
「・・・誰?」
こんにちは、しろこです。いやはや、すみません(;´∀`)
タカラジェンヌって、ほんっっっっとメイクと表情で全然違う人に見えますね。
まじまじと見ても、「朝美・・・さん?」と思いましたもん。
この記事を書いている最中に再度見てみましたが、やっぱり朝美さんに見えない(^_^;)
いや、でも、紛れもなく主演は朝美絢さんでした!
トップコンビ不在、いつもの半数の組子で行う外箱公演。大劇場で演る時のような派手な演出はできないため、これまで観た他組の演目でも、芝居心のあるキャストが揃っている印象でした。大劇場公演では目立つ役がついていないけど、こんな上手い人がいたのか!と思うような。
最近忙しかったこともあり、今作の『海辺のストルーエンセ』、実は完全にノーマーク。もともと外箱公演はチケットが取れないので取ろうと試みることもなかったし、配信されることも知りませんでした。
たまたま目に入った楽天TVの広告で配信されることを知ったのが、配信前日。
2/11の15:30上演開始なら、観る時間は確保できる。
で、歌劇団のサイトをチェック。
「う~ん・・・(-_-;)」
何が「う~ん・・・」だったかと言いますと、『外箱でオリジナル作品を演る』ということです(『大劇場公演でも、宝塚のオリジナル作品は当たり外れが大きい』という持論があるもので)。
でも、あらすじはわりと好きな感じだったし、何よりキャストが、主演の朝美さんを筆頭に、縣千さん、奏乃はるとさん、真那春人さん、諏訪さきさん、叶ゆうりさん、一禾あおさんと、いつもの半数とは思えないぐらいの豪華さ。
いつもならここでポチッといく(視聴権を購入する)わけですが、このところ物入りで、視聴料3,500円がちょっと痛いなぁ。。と思い一旦保留(配信してくれるのはものすごく嬉しいし有り難いけど、生観劇のチケットを取る時より財布の紐が堅くなるのはなぜ…)。
結局、「いかん、このままだと心のエネルギーが切れてしまう…。宝塚観て充電を…」と思って、上演開始時間の30分前にポチりました。
結論。
期待値が低かった(外箱でオリジナルだから)からか、作品として非常に良かったです。そしてみんな上手い。
ただし、ぜーんぜん観て元気になる作品ではなかった(笑)
最後にお約束のちょこっとショーがあるとはいえ、宝塚にしては珍しいぐらい、希望も何もない、鉛を飲み込んだような重たさのある作品でした。
個人的にこういうテイストは好きですが、弱ってる時に観てはいけない作品だと思います(^o^;) これから観に行かれる方、体もですが、心の健康も万全な状態で観劇に挑んでくださいねー。
あらすじ
18世紀中期、先王の死により若くして王となったクリスチャン7世が治めるデンマーク王国。大北方戦争後の中立政策により人々が平和な時代を謳歌していた頃、啓蒙思想に傾倒する町医者のヨハン・ストルーエンセは、「この世界は科学と理性に基づいている」と、保守的な医療現場を改革しようとしていた。新しい考えを広め、大きな世界で活躍するという野心を抱くヨハンは、その美貌と頭脳、エレガントな立ち振る舞いを武器として、貴族相手の診療を行っていた。そんなヨハンの元に、デンマーク王の元侍従長であるブラントと元将校のランツァウ伯爵がやってくる。「王の病を治してほしいーーー」酒浸りで享楽に耽る王、無能な王を放任し古い考えで国政を牛耳る宮廷官僚、自分の息子を王位に就かせようとするクリスチャンの継母ユリアーネ、そして国に馴染めず王と不仲の孤独な王妃カロリーネ。宮廷は「病」に満ちていた。国政を握り、世直しを行う千載一遇の好機。ヨハンは「治療」を施し国王の信頼を勝ち得ていく中で、カロリーネに惹かれていく。国王にまさるとも劣らぬ権力を得たヨハンは、庶民のための改革を次々と断行していくがーーー。
主な配役
ヨハン・ストルーエンセ:朝美絢
啓蒙思想に傾倒する医師。
カロリーネ・マチルデ:音彩唯
デンマーク王妃。
クリスチャン7世:縣千
デンマーク国王。
ユリアーネ・マリーエ:愛すみれ
王太后。
イーネヴォルト・フォン・ブラント:諏訪さき
元侍従長。
豆知識
観劇後にデンマークの歴史やら王族やらを調べている時に知ったのですが、ヨハン・ストルーエンセは実在の人物でした。本名はヨハン・フレデリック・ストルーエンセ(1737-1772)。
ドイツ出身のデンマーク政治家。精神障害のあるデンマーク王クリスティアン7世(在位1776‐1808)の主治医となり,1770年宮廷に入り,王妃カロリーネ・マチルデと情を交わし,同年枢密顧問会を廃止し,翌年自らが〈宰相〉となる。その地位にあった16ヵ月の間に約2000の法令を発布し,自ら啓蒙主義改革者として言論の自由,拷問の禁止等をはじめ政治的・経済的にきわめて自由主義的色彩の濃い政策を敢行した。19世紀の経済的・社会的改革の先駆者として歴史的には評価されてはいるものの,時代の被抑圧者らの理解も得られることなく,その独裁的性向,性急すぎる改革,王妃との不貞,デンマーク語の不使用が,宮廷・軍部内の反対者を結集させるところとなり,第1王位継承者フレゼリクFrederik(1753‐1805)やグルベアを中心とする反ストルーエンセ派によって1772年1月17日逮捕され,4月28日斬首された。
世界大百科事典より
また、ストルーエンセを主人公にした映画も制作されていました。
宝塚の演目で北欧が舞台になったもの・・・宙組の『白夜の誓い』しか浮かびません(私が知らないだけかもしれませんが…)。あまり馴染みのない土地や人物を軸とする物語は、それについて調べるいいきっかけになります♪
『アナスタシア』観劇後は、ロマノフ王朝に関する本を図書館で何冊か借りて読みました。結構ハマりますよ( ̄ー ̄)ニヤリ
全体を通しての感想
前半は「3,500円、失敗したかなぁ。。」とちょっと後悔。あらすじからは思いもよらない、フレンチロックミュージカル調。
クリスチャン7世だけ衣装と髪型が奇抜で、いくら『享楽に耽る王』といっても違和感を覚えました。史実では精神障害を患っていたとのことですが、本作ではそういった部分は見られなかったので、一人だけあんなに浮いた見た目にしなくてもよかったのに。物語が進んでいくにつれて、この若き王は本当は賢くて、裏切りや苦渋の決断を経て良き王になるんじゃないかと思わせられたんです。なのに最後まで見た目が奇抜なままだったのはなぜなの。。
ヨハンに操られる様は、まるで康有為に操られる光緒帝。『蒼穹の昴』をご覧になられた方は誰しもそう思ったのではないでしょうか(笑)
縣さん、顔立ちもスタイルもシュッとしているからか、位の高い人の役が続いてますね。『夢介千両みやげ』の役も、実は偉い人だったし。
一方、朝美さんと諏訪さんは、これまでの数作とはガラッと違う役を見せてくれました。どんな役でも安心して見ていられるのは、確かな技術と表現力があってこそです。
表現力といえば、私は常々、朝美さんの笑顔の表現力は群を抜いているなと思っています。
純粋な笑顔、悲しみを秘めた笑顔、胸に一物がある笑顔、そして今回の『狂気が見え隠れする笑顔』
後半のヨハンは、『ひかりふる路』のロベスピエールを彷彿とさせます。
「庶民のために国を変える」という崇高な理想を持った青年が、善人の皮を被った狂人と化す。
朝美さん、『ひかりふる路』で、ロベスピエールの理想を実現するために少しでも疑いのある者を淡々とギロチン台に送るサン=ジュストを演じた時も怖かったけど、暴力的な面は一切なく笑顔で断行していく今回のヨハンの方がずっと怖かったです。
現実世界でもそうですが、結局、自分の正しさを信じて疑わない人間が一番怖いのかもしれない。
『マリー・アントワネット』の観劇レポでも触れましたが、誰かにとっての正義は、誰かにとっての悪であり得るのです。
まぁ、「庶民のために」権力を渇望するなら、現実世界のセージカよりよっぽど立派に思えてしまうのが情けないよねぇ…。
ヒロインのカロリーネを演じた音彩唯さん、私は初めて知りましたが、実に堂々とされていました。そしてとにかく顔が小さい! 2019年初舞台ということは、まだ研3ですか(驚)
芝居ではどこか幼さの残る王妃(10代後半の設定ではないかと思います)を演じていましたが、最後のショーではぐっとアダルトな雰囲気で登場。朝美さんとの並びもお似合いでした(^^)
『ヴェネツィアの紋章』で初めて認識した一禾あおさん。『蒼穹の昴』では彩風咲奈さん、和希そらさんと同列の役で、着実に力をつけてきているなと思っていました。芝居も歌も上手くて、月組の風間柚乃さんのような感じ。あんなに太さのある低音ボイスで歌える人、なかなかいないと思います。
王太后ユリアーネを演じた愛すみれさんは、欲深く権力を欲する古い頭を持っているけど品格のある人物を、どちらに偏るでもなく自然に見せていて、全体を通して芝居のスパイスになっていました。
今回の外箱公演『海辺のストルーエンセ』、雪組の層の厚さを再認識させられる演目でした。上級生から下級生に至るまで、芝居も歌も上手い人が揃ってる。
大劇場公演を観て「大丈夫か…」と不安になる組もあれば、外箱公演を観て「早く次の大劇場公演が観たい!」と思う組もあるのは・・・やっぱ5組のバランスが悪いですよね(苦笑)
次回の雪組大劇場公演は、ミュージカル・ロマン『Lilac(ライラック)の夢路』-ドロイゼン家の誇り-
朝月希和さんが退団されて、新トップコンビの大劇場お披露目公演です。
ミュージカルということで、歌もダンスもいつも以上に期待しちゃうわ♡
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